タイトルだけは聞いたことがあって気になっていたロバート・アルドリッチ監督の「北国の帝王」を初鑑賞。
トンカチを振り回すジジイとニワトリを振り回すジジイ、冒頭から掴みバツグンで面白かった!!
無賃乗車の帝王と呼ばれるリー・マーヴィンと、無賃乗車絶対許さないマンの車掌アーネスト・ボーグナインの対決。
小学生男子の喧嘩みたいな下らない内容なのに、激アツ。
大恐慌が時代背景に描かれていますが、小難しいことは考えず、肩肘張らず伸び伸びと楽しめる作品なのが素敵。
クライマックスのバトルには大興奮!!
鉄道の走るアメリカの景色をみているだけで高揚感があり、破茶滅茶なのに美しさもあって、とても味わい深い1本でした。
◇◇◇
各地へ出稼ぎしようと貨物列車にタダ乗りする〝ホーボー〟と呼ばれる男たちがいました。
無賃乗車を防ごうとする鉄道会社社員との間で激しい攻防が繰り広げられる日々。
その中でもシャックという鬼車掌が指揮を取る19号列車は絶対乗車不可能と恐れられる存在でした。
開幕早々、列車に乗り込んだホーボーをトンカチで勢いよく殴り倒すアーネスト・ボーグナインに戦慄。

タダ乗り防止っていうか、もはや殺人鬼やん(笑)。
列車の下敷きとなり胴体が切断された男の死体が映し出されてのタイトルバック。そこに流れてくるやたら爽やかな曲…冒頭から唖然(笑)。
ところが!!そんな恐怖の列車に乗り込もうとする男がまた1人。
ニワトリを腕に抱えたガタイのいい男リー・マーヴィン。

Aナンバーワンと呼ばれ、仲間のホーボーたちから「北国の帝王」と崇められる伝説の男。
凄いあだ名が付いてるけど、やってることは無賃乗車(笑)。
若者浮浪者・シガレット(キース・キャラダイン)がAナンバーワンの持つニワトリを盗もうと忍び寄りますが、サラリと身を交わされ返り討ちに。
ニワトリをぶん回しながら大暴れするジジイに絶句。
Aナンバーワンは隙をついてそのまま19号列車に乗車、シガレットもその後に続きますが、シャックにみつかり、鍵をかけられ家畜運搬車両に閉じ込められしまいます。
すると葉巻を取り出し突然干し草を燃やし始めるAナンバーワン。

(色々大丈夫なのか心配になる画ww)
またもやニワトリを振り回し燃えさかる火の中で大笑いする主人公が規格外すぎる!!
木柵で出来た貨物車両を燃やし穴をあけることに成功したAナンバーワンは見事に脱出、それに乗じてシガレットも車両から這い出ます。
「シャックの列車に誰がが乗っていた」…この出来事がホーボーたちと鉄道会社従業員たちの間で大変な噂に。
ホーボーの仲間は久々に姿を現したAナンバーワンをみて彼が19号列車に乗ってやってきたに違いないと称賛。
しかし一方若造のシガレットは自分こそが悪名高い19号車のシャックを出し抜いたのだと吹聴します。
プライドを刺激されたのか、Aナンバーワンは19号車に乗ってポートランドに向かうことを堂々宣言。
一大賭博が催される大騒ぎとなり、宣戦布告を受けたシャックも面子をかけて戦準備をはじめます。
鉄道会社仲間の中にはシャックではなくAナンバーワンに賭けて応援する同僚も…
車両火災の際にも怒る姿を半笑いでみつめられるなど、とにかく人望のないシャック。
唯我独尊のパワハラ的言動、嫌われるのも残当としかいいようがありません。
相手は食うに困った失業者。自分もいつそうなってもおかしくはなくそこまで追い詰めなくていいのでは…と思うけど、タダ乗りされるのは絶対嫌!ズルは許さない!と意地になってしまうのも分かる気がしました(笑)。
塵も積もれば取りこぼしも馬鹿にできるものではなく、利益がなくなってクビを切られるのは自分自身。敵役が権力者というより労働者なのが一味違うドラマになっていて、アーネスト・ボーグナインの個性もあってか魅力を感じるキャラクターでした。
一方、ホーボー側の描写も面白く、大統領の演説ラジオが虚しく野営地で流れる様子など、時代の空気感が伝わって来るようでした。
小汚い生活臭溢れまくりの衣服、一週間前の新聞に大喜びするおっちゃんの輝く笑顔。
厳しい生活をしていることが伝わってくるものの、悲壮感はあまりなくドライな描写が大変魅力的。
修学旅行の思い出作りでもするかの如く給水塔に自分の名前と行き先を書き込む男たち。
自分たちはここにいる、自分たちにも希望はある…不可能に挑むレジェンド、〝北国の帝王〟はホーボーたちにとって特別な存在。
下らないようでいて中年男どもの矜持をかけた魂の戦争、ジジイ2人の熱き対決に胸が高鳴ります。
鑑賞前のイメージでは「列車がノンストップで走り続ける中2人が戦う」、もっとスピード感ある限定的なシチュエーションでのアクションを想像していたのですが、思っていたのと違って驚き。
乗っては振り落とされ、けれどもまた乗車する…地味な攻防戦が繰り返され、野球の試合のようなペース。でも不思議とこのテンポが心地いい。
本物の機関車の走る映像はそれだけで壮観。

郵便列車とスレスレの激突を交わす場面、谷底の上に聳え立つ橋を渡る場面など、動的アクションの見せ場もしっかり用意。
パイプ管の中に隠れたり、粗大ゴミ捨て場でアイテム回収したり、小学生の時分を思い出すようでなんだかノスタルジック。

(秘密基地みたいなゴミ捨て場にワクワク)
そしてジジイ2人の対決にとどまらず、新たな「北国の帝王」の称号を求む若者・シガレットも19号列車にひっそりと乗車していました。

線の細いキース・キャラダインがジジイ2人に比べると貧弱!貧弱ゥ!
「お前はまだひよっこだ、帰れ」と諭すAナンバーワンを無視、名を上げたくて堪らないシガレットは平然と勝負に横入りしてきます。
差し掛かった橋で侵入者がいないか乗組員による点検が開始する場面。
異変を察知し血相を変えてシガレットが橋を下りて脱出すると、そこにはとっくに列車を降りて悠々自適に葉巻を吹かすAナンバーワンの姿が…
挙動に余裕を感じさせるベテランジジイが圧倒的にカッコいい。
再び走り出した19号列車に乗り込む2人でしたが、気付いたシャックがヘンテコ武器を携えて登場。
鉄の棒が括り付けられた紐を車両下に向かって垂らすと、鉄棒が跳ね返ってシガレットのボディを直撃。
相手の悲鳴を聞いて嬉しそうに笑みを浮かべるシャックが完全にヤバい奴(笑)。
絶叫するシガレットにAナンバーワンが手を差し伸べるも、結果2人とも線路に転落してしまいます。
一匹狼かと思いきや、仲間を助ける情は持ち合わせているAナンバーワン。そんなところもホーボーたちから支持されているのかもしれません。
列車から落ちた2人は、ゴミ捨て場でバケツを拾い、線路に油を塗りたくって、旅客列車をストップさせてそこにタダ乗り。
セーラムの町で19号列車を待ち伏せして再び乗車のチャンスを伺うことに…
女っ気ゼロの本作ですが、休憩ポイントでは女性が僅かに登場。
列車の中で脇剃りしている女性をみて固まるシガレット。確かにあまり見ない光景なのかも(笑)。
もう1人は川で洗礼儀式を受けている衣服の透けた女性。
どっちもお色気シーンというには異質で妙に印象に残ります。
そしてどこか間の抜けた信仰集団の中に、どでかいAナンバーワンがしれっと混ざっているのが可笑しくて爆笑。
鳥に目がないのかAナンバーワンが七面鳥を盗み出す場面では、揶揄われる警官のおっちゃんを気の毒に思ってしまいましたが、ルールを超えてまで戦う意地がない腑抜けということでしょうか。
ホーボーのキャンプ地まで逃げ込むと完全に治外法権なのが凄い。
19号列車がやって来ると、再び給水塔に名前を書いて宣戦布告、乗り込むAナンバーワンとそれに続くシガレット。
しかし車両下に潜っていたのをまたまた発見され、ヘンテコ鉄棒武器で今度はAナンバーワンが体を痛めつけられてしまいます。
自分は助けてもらったのに、Aナンバーワンを見捨てて何もしないシガレットが恩知らずで卑劣!!
師弟関係ができるのかと思いきや何も学ばない若者。
自分でやったことが何もないのに態度だけデカい、ある意味コイツが最悪のタダ乗り野郎。
自分が嫌な中年になったからか、この若者評も分かると思いながらみてしまったりして(笑)。
何かを漠然と成し遂げたい思いはあるも、そこに対価として存在するリスクや背負う重みなど、若い時分には分からないこともあるのかも…
対照的に狂ってるはずのジジイ2人がよく見えてくるのが面白かったです。
攻撃に耐えかねたAナンバーワンが非常ブレーキをかけると、制動係は首の骨を折って死亡、機関士助手は大火傷と悲惨な目に…
シャック本人も負傷しますが、一向に怯まずホーボーたちを駆逐しようとすぐに再起。
逃げるばかりの意気地なしシガレットを押しのけ、Aナンバーワンが立ちはだかり遂にクライマックスへ!!
鎖を持ったジジイと、

角材を持ったジジイ。

遮るもののない走る荷台が2人の闘技場、絵面が最高すぎる!!
結構なお歳のはずの2人がバチバチの肉弾戦、リー・マーヴィンもアーネスト・ボーグナインもすごい大立ち回り。

狂犬のようなアーネスト・ボーグナインの顔がとにかく凄くて見入ってしまいます(笑)。
激闘になるも、シャックが列車から転落しそうになるとなぜか彼を掬い上げるAナンバーワン。
騎士道精神なのか、夢中になった喧嘩遊びが終わってしまうのが寂しいのか…
再度バトルになって遂にシャックは列車から放り出されますが、転落後も「まだ参ってねえ!!」と雄叫びをあげる、子供アニメのキャラみたいな最後に頬が緩みました。
そして勝利後に馴れ馴れしく擦り寄って来たシガレットをAナンバーワンが川に放り投げるラストが爽快(笑)。
「お前には心が欠けている!無賃乗車乗りには相応しくない!!」の大演説をぶちかましジ・エンド。
無賃乗車乗りに相応しいってなんやねん(笑)って思うけど、時代の変化に何か寂しいものを感じる人間には響くジジイの咆吼。
勝ったところで何かが手元に残るわけではない不毛な勝負。他人から見れば下らないかもしれないことに全力投球できる姿って、自由で、真の意味でゆとりがあって、なんだか美しい。
1人走り去って消えていく姿には移ろう時代を感じさせて物寂しい気持ちも幾ばくか残り、何とも言えない味わいのラストでした。
いわゆる超大作ではないけれど、今はこんな映像絶対撮れないよなーと思ってしまう、この年代ならではの本物感溢れる映像に圧倒。
リー・マーヴィンはひたすら渋くてカッコよく、アーネスト・ボーグナインのすごい顔のオンパレードがある意味どんな景色よりも眼福。
ラストのアクションもこの2人じゃなかったらこんな迫力は出ないんだろうなーと思ってしまう、最高のジジイ対決でした。
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