どうながの映画読書ブログ

~自由気ままに好きなものを語る~

「エイリアンネーター」…マッティ&フラガッソ、驚愕のイタリア製パチエイリアン

ブルーノ・マッティ監督、クラウディオ・フラガッソ脚本。「ヘル・オブ・ザ・リビングデッド」のコンビによる89年の作品。

本家に先駆けて「ターミネーター2」のタイトルでアメリカで公開しようとして問題になったのだとか(笑)。

一見馬鹿げているように思える邦題「エイリアンネーター」はズバリ作品内容そのものを表していて、エイリアンとターミネーターが同時に襲ってくるという驚愕の作品でありました。

 

◇◇◇

近未来、環境汚染により荒廃したベニス。

生き残った人々はシェルターで生活していました。

ある日水質改善にあたっていた研究所からの連絡が途絶えたため、特殊部隊が送り込まれることに…

しかし彼らを待っていたのは未知の生命体でした。

 

ベニスに地下シェルター!?のっけから驚かされつつ、特殊部隊が探索に出かけるというベース「エイリアン2」なストーリー。

バスクエスに似た風貌の女性がいるかと思えば、無言でヌンチャクを振り回し続ける男性がいて、謎すぎるメンバー構成。 

でも2の空気感がほんのちょっぴりだけ出ていて笑ってしまいます。

科学者のサラもチームに加わりますが、どことなくリプリーに寄せた衣装や髪型。

しかしなにぶん低予算なので、暗い地下道を一行がノロノロと進むだけのかったるい映像が流れ続けます。

 

時折エイリアンに出会しては戦闘。

連れ去られた仲間の行方を追うと、繭にされた恐ろしい姿が…

胸から何かが飛び出して来るかと思いきや、出てきたのは役者さんが操作しているのが丸分かりの手(笑)。

探知機が無数の反応を示すも一向に姿がみえない、あの名シーンも再現されますが、さっきまでなかった唐突な煙幕とともにエイリアンが出てくる雑さ。

何度ボタンを押してもシャッター扉が開かない…!!と焦っていたら、隣のボタンと押し間違えていただけだった…!!のシーンにはめっちゃ笑いました。

 

こんだけ話はパクっているのにエイリアンの造形はゼノモーフに寄せておらず、オリジナルデザイン。

古典的怪奇映画を彷彿させるどこか魚人に似た風貌で、特撮ものらしい雰囲気。

甲高い鳴き声をあげてはあっさり銃弾に倒れ、あまり強くはありません。

 

やがて部隊は生存者の女の子を発見。

出会い頭から主人公に懐きまくる少女サマンサ。背丈が大人とあまり変わらなくて中学3年生くらいにみえます(笑)。

「ママは怪物なんていないと言っていたけどいるのよ」…本家丸パクリの台詞の数々に閉口しつつ、罠に嵌められ異生物に襲われる2人。

監視カメラに助けを求めるも、部隊に潜んでいた裏切り者・フラーがその接続を遮断してしまいます。

 

冒頭から異様な佇まいだったサミュエル・フラーと名乗る兵士。

巨大企業チューブラー社に仕える男は、なんと同社が作り出したターミネーターでした。

序盤からどうみても怪しく、負傷して露わになったメカボディを隠そうと、ずっと腕を庇っているのが不自然の極み。(なぜ長袖を下ろさないのか)

 

事なきを得て探索を続けたサラたちはさらに驚愕の事実を突き止めます。

なんと水質改善にあたっていたはずのチューブラー社はベニスの町を汚染していた張本人。

実験により人々を異生物化させ、町を荒廃させて、美術品などの財産を独り占め。さらに恐ろしい兵器開発を進めようと企んでいたのでした。

 

真相を知った部隊を消そうと、襲いかかってくるターミネーター

ここからパチエイリアンとパチターミネーターに同時に襲われる怒涛の展開に…

撃たれても襲いかかってくるターミネーターのボディは顔の中が機械…ではなく明らかに顔の上にメイクを盛り付けたのが丸わかりの仕上がりになってますが、T- 800に近づけたい心意気は伝わってきます。

 

最後にはなぜか施設の爆破装置を起動させるターミネーター

サラとサマンサはチューブラー社が開発した謎のマシーンに乗り込みますが、なんとそれは時をかけるマシンでした。

現代の観光客で賑わう美しいベニスに辿り着いた2人。

そこにもう1台のタイムマシンを使ってやって来たフラーが襲いかかり、夜のベニスでターミネーターと追いかけっこ(笑)。

なんとか殺人マシンを撃退した2人は、現代の街に残ることに。

迫り来る無情な未来を2人は変えることができるのでしょうか…

「嵐が来る」…そんなセリフが聞こえてきそうなラスト。

2人が運河をみつめるエンドロールはなぜだか美しく、こんなC級映画なのにあの傑作に似た余韻をほんの少しばかり残していくのでした。

 

「ヘル・オブ〜」と比べると明らかに画にパワーがなく、役者さんの演技も学芸会レベルの人がちらほら。

80年代後半…イタリア映画業界はとっくに衰退、ビデオバブルも終了してホラー映画もパワーダウン。なかなか厳しい状況だったのではないかと思います。

そんな逆境の中性懲りも無く同じことを繰り返していたブルーノ・マッティの根性にはただただ脱帽。

清々しいまでの模倣のオンパレードにはなぜかニッコリさせられてしまいます。

チープ極まっているけど、「エイリアン2」と「ターミネーター」が好きな人間ならついついテンションが上がってしまう、実に愉快なパチエイリアンでした。