今期のホラーマニアックスのリリースタイトル。
76年のパニックホラーでこのジャンルの有名タイトルだと思いますが、未見だったのを初鑑賞。
大きい怪物が出てくる作品もいいけど、「フェイズⅣ」とか「スクワーム」みたいに大量の小さい生き物に襲われるやつもいいよね…と思っていたら、虫のサイズが思ったよりデカい(笑)。
前半と後半で大きくトーンが違っていてびっくりでしたが、見応えは抜群の作品でありました。
◇◇◇
荒涼とした景色のアメリカの田舎町。
ポツンと佇む教会に集まった人々が神父の説教を聞いていると、突然大地震が…
床が波打ち壁に亀裂が入る迫真の描写はゾッとするような臨場感。
自然の脅威を感じさせる冒頭から一気に引き込まれます。
揺れがおさまったのち、車で移動していたとある家族は、突然車体が燃え出したため亡くなってしまいます。
その後、震源地近くの農場で奇妙な虫を発見した学生は、生物学科の教授の下へ…
パーマイター教授の調べによると、ゴキブリのような見た目のその虫は、体内で発火することができ、周りの物を燃やして炭素を食する生き物。
数千万年前から地中にいた太古の生き物が、突然変異か何かで地上に出てきたのではないか…と推測します。
電話の受話器に張り付いていたり、ケーキの箱にくっ付いていたり、どこからともなく潜んでいる虫たちは悪寒の走る気持ち悪さ。
さらに〝燃える〟という発想がユニークで、広大な田舎の土地のあちこちから煙が立ち上り、草木や建物が燃えている異様な光景は終末感があって素晴らしいです。
主人公である教授が生態を探りながら、町の人々が虫と闘うパニック映画が始まるのかと期待したら、後半一気に違うトーンに…
教授の妻・キャリーが虫に襲われ死亡。憎しみに駆られた教授は一気にマッドサイエンティスト化。
閉じられた空間で延々と虫の実験をする地味な画がひたすら続きます。
冒頭のシーンで教授夫妻が仲のいい夫婦なのはなんとなく伝わってきたし、自然の脅威に対処する役割を担った人が静かに狂っていくの、面白いドラマではあるのですが…
あれだけ風呂敷を広げておきながら後半から外の世界が結局どうなったのかなど、全く分からないまま話が進んでいって、チグハグ感は否めない印象。
そしてなぜか普通のゴキブリと謎の虫を交配させて新種を誕生させる教授。
虫の名前は「パーマイテラ・ヘファイストスだ」…ってちゃっかり自分の名前入れとるやないかーい(笑)。
生まれてきた子供虫たちに母親虫を食わせるシーン、妻の仇をとったということなのか、用済みになった古い個体を駆逐する自然の残酷さに思うところがあったのか…複雑な表情で泣き笑いする教授の心境がさっぱり分からねえ(笑)。
それでも俳優さんの演技が鬼気迫っていてなぜだか引き込まれてみてしまいます。
虫の管理が杜撰で数も数えず木箱に放置、ピンセットも使わず危険な虫を手掴み…と研究者かどうか疑うようなところも多々あるのですが(笑)。
ともあれこの教授のせいで、発火作用に加えて従来のゴキブリの雑食性を併せ持つとんでもない新種が爆誕…!!
生肉を喰らうようになり、夜中身体を這ってくるシーンの薄気味悪さ。
なぜか知能も異常に進化し、新聞を読み、アルファベットで壁文字を作って交信するまでに…
インパクトは強烈ですが、終盤はちょっと荒唐無稽になりすぎた感じがしました。
後半はもっとタイトにしてもう少し短い尺でまとめてもよかったのかも。
虫の撮影には「フェイズⅣ」を手掛けた人が参加していたらしく、大きな卵鞘が運ばれていく様子、仲間の痛みに共鳴してもがく様子など不気味さを上手く演出していて、迫力がありました。
神経を逆撫でするような電子音楽も効果的。
前半とてつもない傑作オーラを放ちつつも、後半は異質でさらに人を選ぶ感じ…ですが、見所はいっぱいあって、なんか面白かった…!!
こういうネイチャードキュメンタリーみたいに生き物の様子をじっと捉えた映像はなぜだか無心でみてしまいますね…