どうながの映画読書ブログ

~自由気ままに好きなものを語る~

「ザンガディクス 鮮血の悪夢」…7人のマルコメくん殺人鬼と巨大な胎児

(この記事投稿後2~3か月ほど更新お休みします)

92年オランダ・アメリカ合作のルドルフ・ヴァン・デン・ベルフ監督作。

中古VHSの叩き売りで発見、「アボリアッツ国際ファンタスティック映画祭大賞受賞」の文字を見つけてお持ち帰りした1本。

思ったより話はまとまっていてイタリアのホラーとちょっと雰囲気が似ていたりで、なんかオモロかった作品でした。

 

冒頭…とある病院で医者が人工子宮による7つ子出産を成功させます。

その帰り道、突然謎めいた儀式を行う医者。

「もう解放してくれ」と彼が叫ぶと、突然水晶体に入った巨大な胎児が現れ、医者の身体はたちまち燃え尽きて死亡してしまいます。

その21年後…母親と2人で暮らす少女・エマリーは7人の少年たちに襲われる奇妙な夢を見ます。少年たちは壁に血文字で謎のシンボルを描いていました。

精神科医は「13歳になっても初潮がまだ来ていないことの不安の表れだろう」と分析します。

一方民俗学者のケラー博士が勤める大学では奇妙な史料が発見されました。

それはアマゾン奥地に住むマクシチュ族の伝承に関するもので、水晶に入った巨大な胎児の姿をした悪の化身《ザンガディクス》の子供を宿した女性は世界を滅ぼす悪魔を産む…というものでした。

母親とキャンプに出掛けたエマリーが誕生日の朝に初潮を迎えると7人の謎の男が突然現れ、エマリーを襲います。

エマリーはザンガディクスの子を産む器として選ばれた女性だったのでした…

 

シュワちゃんの「エンド・オブ・デイズ」と「マニトウ」を足したような??ストーリー。

少女エマリーのパートと探偵役の博士のパートがテンポ良く交互に進んで行きますが、物語の要である7つ子が全く怖くない(笑)。

↑夢に出てくる7つ子の少年、マルコメくんみたいでかわいいやん w w

大人になっても坊主頭、白塗りの特殊メイクが施されるも顔はほとんど映りません。

インパクトのある同じ顔が7つ襲ってくるとか、胎児姿のザンガディクス本体が美少女に襲いかかって来る方がよっぽど迫力がありそうですが…

 

精神病棟に収監された殺人鬼らしいのに驚くほど弱く、14歳の女の子に腕力で押し負けてしまうマルコメくん。

頭部爆発、感電死など実に多彩な死に方を見せながら残機がどんどん減っていきます。

そして特殊なエロ要素を加えたかったのか7つ子とエマリーは異母兄妹関係という設定が明かされます。

冒頭の出産に協力した母親がいて、そのあとに娘・エマリーを産んだ…??

実はお母さんが黒幕で娘を生贄に捧げようとしていた…というストーリーを期待すると肩透かし。

提供していた卵子を勝手に無断使用されただけのようです。(とんでもねえ)

 

それにしてもなぜか映る街並みは常にゴミまみれで、道の至ることろにゴミ袋が散らばっています。

お母さんがゴミ袋にダイブして逃亡したり、過去の病院の記録を調査するためゴミ捨て場漁りをしたり、10分に1回はゴミ袋が出てくるような体感(笑)。

 

クライマックス、1人残ったマルコメくんがエマリーを攫い受胎の儀式が始まりますが…

マルコメくんゴミ袋でウェディング衣装つくってくれてた w w

 

儀式によって謎の水晶体が顕現するとエマリーは催眠状態に陥りザンガディクスに引き寄せられてしまいます。

そこに民俗学に詳しいケラー博士の父親が突然現れ「ザンガディクスは母親の抱擁に耐えられない」と助言。

お母さんが胎児を抱きしめると、愛を嫌うザンガディクスは爆発してしまいます。

びっくりするような量の血の雨が降りそそぎ、笑顔で抱きしめ合う母娘2人。

「キャリー」と「サスペリア」を足したようなラストシーンがなぜかいつまでも心に残ります。

 

しかしこんな珍作がアボリアッツ??…と思っていたらなんと受賞したのは音楽賞だったのですね。

クライマックスでかかる「オーメン」のような荘厳な曲がやたらカッコいいです。

ホラー的にはマルコメくんに怖さがないのがアカンのですが、次々に勢いよく散っていくマルコメくんになんだか笑ってしまう。

なんか雰囲気が好きなホラーでした。

 

「サンタリア 魔界怨霊」…vsカルト集団!!絶望のオカルトホラー

サンゲリア〟と〝サンタマリア〟を掛け合わせたような怪しいタイトルですが、ニューヨークに実在している宗教〝サンタリア〟を題材にしたという87年公開のオカルト・ホラー。

監督はジョン・シュレシンジャー、主演はマーティン・シーン

じわじわ追い詰められていくような「ヘレディタリー」系の怖さ。生理的嫌悪を催すようなグロ描写があったりで、とても怖かった記憶のある作品です。

 

精神科の警察医カル(マーティン・シーン)はある日突然妻を事故で亡くしてしまいます。

ミルクが溢れて床が濡れて壊れたコーヒーメーカーが感電して目の前で妻が電気ショック死…このシーンが思いの外残酷でビビりまくります。

冒頭ジョギングする主人公の後ろから静かにやって来る牛乳配達のトラック…逃れられない死のピタゴラスイッチがゆっくり作動していくような不穏な映像づくりが巧みです。

 

ショックから立ち直るためカルは一人息子のクリスと共にニューヨークへ引っ越すことにしました。

姉夫婦や家政婦の助力を得て少しずつ明るさを取り戻していくクリス。
カルは不動産の管理人で面倒見のいい女性・ジェシカといい感じに。(お父さん、早いっ!!)

一方近隣では幼い男の子が殺される連続殺人事件が勃発しており、カルは事件を捜査中にメンタルを病んだ警察官・ロペスの担当医を務めることになります。

少年たちは何かの儀式のような殺され方をしており警官・ロペスは宗教団体が絡んでいるのでは…と疑っているようでした。

しかしある日突然カルに謎めいた伝言を残し自殺を遂げます。

不審に思ったカルはロペスが関心を持っていた麻薬患者を支援する財団の募金パーティーに潜り込みます。

しかし密かに息子・クリスの下に教団の魔の手が迫っていたのでした…

 

「慈善財団が実はヤバいカルト集団と繋がってた…!!」…どこまで教団員が潜り込んでいるのか警察になぜか記録が残ってなかったり身近に潜むカルトの存在がひたすら不気味。

知らない間に息子が得体の知れない呪術グッズを持っていたり、家政婦さんがまじないグッズをベッドの下に仕込んでいたりと、「誰が敵で誰が味方なのか!?」疑心暗鬼になるような展開にドキドキさせられます。

でも家政婦さんは子供を守ろうとしてただけだったというあるあるなオチ。

強力な呪いをかけていたのはカリブから来たという謎の司祭。

(めっちゃ強そう)

一緒に事件を調査していた恋人のジェシカも彼の呪いを受け、顔に謎のデキモノができてしまいます。

そしてデキモノが破裂して中から小さな蜘蛛がたくさん…

昔のホラー漫画みたいなこのシーンも怖くてゾワゾワさせられました。

 

不審な出来事が立て続けに起きて、カルは姉夫婦と共にコテージに出かけていた息子クリスのもとに急いで向かいます。

ところがなんと姉の夫・デニスも教団の手先でした。「クリスを生贄にするので父親であるカルが手を下して我々の一員になれ」…と迫ってきます。

デニスはかつてスーダンに旅行に行った際、病気にかかっていた息子を自らの手で殺し、その代わりに地元の干ばつと疫病を終わらせたのだといいます。

教団に生贄を捧げれば1000倍もの望みが叶えられる…富や名声のため自己を正当化して暴走してしまう教団は恐ろしいです。

けれどそのメンバーたちも元々は何か不幸があって世界に絶望してしまったのかもしれない、何かを失う怖れからこういうカルトにハマってしまったのかもしれない…と思わせる節もありました。

なぜカルの息子のクリスが生贄に選ばれたのか(貝を偶然拾ったのがサイン??)その理由をきっちり明かして欲しかったなあ、前半全然出番のないデニスが裏切り者役でもショック度がイマイチなのでもっと伏線の描写とかあったらよかったのになあ…

教団の背景や儀式の内容など設定がもう少し深掘りされていればかなりの傑作に化けていたのではないかと思いました。

 

ラストは工場の煙突内部!?でバトル。

教団員に取り囲まれるもカルは自我を失わずにクリスを助けに走り、見事対決に勝利し息子と共に家路につきます。

 

そして数年後…カルはジェシカと結ばれクリスも一緒に田舎で平和に暮らしていました。

ある日吠える犬を追って納屋に向かうとそこには奇妙な祭壇が…

それはジェシカが行った儀式のあとで「家族を守るためよ」と彼女は呟きます。

なんと今度は新しい奥さんが変なカルトにハマってしまったのですね…

ちょっと唐突な感じもしますが、無限ループのバッドエンドって感じで、ラストもとても怖かったです。

あれだけ怖い目にあった人が身を守ろうとしてまた新たなカルトにハマってしまったと考えるとそう突飛なことではないのかも…精神の拠り所となって他人を傷つけなければそれはそれでいいのかもしれませんが…

複雑な気持ちの残るラストでした。

 

実際の宗教「サンタリア」(サンテリア)がどんなものなのか知らず、誤解を与える内容になってる気もしますが、家政婦のおばちゃんはいい人だったり一応お話的には一部の集団だけがカルトに走った…という設定のようでした。

冒頭で感電死する妻の首に十字架のネックレスがかかっていたり、キリストを信仰する刑事が自死を選んだり…「神様は何の助けにもならない」…キリストの信仰のある人がみれば余計に怖いお話なのではないでしょうか。

マーティン・シーンをはじめ顔に迫力のある役者さんが多く、子役の男の子の演技も上手。

不穏な空気が色濃く、ギョッとする怖いシーンがいくつかあって、記憶に残るホラー作品でした。

 

「エイリアンドローム」…サンゲリア+エイリアン??イアン・マッカロックがカッコいい

サンゲリア」のイアン・マッカロック主演のマカロニホラーということで気になっていた作品のBlu-rayを鑑賞しました。

監督は「サイコファイル」などでアルジェントともタッグを組んでいるルイジ・コッツィ、音楽はゴブリンが担当。

SFホラーかと思ったら予想の遥か斜めを行く作品でめちゃくちゃ面白かったです…!!

 

ある日NYに辿り着いた無人の漂流船。

調査員たちが乗船するとコーヒーと書かれた積荷の中から奇妙な緑色の卵が発見されます。

今にも孵化しそうな卵がいきなり破裂、さらにはその飛沫を浴びた人たちの内臓が派手に破裂していきます。

探索で唯一生き残ったアラス警部補(マリノ・マッセ)は米軍に呼び出され女性大佐ホームズ(ルイーズ・マーロー)とともに調査に参加することに。

解析の結果卵は未知のバクテリアだと判明、ホームズ大佐は火星探査から帰還した宇宙飛行士の話を思い出し、彼らのうち誰かが卵を持ち込んだのでは…と推理します。

ホームズとアラスは元宇宙飛行士ハバード(イアン・マッカロック)を訪ねることにしました。

火星で目撃した卵の話をするも精神錯乱だと見なされ誰にも信じてもらなかったハバードはやさぐれて隠居生活を送っていました。 

ハバード曰く火星の洞窟で無数の卵を発見した際、虚脱状態に陥ったのは同僚のハミルトンだったとのこと。

しかしハミルトンは地球帰還後に不審死しており真相は確かめようもありません。

大佐たちはハバードを仲間に加え、積荷にあったコーヒーの出荷元である南米の工場を訪れることにします。

 

NYの空撮といい冒頭からめちゃくちゃサンゲリアな雰囲気ですが、「エイリアン」を彷彿とさせる卵が登場、そこからケインの胸食い破りシーンを大人数で再現したような謎の気前の良さ。

爆発→爆発という予想だにしない二段構えで、ただのパクリでは終わらないイタリア人の感性にただただ圧倒されます。

だけど宇宙に行くのかと思ったら行かなくて、また南米にクルーズするのかよ…!!と再びめっちゃサンゲリアな展開(笑)。

前半は特撮のセットもSF映画らしい雰囲気が出ており、推理要素のあるようなストーリーにもワクワクさせられます。

イアン・マッカロックは前半3分の1を過ぎてようやくの登場ですが、ツンデレな感じの女性大佐と、おちゃらけ男の警部補と生真面目で皮肉屋のハバードと…この3人組のバランスが良く冒険もののような楽しい雰囲気です。

南米に着くと大佐を始末しようと敵が刺客を送り込んできました。

直接殺せばいいのにエイリアンの卵を浴室に入れて閉じ込めるというやたら回りくどい暗殺方法。(このシーン異様に長い)

卵がもはや卵である必然性が全くなく、ただの時限爆弾です(笑)。

なんとか難を逃れた大佐たちは二手に分かれてコーヒー工場を調査しますが、大佐とアラン警部補は早々に敵に捕われ地下に連れて行かれます。

そこにいたのは死んだはずの宇宙飛行士・ハミルトン。

火星で怪物に心を支配されてしまったハミルトンは、密かに地球に持ち帰った卵を育て、成長した怪物・サイクロプスを地下に住まわせていました。

そしてそのサイクロプスが産んだ卵を世界各地にばら撒き地球を滅ぼそうと企んでいたのです。

怪物を目の前にした2人は心を支配され、アラン警部補はサイクロプスに身体を丸呑みにされてしまいます。

あわや大佐も…というときにハバードが現れサイクロプスの目に銃弾を命中させ、怪物と同調していたハミルトンは内臓を大破させながら散っていきます…

↑内臓爆発の際に毎回スローモーションになるのはペキンパー・リスペクト

 

「ハミルトンに罪はない、悪いのはあいつを操っていた怪物だ。」「本当のハミルトンは帰還できなかった、今も火星にいる。」…

夜空を見ながら語るシーンが切なく、こんなB級映画なのになぜか良い映画を観たという気分にさせてくれます。

 

映画の目玉であるエイリアン(サイクロプス)は予算が足りなかったようで動きがほとんどありませんでした。

しかし動かないことで逆に怪物が大物然として見え、不気味さが増していたように思います。

ゴブリンの音楽もカッコよく、卵の交信音のような独特なサウンドも映画を大いに盛り上げていました。

イアン・マッカロックは「サンゲリア」「ドクター・ブッチャー」に引き続き、内容が酷似したイタリアンホラーに立て続けに主演したことになります。

以前何かの特典映像で「フルチは役者の力量を均等にみせるのが上手だった」…と語られていたことがありましたが、意識して「サンゲリア」を観ると安定した演技力のマッカロックさんが皆をリードして全体的な演技のレベルを引き上げていてくれていたのだということが伝わってきます。

今作では〝挫折した男の心の再生〟みたいなドラマが感じられ、役柄的には他の2作と比べてもダントツでカッコよかったと思いました。

 

「エイリアン」便乗映画かと思いきや、宇宙には行かずなぜか南米に行くという「サンゲリア」60%みたいな内容。

所々潜入アクションもののような要素もあり、悪役は白スーツに美女の部下を侍らせていて007みたい…と何とも節操のない映画でしたが、何本も映画を観たような謎のお得感があり、めっちゃオモロかったです。

 

「プロジェクト・ヘイル・メアリー」…少年漫画的ロマンとなろう小説的高揚感

「火星の人」(映画「オデッセイ」は自分はかなりイマイチだった)のアンディ・ウィアーの最新作で2021年のベストセラー「プロジェクト・ヘイル・メアリー」を読みました。

ネタバレなしで読むのが最高の作品、読み始めると手が止まらなくて2晩で一気に読んでしまいました。

友情・努力・勝利の胸熱展開、主人公がチート級の頭の良さで極難を次々に乗り越えていく高揚感には少年漫画やラノベのような楽しさがあり、親しみやすいSFでした。

未来に対して異様に楽観的というか、人類は意外にしぶとい…「火星の人」も本作も昔読んだJ・Pホーガンの「星を継ぐもの」に似たものを感じました。

(※以下ストーリーを軽く説明しています)

 

病室のような部屋で目を覚ました記憶喪失の主人公。

どうやら自分が居るのは宇宙船だということに気付き、徐々に地球での記憶を思い出していきます。

地球ではある日から突然太陽エネルギーが減少し、氷河期の危機に直面していました。

未知の地球生命体(といっても微生物)が太陽エネルギーを食べているのが原因らしいと調査で発覚します。

主人公のミッションは唯一その生命体に感染していない恒星に赴き、地球救済のヒントを得ることでした…

 

温暖化も深刻な問題だけど自然様のご機嫌ひとつでまたとんでもないことに…

このままでは30年以内に氷河期が来て人類の半数が餓死すると予測、全ての国が集まり叡智を結集して爆速で進む宇宙船ヘイル・メアリー号を開発します。

実際皆こんなに協力できるのか、現実はもっとお互い出し抜いたり争ったりするんじゃないだろうか…

「人間は誰でもお互い助け合うのが基本で本能だ」…「火星の人」もこんな超絶ポジティブ思考でしたが、これはあえてお花畑にしているというか、作者の祈りや願いが込められているように感じました。

 

いまの人は…いまがどんなに恵まれているか、まるでわかっていない。過去はたいていの人間にとっては情け容赦ない過酷なものだった。

産業革命は農業を機械化した。そしてそれ以来、わたしたちは他のことにエネルギーを注げるようになった。でもそれは過去200年間のことよ。

絶望に駆られた飢えた国々が食糧を求めて互いに侵略し合うようになると、食糧生産量は減る。戦争は工業を破壊するの…

「火星の人」でも主人公が必死にジャガイモを育てる姿に農業(食料)が人の生活の根幹なんだとまざまざ痛感させられるような気持ちになりましたが、本作でもそれは共通していて、考えてみればこれは「漂流教室」とか「トリフィド時代」なども同じ。

深刻な部分はあえて語るだけに留められつつ、でもその怖さは充分想像させられました。

本来宇宙というスケールでみれば人間の争いは塵芥に過ぎないものなんだ…本作では頭のいい人たちが何のしがらみもなく皆協力し合うという理想的な姿があえて描かれています。

…とはいえ主人公の他に同乗していた宇宙飛行士2人(中国人とロシア人)が昏睡状態から目覚めずアメリカ人の主人公1人だけが無双する…という展開はなんだかんだでアメリカ万歳だなあ(笑)。

宇宙船が問題の生命体を燃料にして進むという解決策がまた面白く、宇宙は人類をより豊かにする何かが眠っているでっかい宝島なのかもしれない…

トップガン マーヴェリック」にもあったようなアメリカの力強さ、フロンティアスピリットみたいなものを感じる作品でした。

 

(※ここから重大なネタバレ)

そして本作ではなんと異星人が登場します。

太陽のエネルギーが減って他にも困ってる生命体がいて異星人の〝彼〟と協力し合うアツい友情物語に。

こんなに上手くコミュニケーションとれるのか!?って思いましたが、なぜ全く異なる環境で生まれた2つの生命体の知的レベルがそこそこ同じだったのか…にもそれなりの解釈が加えられていました。

相手がどんな奴なのか分からなくて悪い可能性も思い浮かぶけど、それでも1人より絶対に得られるものがあるはずだ…扉を開く主人公の心境にドキドキさせられました。

見た目や食文化がまるきり違っていても「なぜ…?」と興味を持って相手を尊重する優しい世界。

1人ではできないことが得意分野の違う2人の交流によって可能性が大幅に増えていく…この展開が胸熱です。

 

「火星の人」がハッピーエンドだったので、この主人公も地球に帰れるだろうと予想しながら読んでいました。

主人公・グレースが地球に戻って年取った教え子たちに囲まれる。ヨボヨボのお婆ちゃんになったストラットに『あなたのこと、別に好きだったわけじゃないんだからね…!!』とか言われたりして…と能天気に考えていたら意外なラスト。

途中まで「今回の主人公『火星の人』と全くおんなじでグレースがマークに代わってても違和感ゼロやわー」と思っていましたが、最後の最後で主人公の正体が明かされるというか、本当は宇宙船に志願して乗っていたわけじゃなく強制で乗せられていたことが発覚する。
(昏睡耐性もめっちゃ選ばれし者設定やなあ、と思いましたが)

半ば強制的に利他的な行動をさせられていた主人公が最後にロッキーを助けるため本物の自分の意志で献身的な行動をとる。

人の善性を強調したような物語だと思いました。

けれど主人公の人生には確実に犠牲になったものがあって「火星の人」よりも苦味が残るというか、自己犠牲の代償がしっかり描かれていたように思います。

地球が助かったかどうか判明するまでの主人公の心労は相当なものだっただろうし、至れり尽くせりとはいえ生存に適さない環境で生きるのは過酷なことでしょう。

一応所違えどやりたかった仕事は実現していて、帰還に向けた支援と本人の意志が最後に示唆されてもいました。

映画の「オデッセイ」は主人公が地球に帰るところまで映しきってるのがダサいなあ、皆宇宙船に乗って帰るとこで終わった方が余韻があってよかったのになあ…と思っていたのですが、でもこの「ヘイルメアリー」は最後に地球に戻ったお爺ちゃん主人公の姿がみてみたいなあ…そんな風に思うラストでした。

 

それにしても映像化は中々難しそうな作品であります。

「火星の人」は主人公の日記(ログ)という形の独白になっていて、本当はもっと辛いけどあえて自分を鼓舞している&遺書になる可能性が高いので他のクルーや家族が傷つく可能性を考慮してあえてネガティブなことは書かない…そんな主人公の人間性が垣間見えて心打たれたのですが、映画の「オデッセイ」はそういう部分が全く描けておらず悲壮感が伝わって来ないのも非常に不満でした。

今回も記憶喪失前→現在を行ったり来たりするのが謎解き的要素として作品の1つの醍醐味になっているので、脚色の良し悪しがはっきり出そうです。

主演はライアン・ゴズリングの予定だそうですが全然イメージ違うなあ、もっと若々しくて朗らかなイメージ。

トップガン マーヴェリック」のマイルズ・テラーはどうかな、ストラットはジェシカ・チャステインを思い浮かべながら読んでしまいました。

 

「ヘイル・メアリー」はアメフト用語で「神頼み的パス」を意味するのだとか。

これだけ頭のいい人が集結しても思い通りにいかないことは多々あって運を天に任すようなものなんだ…自然や人生の無情さを感じさせつつ、知恵と希望を持って立ち向かっていく主人公が胸熱で夢中で読んでしまいました。

 

「俺たちは天使じゃない」(1955)…すんごいテキトーで謎にあったかいクリスマス映画

カサブランカ」のマイケル・カーティス監督とハンフリー・ボガートが再タッグを組んだコメディ作品。

ツッコミどころ満載ですが、掛け合いがとても面白く古い作品なのに爆笑して観てしまいます。

ジョセフ(ボギー)、アルバートアルド・レイ)、ジュールス(ピーター・ユスティノフ)の3人はある夜刑務所から脱走。

アルバートは毒蛇のアドルフをペットとして飼っていてオシャレなバスケットに入れて持ち歩いています。(動物可愛がる囚人あるある)

近くのフランス植民地の町に身を寄せた3人でしたが、どこもかしこも保釈中の囚人だらけ、「この中なら混じっててもバレない」と余裕。

3人のいた監獄は「パピヨン」でおなじみのデビルズ島らしいのですが、本作の雰囲気は驚くほど緩いです。

とある雑貨屋をみつけた3人は屋根修理をタダで引き受けると嘘をついて物を盗もうとします。

しかし下世話な好奇心から雑貨屋家族を天井から観察。

結婚18年目なのにラブラブな夫婦、パリにいる幼馴染に恋焦がれている純粋無垢な一人娘…”きれいなもの”を目にして思いがけず心動かされる3人。

しかし雑貨屋はツケ払いの客が多く、店主の善意を利用して後からクレームをつけてはカネを払わない客もいて店は経営難に陥っていました。

「俺が一肌脱いでやろう」と接客係になるボギー。

さすが元詐欺師、要らないものを売りつける天才、ハゲに整髪料を売りつけるなど離れ業をやってのけます。

なぜか料理も達人級のボギーは店の奥さんとすっかり打ち解けます。

「信じられないわ、あなたが前科持ちなんて…なにをやったのかしら」
「病気に効くといって瓶詰めの空気を売ったのさ」

(この人現代でも上手くやっていきそう)

アルバートは恋の悩みを相談する一人娘のイザベルと仲良くなります。

「あなたとても罪人にはみえないわ、なにをやったのかしら」
「金を貸してくれない親戚を14回火かき棒で殴ったのさ」

(お前はホンマにヤバい奴や)

当初の予定では物を盗んで家族の首を掻き切ってやろうと考えていた3人でしたが、一家とあたたかいクリスマスディナーを一緒に迎えてすっかり心変わりしてしまいます。

そんな中、雑貨屋の経営主で大金持ちのアンドレ叔父と甥のポールが突然パリからやって来ました。

富豪なのにドケチなアンドレは父親のフェリックスに「店の帳簿をみせろ」と迫ります。

「全然儲かってないし先月の帳簿も全くつけてない」…

大人になって観るとこの叔父間違ってなくてオトンの方がアカンのとちゃうか、と思いますね(笑)

そこに颯爽とまたボギーが助っ人に入り「俺は工場7つ分でっち上げたことあるから任せとけ!」と偽帳簿の作成に掛かります。

ところが改ざんする前に目ざとい叔父は帳簿を見て激怒。

脱走囚3人が「アイツやっちまうか」と冗談混じりに不謹慎極まりない裁判ごっこをして遊んでいると、アルバートの飼っていた毒蛇が脱走、アンドレ叔父を噛んで死なせてしまいます。

3人はこれは事故だと開き直り今度は遺言書を偽造。

フェリックス一家に大金が入るよう細工しますが、叔父に似てガメつい甥ポールはそれを燃やします。

その上娘のイザベルを裏切って造船屋の令嬢と婚約していたことが発覚、また3人が冗談混じりに「やっちまうか」と談笑しているとまたまた毒蛇が甥を…(以下略)

 

「蛇が勝手に嫌な奴を噛む」というアホみたいなストーリー。

でもこのドタバタ劇が可笑しく、誰も嫌われ者の叔父を起こしに行かないので第一発見者がいつまでも現れない、上品そうな奥さんが「私がアイツのこと殺してやろうと思ってたのよ」と物騒な告白をし始めたりで笑ってしまいます。

スカッとジャパン並みの非現実さで邪魔者が退場して一家には幸せだけが残るご都合主義なドラマ展開。

一家に感謝された碌でなし3人が高跳びしてハッピーエンド…だとしっくり来なかったと思いますが、なんと3人は自ら元いた監獄に戻ることを決意します。

「外の世界は危ない。囚人の方がマシな奴が多いかもな。」(なんでだよww)

でもこのエンディングが妙に洒落ていて、3人(+1匹)の頭に天使の輪っかが乗っかるラストが何だかとっても可愛らしい。

3人とも悪い奴だし殺人事件だし、「素晴らしき哉、人生」などと比べるととんだ不真面目映画ですが、思いがけぬ良縁が思いがけぬ幸運を呼び込む…ゆるっとしたテキトーさになぜか心があたたまります。

舞台劇のような地味な作りなのに、台詞が巧みで俳優の掛け合いの演技だけで楽しめてしまうクラシック作品でした。

 

「わらの犬」…大人しい男の怠慢と暴力の才能

ニュースなどで何か事件があると「犯人は真面目で大人しい人でした」と報道されているようなことが時々あって、大人しい村の住民である自分は「大人しい奴のネガキャンやめてくれや、もし犯人がパリピやったら『犯人は賑やかなパリピでした』ってちゃんと言ってくれよな」などと下らないことを考えていました。

わらの犬」は大人しいやられっぱなしだった男がゴロツキどもを一網打尽にするというようなストーリーで、暗さもありつつどこかカタルシスも感じてしまう作品です。

主人公が好意的に描かれているかというとそうでもなく、「主人公が楽な方に逃げてコミュニケーションを怠ったためにこういう結果になってしまったのだ」と思わせる節もあります。

 

数学博士のデイヴィッドは争い事を好まない平和主義者です。

しかし教会の牧師が家を訪ねてきた際には「俺の方がインテリとしては格上」とマウンティングでもするような横柄な態度をとったり、妻の飼い猫に果物を投げつけるなど「逆らってこない相手」には自らも暴をぶつけている…ダブスタ人間の一面もあります。

この鬱屈した主人公には同情的な要素もあって、彼が引っ越してきたイギリスの田舎町は閉鎖的でモラルが低い何とも嫌な感じのする町です。

ある日デイヴィッドが酒場を訪れると、店主が「閉店だ」と言っているのにゴネて暴れては自分の要求を無理矢理押し通すジジイに出くわします。

ジジイを見るデイヴィッドの眼差し…「俺はあんな程度の低い野蛮人じゃない」という見下しもあれば、「傍若無人に振る舞って自分のエゴを突き通す者への強い羨望」もあるように思えました。

自分も普段からこういう気持ちを持っていて「感情を溜め込みやすいタイプ」のデイヴィッドはすごく共感するキャラクターです。

 

妻エイミーの故郷である田舎町で暮らし始めたデイヴィッドは家のガレージ修理を妻の顔馴染みの男連中に依頼することにしました。

しかし彼らは碌に仕事もせず無礼な態度をとってきます。

日曜大工も出来なければ車の運転は下手くそ、背が低くて“男らしさ〟に欠けたデイヴィッドはこの町のゴロツキたちにとって嘲笑の対象でしかありませんでした。

ある日悪質なイタズラで飼い猫が殺されエイミーに「あなたから猫のことを訊いて」と言われても事なかれ主義のデイヴィッドは相手にへり下った態度をとってしまいます。

これを契機に「何をしてもいい相手だ」とますますナメられたのか、嫌がらせはエスカレートし挙句不在時に妻がレイプされてしまいます。

一方だけが我慢していると相手はどんどん増長してさらなる不利益を被ってしまう…こういう光景はどこにでも転がっているものでその理不尽さが突き刺さります。

一方このデイヴィッドが「逃げの人間」で、イギリスに越して来たのも「暴力的なアメリカに嫌気が刺したから」は建前で本当は上手くいかないことから逃避してきただけなんだろう…研究部屋に篭りきりでギクシャクし始めた夫婦関係にも見て見ぬふりな姿をみると、コミュニケーションを極端に怠ったこともこの結果を招いた一因だったのかもしれない…と思わせます。

「礼儀正しく振る舞っていればそのうち相手はこっちに好意を向けてくれる」…根拠なき無言の期待で行きたくもない狩りに出かけた姿が痛々しく映ります。

もっと早い段階で怒りを伝えていればああまではならなかったのかもしれない、町の少佐など誰か仲介者を入れて周りを巻き込めばよかった、或るいは早々に町を出ると決めていれば…様々な違う可能性もよぎります。

 

そしてある晩町でさらなる事件が起きて、デイヴィッドはゴロツキ共から追われることになった知的障害者のヘンリーを家に匿うことになります。

話すスキルもなければ信じてもらえる土台もないヘンリーは本物の弱者です。

田舎町に退屈している軽薄な女子が気晴らしに彼を誘惑したため思わぬ悲劇が起こってしまいました。

(監督者である兄から「殴られる」…)

ヘンリーが無意識的に引き起こした暴は過去に振るわれた暴力への恐怖心から来たものです。
そしてまたヘンリーの兄が弟に振るった暴力も町の人たちの差別という暴を恐れるが故に振るわれたもので、哀しい負の連鎖が描かれています。  

デイヴィッドはこのヘンリーをリンチしようとやって来たゴロツキたちを家から締め出しました。

法を守る者として行動しなければというまっとうな規範意識…そういったものもあれば同じく「弱い男」として見下されているヘンリーと自分が重なり「もうあいつらのいいようにはされないぞ」という男の矜持がここで芽生えたのではないかと思います。

ここからのダスティン・ホフマンの攻勢が凄まじく、常人ならパニックになりそうな状況下で、実に冷静に判断を下しながらゴロツキたちと対決していきます。

戦争のはらわた」で女子供に優しいジェームズ・コバーンがいざ戦場に出ると最も人を殺すことに長けていたように、この主人公もまた凄まじいギャップをみせます。

油を沸かした鍋なんていう殺傷能力の高い武器を咄嗟に思いつくのにはビックリしますし、少佐が撃たれた直後から「3人とも消される」と一気に腹を括ったようになるのも冷静です。

そして「大人しい人間が傍若無人な野郎どもを叩きのめす」という展開に仄暗いカタルシスを感じてしまいます。

 

襲撃の最中デイヴィッドは妻エイミーとも対立し彼女にも暴力を振るいました。

まるでタイプの違う2人でこのカップルのやり取りをみると「夫婦というより父娘」ですが、エイミーが男性に父性を求めるタイプで、落ち着いた年上父親タイプにみえたデイヴィッドとは相性が良かったのかもしれません。

エイミーがあれだけ抵抗していたレイプの最中に突然相手を求めるような仕草をみせたのも(夫の情けない姿が何度もインサートされる)、デイヴィッドに父性が欠けていることに絶望し瞬間代わりの存在を求めてしまったが故に思われます。

身勝手で依存的にも思える行動ですが、彼女が育った村は夫に付き従う牧師の妻などをみても男女の役割がはっきり分かれています。

エイミーは軽率な点は多々あれど「異常にふしだらな女」などではなくごく普通の女性ではないかと思いました。

凄惨な体験をしたあと、夫の思わぬ強さに再び惹かれて共犯者として絆を深めるのか、理解し難い存在だと距離をとるのか…彼女の表情には何とも読み難いものが残りました。

 

そしてラスト、「帰り道が分からない」と言ったヘンリーに対して主人公が「僕もだ」と答えたところで映画は幕を閉じます。

暗いエンディングであることには違いなく、暴力で対抗するしか解決できないような状況に主人公が追いやられてしまったこと自体、とても悲劇的です。

だけど人と人とがぶつかって理解し合えないときというのはどうしてもあって、最悪を避けるために低い期待値で相手に対処するか距離をとったりして行くしかないんじゃないだろうか…

この世に確かに存在している理不尽な暴力の存在と自分の中にもある暴力性を認められた主人公は一皮剥けた人間になったんだ…真実味を感じるラストには不思議な安堵感も残りました。

 

低予算で撮られているのにどの登場人物にも無駄がなく、ダスティン・ホフマンはもちろんスーザン・ジョージの演技も改めてみると素晴らしかったです。

完成度の高い、凄い良い映画でした。

 

「ワイルド・ギース」…英国のエクスペンダブルズ、70年代の寂寞感

イギリスの名優が集まった78年公開のミリタリーアクション。

アフリカ前大統領救出のミッションを負った傭兵集団が依頼主に裏切られ現地に置き去りに…

基本はエンタメアクションしつつ70年代ならではの骨太さがあって見応えのある作品でした。

ベテラン傭兵のフォークナー大佐(リチャード・バートン)は大富豪エドワード卿に呼び出され、アフリカ某国の前大統領・リンバーニの救出を依頼されます。

独裁者の将軍に追い出されたリンバーニは表向きには病死と公表されていましたが、実は政府によって監禁されていました。

銅の採掘権を渡さない将軍を快く思わないエドワード卿は、人格者と名高いリンバーニを復権させようと目論んだのでした。

 

破格の依頼料に惹かれて仕事を引き受けた大佐は親交のあるプロフェッショナルたちを呼び集めます。

女たらしだけど凄腕パイロットのショーン(ロジャー・ムーア)。

作戦立案家のレイファー(リチャード・ハリス)は金目的ではなく善人を助ける傭兵だと仲間内の評価が高い人物。

幼い息子がいるので参加を渋りますが、仕事のやりがいを思い出しチームに加わります。

前半たっぷりかけて描かれるチーム結成の描写が非常に丁寧、ジョークも飛ばしながら湿っぽくないのがいいです。

金に困っている者、ただ戦地が好きでたまらない者など動機は各人各様。

中高年の同窓会のようなメンバーですが、かつての仲間に会うと皆顔を輝かせ、共に死線をくぐり抜けたもの同士にしかない強い絆を感じさせます。

 

貨物機に乗り危険なパラシュート降下で現地に着陸する作戦が開始、向こう300メートル遮蔽物のない兵舎を強襲するため青酸カリを塗った毒矢で見張りを襲います。

圧倒的手際のよさで前大統領を救出する部隊でしたが、なぜか彼らを乗せぬまま去っていく迎えの飛行機…

依頼主の富豪が裏切って将軍と割安の取引で銅の採掘権を取り戻し、傭兵たちに支払う金はケチって彼らを見殺しにするよう指示したのでした。(なんて汚ない奴なんだ)

孤立した部隊50名は絶望の中、前大統領を担いで彼の故郷を目指そうと歩を進めます…

 

主要キャストのギャラが予算を圧迫したのか、大規模な戦闘シーンはほぼ皆無。しかしとにかく移動速度が速く、敵兵に出会っては撃ち合っての繰り返し、多勢に無勢の絶望感はひしひしと伝わってきます。

あれだけ絆の強かったメンバーですが、いざ仲間が死亡すると瞬時に死体は置いていくし助かる見込みのない者は介錯します。

極限下でも理性的でいられる&合理的な判断が下せるような人だからこそ取れる非情な行動。

けれど哀しみがないわけではなく悲痛な決意が読み取れてなんとも切なくなります。

 

前大統領の世話役には南アフリカ出身の白人・ピーターが選ばれますが、黒人を見下していて差別的な言葉を口にします。

が、リンバーニの人間性に触れて許しと和解をみせる感動の流れ…

もう少しこの2人のやり取りはじっくり見たかったような気がしますが、とにかくスピード感重視の作品。

1人1人のキャラのクローズアップは少なめでしたが、脇役に至るまで印象的な顔の役者ばかりでそれでもドラマチックにみえるのが凄かったです。

 

なんとか脱出用の飛行機を入手するも、仲間はどんどん散っていき、しんがりを務めていたレイファーが1人取り残されてしまいます。

苦渋の表情を浮かべつつ彼の望みを重んじてレイファーを射殺する大佐。

さらには負傷した前大統領も機内で息を引き取ってしまいます…何という徒労感。

報われない結末ですが、この世を滅ぼす死神のような顔をしたリチャード・バートンが富豪に復讐しに行きます。

善人役のリチャード・ハリス死亡フラグが立ちまくっていたし、バートンが息子に会いにいくラストまで何となく予想できてしまいました…が、ラストの画はベタだけどいいですね。

リチャード・バートンに善玉オーラがあまりなく気難しいプロのおっさんって感じなのがハマリ役、引き締まってて良かったように思いました。

 

前半・後半と上手く場面転換しつつタイトにまとまっていてこのジャンルを普段観ない人間でも大いに楽しめました。

エンタメアクションしつつ暗さや侘しさがしっかりあって70年代らしくていいなあと思いました。