隣の家に引っ越してきたのは恐ろしい吸血鬼だった!!
1985年公開、トム・ホランド監督による愉快なヴァンパイアムービー。
高校生のころ夜中にテレビで放送されていたのを1人で鑑賞、そのシチュエーションも相まってかドキドキ感倍増でとても楽しかった記憶があります。
自分が子供の頃にみた吸血鬼映画って、コッポラの「ドラキュラ」や「インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア」など個性的な作品が多かった気がするけど、杭を打つ、鏡に映らない、招かれないと家に入れないなど、意外とこの作品はしっかり〝王道〟してて逆に新鮮でした。
ロディ・マクドウォール演じる偽ヴァンパイアハンター、ピーター・ヴィンセントに込み上げる愛おしさ。
子役出身で業界を生き抜いて来た特殊なキャリア。「ヘルハウス」もハマり役だったけど本作もピッタリ。
バックグラウンド諸々を知らなくても、往年のクラシックホラーへのリスペクト、虚構が現実を打ち負かすロマンが伝わってきて、胸の熱くなるキャラクターでした。
手作り感満載の特殊効果が楽しく、敵がそこまで強くないのも恐怖心が身近に感じられていい塩梅。
童心に返らせてくれる元気の出るホラーでした。
◇◇◇
高校生・チャーリーの隣の家に怪しげな男が2人引っ越してきました。
ある夜窓から男が女性の血を吸っているのを目撃。さらに翌日女性の遺体らしきものが家から運び出されていきます。
近隣では謎の殺人事件が連続しており、「ヴァンパイアが殺した」と騒ぐチャーリーでしたが、母親や警察には取り合ってもらえず孤立。
チャーリーは怪奇ホラー番組「フライトナイト」のホスト、ピーター・ヴィンセントに相談することにしますが…
ホラー番組が流れるなか幕を開ける冒頭はなんとなく「ボディ・ダブル」と重なるイメージ。
虚構の中で虚構が展開する構図はお茶目でオシャレで惹きつけられてしまいます。
冴えない男子高校生かと思いきや、可愛いガールフレンドのいるチャーリー。
童貞ではあるものの母親公認のラブラブカップルで微笑ましい。賑やかなオタクの友人もいて意外とリア充な主人公。

なんの変哲もない坊ちゃんオーラのチャーリーに対して、怪しい隣人・ジェリーはちょいワル男のオーラがビンビン。
人智を超えたモンスターというより、自由に欲しいものを手に入れる年上の夜の男!!という感じで妙に人間臭いのがいいです。
お隣さんの情事を窓から目撃するシーンは裏窓的!?

お隣さんが吸血鬼!!という子供の空想みたいな童心に返るストーリーですが、周りの大人たちに信じてもらえない孤立感は地味に恐怖。
「チャイルド・プレイ」といい「ビデオゲームを探せ!」といいトム・ホランドの真骨頂。
家に招待さえしなければ入って来れないはずが、お母さんがちゃっかり招いてしまっていて早々にピンチ。マダムにもウケが良さそうなちょいワル男・ジェリー。
ジェリーにはビリーという若い男が付き添っていて、昼間外に出れないジェリーの代わりに色々便宜を図っていて日中もつけ入る隙がありません。
一軒家に男2人住まい、やたら距離の近いスキンシップにバイセクシャルっぽい雰囲気も漂っています。
吸血鬼の存在を訴えるも一向に信じてもらないチャーリーは、その道のプロであるヴァンパイアハンター…ではなくその役を演じている人に助けを乞うことに。
テレビに出てる俳優さんに普通に会えに行けちゃうのにびっくり(笑)。
でもこのピーター・ヴィンセント、銀幕のスターではなく、安っぽいテレビドラマの俳優のようでしかも現在はさらに落ち目。
若者が自分を尋ねてきてくれたことにちょっぴり嬉しそうなのが可愛い。

「ヴァンパイアはお呼びじゃないらしい、君らの好みは女をメッタ切りにする仮面男だ」…ジェイソンを揶揄ったような台詞に80年代を感じますが、時代の変化とともに去り行く者になっていく男の哀愁が漂っていてどこか切ない。
チャーリーの頼みを一蹴したピーターでしたが、恋人・エイミーと友人・エドがやってきて一芝居打ってほしいと依頼。疑惑のヴァンパイア邸を訪問することに。
気の違えたチャーリーを正気に戻そうと企んでの作戦でしたが、ふと鏡をみた際にジェリーの姿が映っていないことに気付くピーター。
酔いが一気に覚めたように表情が激変。ここから流れがどっと変わって怖くなるのが面白い。
チャーリーの訴えを一笑していた友人・エドは1人きりになった帰り道、ジェリーに襲われてしまいます。
「もういじめられたり殴られたりしないよ」…手を握って優しく勧誘されたら心揺らぎそう。
エドもバイセクシャルで孤独から解放されたかったのかなあと意味深にみえるシーン。
そして恋人・エイミーもジェリーに誘惑され攫われてしまいます。
ディスコでダンスしながら身体を重ねる2人もなんかエロい。

同い年で気の利かないチャーリーより、フェロモンムンムンの年上男に靡いてしまうの分かるかも(笑)と思ってしまうクリス・サランドンの妖しいオーラ。
エイミーがジェリーの昔の恋人の生まれ変わりっぽい!?思わせぶりな伏線は結局回収されずでしたが、ヴァンパイアにも切ない過去があったらしいことはなんとなく伝わってきました。
友人と恋人を奪われたチャーリーは再びピーターに助けを乞います。
テレビ番組で使っていた小道具のバッグを持ち込むなどやる気になった様子のピーターでしたが、恐ろしい吸血鬼の姿をみて一目散に退散。
チャーリーのかざした十字架は効くのにピーターの十字架攻撃は効いたり効かなかったり…信仰心の有無や敵が格下がどうか、本人の精神状態に左右される様子。

家に逃げ帰ったピーターは吸血鬼化したエドに襲われてしまいます。
狼に変身したエドは、ピーターの手にした杭が身体に刺さって苦しみながら絶命。
ひょうきんだった前半からの落差が凄まじい。
一度は逃げたピーターでしたが、若者の死をみて我に帰り、勇気を奮い立たせてチャーリーの下へと向かいます。
なんだかんだ助けを求めに来た子供を見捨てられないところが誠実でいい人そう。
改めてみると「モブサイコ」の霊幻師匠に似ている気がしました(笑)。
偽物が本物に立ち向かわなきゃならなくなるというシチュエーションが如何にもベタなコメディですが、まがいものとはいえ長いことドラキュラ退治をやってきた身。
虚構の中にも真実はある!!誇りを取り戻して立ち向かうところが人間味溢れていてカッコいいです。
まずは付き人ビリーを葬る2人。日光が平気で弾丸で撃たれても倒れない…吸血鬼じゃなくて狼男なのか何なのか正体不明だけど人間にしては強すぎる(笑)。
それでも身体を杭で貫かれると絶命、緑のスライムみたいにドロドロ溶けていく特殊効果にワクワク。
恋人・エイミーは既に咬まれてしまってヴァンパイア化していましたが、夜明けまでに倒せば元に戻るとジェリーを追う2人。
コウモリに化けたり、顔がモンスター化したり、まるで賑やかなお化け屋敷なクライマックス。

(すごいアゴになる彼女ww)
ド素人と偽物が力を合わせて立ち向かうのが胸熱。
先回りして棺をピシャッと閉めるピーターのグッドジョブには思わず笑みが込み上げます。
最後は日光の力でド派手に消滅!!
夜明けを過ぎているはずなのになぜか何事もなく人間に戻るエイミー。
お次はなんだ!?ラストの終わり方も洒落ていて、このジャンルへの深い愛が伝わってくるようでした。
陽気なホラーだと思っていたけど、改めて見ると友達が悲惨な死を遂げていたり、処女だった恋人が寝取られていたり…結構苦々しい部分もあって驚き。
シリアスとコメディが奇跡的バランスで成立している80年代特有の空気感。
リメイク版は味気がなくて、やはりロディ・マクドウォールの存在が唯一無二だと思いました。
ノスタルジックな温かさに満ちていて、いつみても色褪せないゴキゲンホラーでした。
