どうながの映画読書ブログ

~自由気ままに好きなものを語る~

読書

刑事マルティン・ベック「テロリスト」…シリーズイチのスケール感、大団円を迎える最終作

スウェーデン至高の警察小説、マルティン・ベックシリーズの最後を飾る第10作目。 今回は殺人事件ではなく、政治家を警護する任務に就くベック。 おなじみのメンバー、過去に登場したキャラクターたちが続々と集結。 地味な聞き込み捜査と渋い人間ドラマが好…

刑事マルティン・ベック「警官殺し」…警察官の苦悩と良心に迫るシリーズ第9作目

平和な田舎町で発見された女性の全裸死体。 ベックは被害者宅の近くに「ロセアンナ」殺しの犯人、ベングドソンが住んでいることを知る。 前科者が犯人に違いないと上層部から強引な逮捕を迫られるベックだったが… 今年から月イチで読み続けてきた、スウェー…

刑事マルティン・ベック「密室」…ブラックユーモア満載!?異色のシリーズ第8作目

銃槍も癒え15ヶ月ぶりに登庁したベックは、アパートの一室で胸部を撃ち抜かれた老人の変死事件を任される。 警察は自殺だと判断を下していたが、それは杜撰な捜査によるもので、そもそも拳銃が室内になかったことが後から発覚。 一方コルベリとラーソンは連…

クジョー??クージョ!!圧倒的傑作のキング原作と、良作アニマルホラーな映画版

炎天下、故障した車に閉じ込められた母親と4歳の息子。狂犬病となった体重約90キロのセントバーナードが2人を襲う… 自分の中で犬ホラーといえばこれ。 犬に襲われるパートは小説の後半と意外に滑り出しが遅め。 なかなかトラックが走り出さない「恐怖の報酬…

刑事マルティン・ベック「唾棄すべき男」…警察組織の腐敗を描く、シンプルで動的なシリーズ第7作目

スウェーデン発至高の警察小説と名高い、刑事マルティン・ベックシリーズ。 自分は昨年7作目の映画化作品を鑑賞してから原作を1作目から読み始めたので、今回でやっと追いついた感じ。 dounagadachs.hatenablog.com 他エピソードの方が人気そうなのに、なん…

刑事マルティン・ベック「サボイ・ホテルの殺人」…格差社会を描く陰鬱ムードなシリーズ第6作目

角川文庫で刊行されたのが5作目の「消えた消防車」までだったので、旧約版を入手して第6作目を読了。 読みにくいかと危惧していましたが杞憂で、むしろ硬派な文体が作品の雰囲気にマッチ。 「モンソン→モーンソン」などキャラの名前の表記に差がありつつも、…

「刑事マルティン・ベック 消えた消防車」…ラーソン活躍回、各キャラの個性際立つシリーズ5作目

厳寒のストックホルム。警察が監視中のアパートが突如、爆発炎上した。 任務についていたラーソン警部補は住人を救うべく孤軍奮闘するが、出動したはずの消防車が一向に到着しない。 焼死者の中にはある事件の容疑者が含まれていた… 刑事マルティン・ベック …

刑事マルティン・ベック「笑う警官」…シリーズ最高傑作の呼び声高い第4作目

警察小説の金字塔と呼ばれるマルティン・ベックシリーズの中でエドガー賞を受賞しており、最高傑作の呼び声が高い第4作目。 刑事マルティン・ベック 笑う警官 (角川文庫) 作者:マイ・シューヴァル,ペール・ヴァールー 角川書店 Amazon 新訳シリーズとして刊…

刑事マルティン・ベック「バルコニーの男」…一気にシリーズものの広がりをみせる第3作目

スウェーデン発、警察小説の金字塔とよばれる「刑事マルティン・ベック」。 昨年鑑賞した映画が面白かったので、原作小説を読んでみようとシリーズを順番に追っていますが、今回は3作目。 刑事マルティン・ベック バルコニーの男 (角川文庫) 作者:マイ・シュ…

刑事マルティン・ベック「煙に消えた男」…スウェーデン至高の警察小説第2作目

前作「ロセアンナ」に引き続き、「刑事マルティン・ベック」シリーズの第2作目を読んでみました。 刑事マルティン・ベック 煙に消えた男 (角川文庫) 作者:マイ・シューヴァル,ペール・ヴァールー,柳沢 由実子 KADOKAWA Amazon 猟奇殺人系の怖さが漂っていた…

刑事マルティン・ベック「ロセアンナ」…スウェーデン至高の警察小説、第1作目

昨年鑑賞した「刑事マルティン・ベック」の映画がとても面白かったので原作小説を手に取ってみました。 刑事マルティン・ベック ロセアンナ (角川文庫) 作者:マイ・シューヴァル,ペール・ヴァールー,柳沢 由実子 KADOKAWA Amazon 全10冊のシリーズ、自分が観…

「日の名残り」…自分を抑圧してきた執事の人生回顧が切ない

真面目で鈍感な堅物執事と女中頭の感情を表に出さない静かな恋。 貴族の邸宅にて繰り広げられる外交会議。 2つの大戦の間で揺れ動いた激動の時代、時代遅れの遺物ともいえる執事の姿が去り行く時代への郷愁を感じさせる… 日の名残り [Blu-ray] アンソニー・…

ダリオ・アルジェント自伝「恐怖」を読みました

2014年にイタリアで出版、2019年に英語版が出版されていたというアルジェント初の自伝本・「恐怖」の日本語版がつい先日発売。 ハードカバー400ページ強、税抜3400円とボリューミーな内容でありますが、普通の人じゃないアルジェントの書く本が面白くないわ…

「ひらいたトランプ」…カッコいいポワロと気弱だけど恐ろしい窃盗犯

名探偵ポワロは夜ごとゲームに興じる悪い噂の絶えないシャイタナ氏のパーティーに呼ばれた。 ポワロを含めて8人の客が2部屋に分かれてブリッジに熱中している間、客間の片隅でシャイタナ氏が刺殺されてしまう。 なんと居合わせた客は殺人の前科を持つものば…

アガサ・クリスティ「ナイルに死す」…人間の幸不幸は案外平等だという価値観

社交界の花形であり財産家でもあるリネットと失業中のサイモンのハネムーンには暗雲がたれこめていた。 婚約者を奪われたジャクリーンが拳銃を手に2人の行く先々に現れ、いやがらせをするのだ。 同じナイル川観光船に乗り合わせたポワロは、そんな彼女の振る…

「ジェーン・エア」1983年BBCドラマ版を観ました

ツンデレおじさんと冷血イケメンにグイグイ迫られる乙女ゲーのようなときめき、ゴシックホラーのムードも堪らないイギリス名作文学「ジェーン・エア」。 以前2011年の映画版を鑑賞したのですが、1000ページほどある原作を2時間に圧縮。 ダイジェストのようで…

「悪魔の見張り」…映画「センチネル」の原作小説を読んでみた

先日久々に鑑賞した77年のホラー「センチネル」が面白くて面白くて… 未読だった原作小説が今更気になったのですが、古本を安く手に入れることが出来たので読んでみました。 昭和63年発行、表紙はアンティークな感じですが、翻訳は非常に読みやすかったです。…

アガサ・クリスティ「ゼロ時間へ」…恐怖の犯人と塞翁が馬的人生観

子供の頃「オリエント急行殺人事件」の映画をテレビでみて、それからアガサ・クリスティにハマって読んでいた時期があったのですが、1番好きだったのがこの「ゼロ時間へ」と言う作品。 断崖絶壁に面した海辺の館が舞台なのですが、タイトルのイメージとも重…

「ハイ・フィデリティ」…好きなモノこそアイデンティティ!!オタクの愚かさ、愛おしさ

昨年新装版が出版されましたが、自分が学生の頃に読んだのは耳がハートの形をしたデザインが印象的なこの文庫本。 ニック・ホーンビィの本を読むのは初めてで、表紙がなんか洒落てるなーと興味を惹かれたのがきっかけでした。 大人の恋愛小説といいつつスト…

エラリイ・クイーン「九尾の猫」…アルジェントのトラウマ元ネタ!?サイコキラーものの先駆的小説

昨年鑑賞したダリオ・アルジェントの「スリープレス」Blu-rayの特典映像にて、アルジェントはエラリイ・クイーン好きだと語られていました。 「スリープレス」は小説「Yの悲劇」にインスパイアされていたようですが、他にも着想を得た作品があるのかしら…と…

「プロジェクト・ヘイル・メアリー」…少年漫画的ロマンとなろう小説的高揚感

「火星の人」(映画「オデッセイ」は自分はかなりイマイチだった)のアンディ・ウィアーの最新作で2021年のベストセラー「プロジェクト・ヘイル・メアリー」を読みました。 プロジェクト・ヘイル・メアリー 上 作者:アンディ ウィアー 早川書房 Amazon ネタ…

「ゴーンガール」…臆病で繊細な原作小説のエイミーが好きだった

原作→映画の順で鑑賞。映画も主演2人がハマり役で悪い出来ではなかったと思いますが、自分は原作小説の方が圧勝で面白かったです。 「夫と妻の独白が交互に進んでいく」というスタイルは映画も原作も同じですが、本ではフルで展開している「妻の日記パート」…

「指輪物語」/「ロード・オブ・ザ・リング」…ファラミアの改変の記憶

仕方がない、ファラミアは犠牲になったのだ… ロード・オブ・ザ・リング/二つの塔 (字幕版) ヴィゴ・モーテンセン Amazon 自分がちょうど高校生の頃に公開され、70年代でいうところの「スターウォーズ」旧三部作のような興奮と熱気をリアルタイムで味わわせて…

エラリー・クイーン「Yの悲劇」を読んでみた

先月ダリオ・アルジェントの「スリープレス」のBlu-rayが発売されました。 特典盛りだくさんでめちゃくちゃ嬉しい内容だったのですが、アルジェントはエラリー・クイーンが好きでかなり影響を受けているとのこと。 エラリー・クイーン…名前は知ってるけど読…

「ローズ・マダー」…傑作?迷作?キングのロマンス小説風サスペンス

高校卒業後に結婚、14年間夫の暴力に耐え続けてきたローズはある日突然家を飛び出した。偶然駆け込んだDVシェルターにて心身ともに回復し幸せな日々を手に入れた彼女だったが、警察官の夫が追跡を開始する。しかし逃亡先の街で出会った不思議な絵がローズに…

「ミザリー」映画/原作…白熱の頭脳戦で男女愛憎劇

キングの最高傑作といえばきっとこれ、映画の方もキング映像化作品の中でトップクラスの出来栄えじゃないでしょうか。 ミザリー [Blu-ray] キャシー・ベイツ Amazon 自分が初めて「ミザリー」をみた頃、ちょうどテレビで陣内孝則が雛形あきこに付き纏われる…

「トリフィド時代」…終末SFの先駆、ゾンビものの典型してて面白い

その夜地球が大流星群の中を通過し、誰もが世紀の景観を見上げた。ところが翌朝流星を見たものは全員視力を失ってしまう。混乱の中植物油採取のため栽培されていた植物・トリフィドが人を襲い始めた…!! トリフィド時代 (食人植物の恐怖)【新訳版】 (創元SF…

「パーマー・エルドリッチの三つの聖痕」…人類vs悪魔の幻覚ドラッグ

1965年出版、フィリップ・K・ディックの代表作の1つと言われている長編。 パーマー・エルドリッチの三つの聖痕 作者:フィリップ K ディック 発売日: 2013/02/28 メディア: Kindle版 LSD小説の古典と言われているそうですが、おじさん2人が絶望的な敵と死に…

リチャード・マシスン「縮みゆく男」、中年男性の精神の危機を描く哲学的SF

スコット・ケアリーは、放射能汚染と殺虫剤の相互作用で、1日に7分の1インチ(3.5ミリ)ずつ身長が縮んでゆく奇病に冒されてしまう。世間からの好奇の目、家庭の不和。昆虫並みの大きさになってなお、孤独と絶望のなか苦難に立ち向かう男に訪れる運命とは?…

「死のロングウォーク」、スティーヴン・キング作品で1番怖かった

1979年にスティーヴン・キングがリチャード・バックマン名義で発表した長編小説ですが、大学生の頃に書き上げていたものらしく実質キングの処女作と言われています。 バックマン・ブックス〈4〉死のロングウォーク (扶桑社ミステリー) 作者:スティーヴン キ…