どうながの映画読書ブログ

~自由気ままに好きなものを語る~

「夕暮れにベルが鳴る」…スクリーム+ハロウィン!?静かに怖い異色スラッシャー

「スクリーム」のパンフレットにて鷲巣義明さんが元ネタとして解説されていた79年のホラー。

74年に「暗闇にベルが鳴る」という作品があって、スラッシャーものの先駆的作品として知られていますが、おそらく本作も「暗闇~」に影響を受けたであろう作品。

電話をキーアイテムとして使っている点が2作品共通していますが、邦題もおそらく「暗闇~」に便乗して付けられたのではないかと思われます。

ヒロインが不気味な男と電話で応酬する冒頭20分が迫真…!!(スクリームの冒頭と確かに一致)

中盤以降は犯人視点のドラマに切り替わり、緊迫感はグッと落ちてしまいますが、何とも言えない不気味さが漂っていて、ゾクッとするホラー作品になっていました。

 

◇◇◇

ベビーシッターの仕事のため、とある家庭を訪れた女学生ジル。

子供たちは既に寝かしつけられており、居間で1人過ごしていると、突然不審な電話が…

「子供たちを確認したか?」…とだけ言い残しブツリと切れる謎の男からの電話が、何度も何度も繰り返し掛かってきます。

不気味に思い警察に相談の電話を掛けたジルは、探知機で発信元を調べてもらうことに。

「発信元はその家の2階だ!!早くその家を出ろ!!」…駆けつけた警察が2階へいくと、2人の子供たちは既に惨殺されていました。


「子供たちを起こさないでね」…と事前に依頼主に言われていたものの、こんな変な電話が何回も掛かってきたら普通子供の様子見に行かないもんかなー…と思ってしまいますが、静寂の中執拗に掛かってくる電話がとにかく不気味。

マネキンのような容貌の女優さんの見た目も相まって恐怖度はさらにアップ。

発信元が家の中だった…というくだりは「暗闇にベルが鳴る」でも「スクリーム」でもやっていたと思いますが、悪寒が走るような怖さがあります。

殺人シーンは一切なく、子供たちも全く映されませんが、それが却って不安を煽り効果的。

のちに刑事の口から語られるエピソード…「凶器を一切使わず素手で遺体がバラバラに切り裂かれていた」という説明にも戦慄させられます。


そして話は一気に飛んで事件の7年後…

子供2人を惨殺したカート・ダンカンは精神異常だと判断され、警備の薄い精神病棟に収監されていました。

しかしある日突然脱走。

その知らせを聞いた元刑事・クリフォードがダンカンの後を追います。

「ハロウィン」を彷彿させるストーリー展開ですが、クリフォードは7年前の事件で子供を殺された親から「犯人を野放しにするな、殺せ」と密やかに依頼を受けていました。

追っ手が法の番人ではなく、私刑に走る男というのも陰鬱ムードを加速させていきます。


一方、病院から抜け出てどこにも居場所がないダンカンは、場末の酒場に入り浸り、そこの常連客である女性・トレイシーに付きまとっていました。

「僕の友達になってよ」「コーヒー1杯だけ。今日がダメなら明日は?明日のいつがいい?」…冒頭のあの変な電話にも納得の、異常なしつこさ(笑)。

女性がどんなに袖にしても、全くおかまいなしで付きまとってくるダンカン。

本人は悪気ゼロで、相手の気持ちとか空気とか全く読み取れないタイプのようですが…

冒頭あれだけ凄惨な事件を起こした人の、どこか弱々しい姿。

けれどそれが逆に不気味で、いつ凶行に走るか分からないような静かな恐怖があります。

 

付きまとう相手の女性はなぜか若い美女ではなく、ドスのきいた声のおばちゃん(笑)。

でもこのおばちゃんがこの映画の中で唯一人間味溢れる人物で、ドラマ要素を爆上げしてくれているような気がします。

ベビーシッターのジルは子供を一切見に行かず、女友達との電話の会話でもどこか冷たい感じがして、包容力ゼロ。

またダンカンが収監されていた精神病院の女医は「患者の情報は全部ファイルにあるから」とまるで物扱い、電気ショックを38回やったとかエゲツない婆さん。

それに比べておばちゃんは距離を取りつつも相手を傷つけまいと優しくフォローしてくれたりして、意外に寛容な人。

ダンカンにとっておばちゃんだけが〝ママ味〟を感じさせる、縋り付きたくなるような女性だったのかも…

「僕は生まれてこなかった、存在していないから誰も僕に触れない」…といった病的な台詞からも、ネグレクトされてきた子供だったのかな、と闇深な過去を感じさせるダンカン。

何度もおばちゃんに声をかける姿は母を求める幼子のようにも映ります。


ダンカンがトレイシーに付きまとっていることを知ったクリフォードは、彼女に捜査協力を依頼。

しかし作戦は上手くいかずダンカンは逃走してしまいます。

奇声をあげながら逃げまくる中年男と、それを追いかけるデブの刑事と…地味ながら中々の地獄絵図をみせながら、映画は再びクライマックスへ…

 

終盤は冒頭のヒロイン・ジルが再び登場。

結婚し2人の子供をもうけたジルは、夫とディナーに出かけるため子供たちをベビーシッターに任せることにします。(あんな事件を経験しといてよく…と思ってしまうけど、因果が巡ってくるような恐怖)

行った先のレストランにて「子供たちを確認したか?」…7年前と全く同じ電話が掛かってきて、絶叫しパニックになるジル。

大急ぎで夫と共に帰宅しますが、子供たちは何事もなく眠っていました。

しかしその後、身体を休めようとしたジルがベッドに入り隣で寝ているはずの夫に話しかけると…

隣に身を横たえていたのはダンカン…!!(ヒロインと共に絶叫)

殺されそうになるジルでしたが、そこにクリフォードが遅れてやって来てダンカンを射殺。ジルの夫も意識を取り戻し、一家は事なきを得ます。

 


なぜダンカンは再びジルを襲ったのか…たまたま新聞に載った彼女の顔が目に留まって、思い出して殺しに行こうとしたようですが、元々彼女を狙った動機は何だったのか、不明。

因果関係や人物描写は深掘りされておらず、話の繋ぎが粗めなのは残念。

けれど「姿を現す殺人鬼」ダンカン役の俳優さんがハマリ役で、不気味ながらどこか寂しそうな姿が心に残ります。

到底理解し難い凶行を描いた序盤からの、サイコパスに寄り添ったかのような犯人視点の中盤…この落差もこの作品の面白いところではないかと思いました。


ヒロインと刑事役の俳優さんが続投した続編があって、こちらも怖いらしいのですが未見。

1は昔はビデオ店でみかけた作品だったように思いますが、DVD未リリース。1作目&2作目のお得なセットBlu-rayとか出ないかな…

 

「スクリーム」関連で面白かった1本。

これといった殺人シーンもなく、静かな作品なのにゾクッとさせられる、異色スラッシャーでありました。