超大作で読んだあと疲れもあったけどめちゃくちゃ面白かった「三体」。
アシモフや小松左京など影響を受けていると思われる作品が多々あるようなのですが、1987年出版の「天空の劫火」という作品が似た世界観を描いているとのこと。
三体ロスなのもあって読んでみました。

(加藤直之さんのカバーイラストがカッコイイ)
上巻はミステリータッチ、下巻は終末感にどっぷりと浸かる内容…前半と後半でテイストが違ったけど、面白い。
独特のダークな世界観が広がっていて「三体」の黒暗森林と重なる部分が確かにあり、ラストの超絶ディザスター描写が圧巻。渋いけれど読み応えのあるSFでした。
◇◇◇
ある日突然木星の衛星が消滅。
地球各地で謎の火山が隆起、大気中の酸素濃度が上昇するなど異常現象が次々に勃発。
さらにアメリカのデスバレーで瀕死のエイリアンが発見された。
天文学者・ゴードンは政府のチームに加えられ謎を究明することになるが…
「三体」と違って登場人物たちが局面を打開しようと必死に抗うわけではなく右往左往するばかり…物足りなさもありましたが、ジワジワした恐怖があって面白かったです。
侵略エイリアンが生命体ではなく、自己複製を続ける殺戮機械というのが他作品とは違った味わい。
水や食べ物が目当てではなく、奪うのは自分たちの新たなパーツとなる材料で、地球を単なる鉱物の塊としかみていない。
宇宙を探索してある程度高度な文明を発見すると即座に破壊するようにプログラムされているのか、一切話が通じない。
姿もみせないままで、三体星人とは異なるゾッとする不気味さがありました。
そんな侵略機械エイリアンに対抗する守護神的エイリアンも登場。
姿を現して一緒に戦ってくれるわけではないけど、人類が滅亡しないように密かに手助け。
選ばれた僅かな人を宇宙に脱出させるノアの方舟的宇宙船まで用意してくれますが、こちらの存在もミステリアス。
機械文明に宇宙が汚染されるのを食い止めたい上位生命体なのか何なのか…
通常イメージするエイリアンや神様像とかけ離れた何とも言えないダークさが漂っていました。
序盤ではデスバレーで発見された瀕死のエイリアンと主人公たちが対話。
エイリアンがラジオ音声を拾って英語を学習していたというので言葉は通じるのですが、何を言っているのか掴みにくく駆け引きがスリリング。
このエイリアンの正体は結局何だったのか…守護神エイリアンが遣わしたメッセンジャーだったのか、機械エイリアンに滅ぼされた種族の生き残りが偶然地球に不時着したのか…
〝機械エイリアンが気を逸らすために用意した物説〟も作中で語られて、面白かったけど謎めきすぎていて色々分かりにくかったです(笑)。
それとは別にオーストラリアでは異星人ロボットが登場。
こちらは機械エイリアンの用意した完全なるディコイで、友好メッセージを伝えながらも実は裏で着々と地球破壊の準備を進めていたことが明らかになりました。
その後の機械エイリアンの攻撃が圧倒的すぎてこんなブラフいらんやろと思ってしまいましたが、人類が宇宙へ逃亡する時間を与えたくなかったのか、用意周到で隙がありません。
「まったく別種の異星人物体が同時多発的に地球を訪れていてそれぞれの話が食い違っている」というプロットは面白かったものの、イマイチその部分をサスペンスに生かせていない気がしてそこは残念。
アメリカだけでなくオーストラリアや各国の様子がもっと知りたかったなーと思いました。
惑星破壊装置を地球の内部まで進ませて大爆発させるという地球破壊方法は、「インデペンデンス・デイ」のような上からドッカーン!!と違っていて何だか新鮮。
反物質爆弾??が地球のコアに向かっていくというイメージも掴みにくかったですが、見えないところで破滅が進んでいくのが嫌な怖さでした。
キャラクターは主人公含め「三体」に比べるとクセの少ない大人しめの印象でしたが、恐怖のあまりトチ狂うアメリカ大統領のキャラが面白い。
エイリアンとの会合にビビって、「神が我々を罰しにきた」と錯乱。
こういう作品に出てくるアメリカ大統領って核攻撃もみださず自分のやることを顧みないタイプが多いイメージだったので、内省的で弱々しい〝敗北主義プレジデント〟が新鮮。
周囲を混乱させてひたすら迷惑なだけなのに驚愕しました。
また主人公の親友、生化学者のハリーは白血病に侵された余命いくばくもない状態で調査に協力。
自分がまもなく死ぬとなって「地球も一緒に滅亡しますよ」って言われたら全部どうでもよくなりそう…と性格歪んだ自分は思っちゃいましたが、思索を続け宇宙の真理についての推測を友に語るハリー。
「われわれはもう1世紀以上も、愚かな小鳥のように自分の木に止まってピーチクパーチク鳴きながら、なぜ他の鳥が応答しないのだろうと思っていた。しかし、銀河の空には鷹がいっぱいいるのだ。静かにしていることを知らない惑星体は、食われてしまうのだ。」
元祖三体と言われるのにも納得、フェルミのパラドックスに着想を得た宇宙観がダーク。
大混乱のなかでも人々が意外と普通に生活しているのが驚きで、もっと暴動とか起きないもんかなーとそこは意外に思われましたが、星々が爆発して煌めく異常な景色がみられるようになり、終末感はピークに。
思い出の場所で死ぬことを決めた人、地元で家族と死にたい人…皆思いはそれぞれ。
クライマックスは、死場所にヨセミテ国立公園を選んだ地質学者・エドワードの視点が圧巻。
大地が裂けすべてが崩壊するこの世の終わりの瞬間に立ち会う迫真の描写に恐怖。
複数の女性と肌を寄せ合おうとするなど節操のなさをみせるエドワードですが、「自分の命があまりにも儚く思えるので、たくさんの命にすがりついているのだ」…もう直ぐ死ぬとなったらこんな気持ちになるのも仕方ないかも(笑)。
一方主人公一家はちゃっかりと守護神エイリアンの作った宇宙船に乗り込みサバイブ。
しかしエイリアンのメッセンジャーであるロボットから〝起こったことを記憶し伝えるために地球崩壊を目撃する人たちを選ぶように〟と命じられます。
自ら志願して父・アーサーとともに目撃者となる息子・マーティン。
最終章では時がとんで、火星に新たな居住地を築くことに成功した人類の姿が描かれます。
「機械エイリアンを作った文明は滅しなければならない」と命じられた人類は、自らも復讐の意志を燃やし、虐殺の犯人を捜す宇宙船部隊を形成。そこに息子マーティンが乗り込んでいく…
打ち切り漫画のようなエンドにびっくりしましたが、なんとこの作品バッチリ続編があるとのこと。
単体としては破壊シーンで終わっていた方が終末SFとして際立っていると思いましたが、機械エイリアンの出自や多くの謎が続編で明かされるのかも…続きが気になる終わり方でした。
世界各地の描写がもう少し見てみたかったのと、意図してなのか分かりにくい部分が多いのと…粗っぽく感じられるところもありましたが、不穏な終末感と無情な宇宙観はとても面白かったです。
2000年代に映画化の話があったけど立ち消えてしまった模様。
けれど徹底的地球の破壊描写は「インデペンデンス・デイ」「ディープ・インパクト」などを思い出させ、また家族が方舟に乗って助かるところなども含め映画の「2012」とビジュアルイメージが重なりました。
続編「天界の殺戮」も併せて読んでみたので、次回記事に続きます。
全然違うタイプの作品になっていて、こちらの方が面白かったです…!!
