アメリカの小説家ドナルド・E・ウェストレイクによる悪党パーカーシリーズ。
「組織」「殺しの分け前/ポイント・ブランク」「ペイバック」「PARKER/パーカー
」「プレイ・ダーティー」と昨年から映画化作品をみてきましたが、1968年に製作された作品があるらしく驚きの豪華キャスト。

パーカー役(キャラ名は変わってマクレイン)は元フットボール選手のジム・ブラウン。他映像化作品と異なるアフリカ系パーカー。
共演がアーネスト・ボーグナイン、ドナルド・サザーランド、ウォーレン・オーツ、ジュリー・ハリス、ジーン・ハックマンととんでもなく豪華でびっくり。
日本ではビデオ/DVD /Blu-rayいずれでもソフト化されておらず輸入版にて鑑賞してみました。
この年代ならではの雰囲気があって仲間が集まる前半部分にワクワク。
登場人物が多いのに尺が90分ぽっきり、これだけのキャストが出ているのに見せ場に乏しいのが残念に思われてしまいました。
「この出演陣ならもっと凄いのが作れた!!」と惜しまれつつ、この年代のクライムアクションの雰囲気はクール。意外なホラー描写もあって楽しめる1作でした。
◇◇◇
主人公が強盗計画に参加するも思わぬトラブルに見舞われてしまう…大筋は他のパーカー作品と大体同じ。
クインシー・ジョーンズの音楽とともに分割画面でみせるオープニングクレジットがオシャレ。
刑務所から出所してきたばかりのマクレインは、長年ビジネス関係にあるマダム・グラディス(ジュリー・ハリス)からフットボール試合の売上金を強奪する計画を持ちかけられます。
チームを結成するため仲間候補を試験にかけていくマクレイン。豪華メンバーが集結していく前半部分が楽しいです。

用心棒枠はアーネスト・ボーグナイン。全身オレンジの衣装を着てガタイのいい主人公とガチンコファイトを繰り広げる様が迫力たっぷり。
ドライバー候補のジャック・クラグマンにはカーチェイスを仕掛けて相手のドライブテクを確認。
狙撃/銃器担当はドナルド・サザーランドでナルシストでおどけたキャラのようですが、射撃の腕は確かな模様。
金庫破り担当はウォーレン・オーツ。安っぽい女に騙されて気付けば謎の部屋に閉じ込められていて大ピンチ。パンツ一丁で外に出る姿が愛嬌たっぷり、みているだけで楽しいキャラでした。
事前にフットボールスタジアムを入念に下見するマクレイン。おもちゃ屋さんが裏で隠れ武器屋をしているなど悪党共の世界観にワクワク。
準備パートがしっかりあるのがよかったです。
強盗計画は売上金の集まる会計事務室に前日に忍び込むというもの。
出勤してきた職員たちに銃を突きつけ集まってきた金を強奪。
偽救急車を手配し救急隊員に扮して脱出するくだりは「組織」のラストやステイサムパーカーの偽消防車と重なります。
追手が来れないよう狙撃手が消音銃でタイヤを撃ち抜き、道に渋滞を発生させておく。偽救急車は路地裏に停めていた大型トラックに格納させ裏道から移動…手際のよさが光る一味。
前半はケイパーものの楽しさに満ちていて、大勢の観客がいる巨大フットボールスタジアムが交互に映るなどロケーションにも迫力を感じさせます。
もう少し仲間との連携プレイがあったり、事務室パートで人質との攻防戦があればより盛り上がったのではないかと思いました。
グラディスの提案で奪った金は前科のないマクレインの恋人・エリーの住む家に隠すことに。
ところがマクレインが留守にしていた矢先、大家の男性が玄関口に現れエリーに欲情。
エリーは銃の隠されたタンスに近づき身を守ろうとしますが男と揉み合いになり、大家の方が銃を取ってエリーに発砲。
その際タンスの中に隠されていた大金を発見した大家は、マクレインたちが盗んだ金を奪って逃亡してしまいます。
突然出てきたキャラの唐突な行動で何もかもオジャンに。
ストーカーっぽい大家役は「ショーシャンクの空に」でブルックスを演じていたジェームズ・ホイットモア。

舌なめずりするように美しい黒人女性に迫る一連のシーンが急にホラー(笑)。
直接の性的シーンはないものの、銃を乱射したあと恍惚とした表情で果てる姿が何とも病的。
エリーの死体に白いシーツをかけるもそこからジワジワと血が滲み出てくるところもやたら凝っていてホラー映画のようでした。
帰宅後エリーの死体を発見、ショックを受けるマクレインでしたが、金がなくなってることに気付きさらに驚愕。
仲間の裏切りを疑ってメンバーの下を訪ねていきますが、取り分がもらえないかもしれないと知った彼らは当然激怒。
マクレインが嘘をついて金を奪ったのでは…と逆に疑われてしまいます。
仲良しフレンドじゃないビジネスライクな一味の関係性にリアリティがあってグッド。
サウナにて仲間から拷問を受けるマクレイン。

濡れたタオルでビシバシ身体を打ちつけてくるアーネスト・ボーグナインの嬉々とした表情が恐ろしい(笑)。
熱蒸気を浴びせられる直前にマクレインが反撃に出てドナルド・サザーランドが代わりに死亡。さらにジュリー・ハリスも流れ弾に当たって死んでしまいます。
逃走したマクレインは、「ブリルという警官がエリー殺しの犯人を逮捕の際に撃ち殺した」というニュースを新聞にて知ります。
70分経ったところで警官役ジーン・ハックマンがようやく登場。

ブリルは食えない刑事で、犯人の大家を始末して大金を掠め取ったようです。
職場にこのことは黙っていてやるから俺の分け前を寄越せと迫るマクレイン。
残りの仲間が金の行方を血眼で追ってくる中、2人は手を組むことに…
クライマックスは波止場で銃撃戦。
マクレインとブリルの連携により仲間は次々に撃たれて退場。刑事と金を山分けしてマクレインは1人空港へ…
飛行機に乗る直前、エリーと思しき女性の声に呼びかけられたマクレインを映して映画は幕を閉じます。
直前には血が滲んだ白いシーツのビジュアルを思い出していて、愛する人を利用し失った罪悪感に苦しんでいるということでしょうか。
幽霊ホラーのような奇妙な後を引く不思議なエンディングでした。
パーカーシリーズ第7作目、原作小説の「汚れた7人」も読んでみました。

ここから手に取ってもOKなスッキリしたコンパクトな内容になっていて読みやすかったです。
原作では殺されるのが恋人ではなく出会ったばかりの情婦という何の思い入れもない女性。
潜伏先のアパートに戻ったパーカーが女性の死体を発見するところから話がスタート、ミステリ仕立てになっているところが面白いです。
仲間6人の中に裏切り者がいるのでは…メンバーの下を訪ねるも、女性と繋がりのあった部外者の犯行を疑うパーカー。
原作の犯人は女性の元恋人で映画とは話が異なっていますが、ベッドでの行為を侮辱されて根に持つなど、こちらもなかなか粘着質で気味の悪い犯人。
仲間の面々については映画のようなテストシーンはなかったものの、各々描写があって皆個性的。
計画立案者・キフカは女子大生と同棲していてだらしない悪党してるのがよかった(笑)。
血気盛んなメンバーとは対照的にコミュ障の職人肌タイプの人もいて、家具職人(兼業強盗)の無口なラッドのキャラが面白い。
「金がなくなった」と聞くと「今回はあきらめよう」と損切りできていて1番クレバーにみえました。
一方パーカーは、「理屈に合わないが奪った金を取り戻さないと気が済まない、理屈に合わないことをしようとしている自分にイライラする」と言っていて、怒ってても冷静なのがこの人らしい気がします。
映画でジーン・ハックマンが演じていた警部は映画のように共闘しませんが、自宅に押しかけてきたパーカーと渡り合い、その後大胆に強盗犯逮捕に賭けて出るなど切れ者で印象に残るキャラでした。
原作ラストは映画と違って綺麗なオチ、スッキリ爽快な気持ちが残ります。
映画は紅一点のジュリー・ハリスがいい味出してたり、強盗シーンをテンポよく華やかにみせようと工夫していたり…良い部分もあるけど、小説と同じように女性が殺されてるところから話が始まった方が引き込まれたかも。
映画版のマクレイン、恋人とのラブラブシーンは要らなくてどうせなら薄情なワルに徹したキャラでみてみたかったなーと個人的には思いました。
仲間の出番が少ないのが勿体なく、特にクライマックスはジーン・ハックマンともう一戦交えて欲しかったと思います。
後半盛り上がりに欠けるのが惜しまれつつ、意外な豪華キャストとこの年代のクライムアクションのクールな雰囲気を充分に堪能できる1作でした。