どうながの映画読書ブログ

~自由気ままに好きなものを語る~

映画と共にふり返る名作文学「ジェーン・エア」

中学の頃、国語の先生が”ロチェスター様萌え”的トークでアツく語っていて気になって読んだ「ジェーン・エア」。

女性の自立心を描きつつも基本はザ・メロドラマ、少女漫画のような世界観で読みやすい!!

とんでもなく我の強い主人公が、とんでもなく我の強い殿方たちと渡り合い、幸せをゲットするという青春ストーリーでもあり、好きな小説の1つでした。

映像化作品はこれまで観たことがなかったのですが、前から気になっていた2011年の映画版を先日鑑賞。

ジェーン・エア [Blu-ray]

ジェーン・エア [Blu-ray]

  • 発売日: 2020/07/03
  • メディア: Blu-ray
 

やっぱり上下巻併せて1000ページの本を2時間にまとめるというのはムリなようで、総集編をみている感じでまったくキャラクターに気持ちが入らない…

そもそも発行当時、美男美女を主人公にしなかったことが画期的だったというこの作品において、ミア・ワシコウスカマイケル・ファスベンダーというキャストの組み合わせはどうなんだ(笑)。

でも歴代キャストもなかなか見目麗しい人が揃っているようで、映画だと観るに楽しいですしね。

 

映画版の感想を書こうとしたら、「原作のアレが足りない」という想いしか湧いてこない有様なので、映画の場面を時折挟みつつ、「ジェーン・エア」という作品を、

・子供時代
・家庭教師時代(ロチェスターとの恋)
・村の教師時代(vsセント・ジョン)

の3パートに分けて、軽く振り返ってみたいと思います。

 

◆子供時代/聡明なヘレンに涙…!!

幼くして両親を亡くしたジェーン・エアは血縁のない叔母・リード夫人に引き取られていましたが、夫人はジェーンを全く可愛がらず、実の息子がジェーンに暴力を振るっていても見て見ぬフリ。

夫人の実子たちと違って内向的かつ激情型の性格のジェーンは周囲の理解を全く得られず、時に厳しい折檻をされることも…。

ハリー・ポッター1巻のような境遇のジェーンなのですが、虐待といえる過酷な環境、しかし食べ物にも困る貧困層の生活よりはマシだろうと周りの大人に諭される…何とも厳しい世界。

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原作より弱くて脆い印象のリード夫人、出番が少なくてもったいなかった…!

リード夫人の立場でみると、夫から親戚の子を我が子と一緒に育てろといきなり死に際に託されて、それが相性の悪い子だったらシンドイよなーと、大人になるとこの人も気の毒だったのかなあと思います。

でも相手は子供なんだし、貴族の慈善だと思って偽善でもいいからもうちょっと優しくできなかったのかなーと思ってしまいますが…(のちに発覚するジェーンの親族からの便りを知らせなかった所とかやっぱり意地悪な人だなあと思う)

 

子供ながら堂々夫人に毒づき、寄宿学校に送られることになったジェーン。

慈善事業で運営されている学校なのに、偏狭な牧師が絶対権力を握り、食事量は少なく不衛生と、ここもまた過酷な環境でした。

 

そんな中ジェーンが知り合うのがヘレン。

2人とも10歳かそこらなのにめちゃくちゃ大人っぽいんですね。

学校の理不尽さについてグチグチとへレンに文句を垂れるジェーン。

「もし薄情で正しくない人に、いつも親切に、言う通りに従っていたら、その人たちは、したいほうだいのことをするわ。」

「なんの理由もなしに、わたしたちが打たれたときは、思い切り打ち返さなくてはいけないわ。」

せや、せや!!相槌を打ちたくなるジェーンの愚痴(笑)。さらには過去に夫人にされた仕打ちについても愚痴をたれまくるも、ヘレンはそれを静かに受け止め、そんなによく覚えてるなんてよっぽど嫌だったのね、と大人な返しをする。しかし…

「夫人のきびしい仕打ちを、それによって引き起こされた、あなたのはげしい、たかぶった気持ちといっしょに忘れてしまうようにつとめたら、あなたは、もっと幸福になれんじゃないかしら。」

「人に恨みを抱いたり、まちがった仕打ちを、いつまでも忘れずに過ごしていては、この人生はあまりにも短すぎるようにわたしには思えるのよ。」

ヘレンの言っていることは信仰心によるもので、要は「汝の敵を愛せ」というザ・宗教の教えが根幹にあるのですが、家族と離れた病弱な身体の小さな少女が、大人にも出来んような、よりよく生きようとする姿勢をみせるところに、何だかもう胸を打たれてしまいます。

 

「もし、ほかの人が私を愛してくれないなら、死んだ方がマシだわ。」

子供が/人が当然持つ〝他者から好かれたい〟というジェーンの気持ちに対してもヘレンは、自分の心が大事と訴える。

自分が嫌いな人にまで好かれたい?その人は大概の人に嫌われてるからその人に好かれたらかえって自分も嫌われるけど?みたいな、めっちゃ冷静な返しもしてくる(笑)。

 

ヘレンの言っていることはある種宗教の枠組みを超えた自己啓発的な内容でもあるし、本来の聖書の教えの核ではないかと思うのですが、「怒りをすてて執着せずゆるす」…物語を通して読むと心に迫ってくるものがあります。

ときに聖職者にも反抗的だったジェーンが、このヘレンの言葉を受け止めて、周囲に怒りを抱いていた姿勢を改める。ヘレンそのものになるわけではないけれど、友に学んで成長するところに感動します。


しかしこんなに優しい天使のようなヘレンが病気で幼くして亡くなってしまうんですね…でも天国を信じているから安らかな死を迎える…


このヘレンと、優しいテンプル先生との出会いによって、丸くなったジェーンは勉強に勤しみ、育ちの学校で教師になりましたが、より広い世界に出たいと願い、家庭教師の職に就くことになります。その屋敷の主人と恋に落ちるのですが…

 


◆偏屈男、ロチェスターとの恋

ツンデレロチェスター様に胸キュン!!と昔は思っていたけど、大人になると結構ヤバい男じゃないか??と思ったりして(笑)。

18歳のジェーンより2倍ほど年上、中肉中背、見た目が悪くどこかコンプレックスこじらせた感じのする男。しかし人をよく観察していて、ジェーンの内面の良さを見抜く。無愛想にみえて優しいところもある…

 

ギャップ萌えみたいなキャラクターですが、ジェーンを嫉妬させようとわざと貴族の女性たちとパーティーなどして婚約するフリをするところ…相手の女性も金目当ての大概な女とはいえ、いくらなんでも失礼じゃないだろうか…

パーティー中に占い師のおばあさんに変装して女性陣の本音をききだすところはちょっと覗き趣味が入っていないだろうか…

映画ではこのロチェスター様の変装シーンがなかったことにもガッカリですね。

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イケメンすぎてこじらせた男感が全く伝わってこない…!

ロチェスターとジェーンはやがて相思相愛になり、いざ結婚式となったところで、なんとロチェスターは既婚者!!という驚愕の事実が判明します。

「愛人でもいいから付き合ってくれ!!」と迫るロチェスターを退けて屋敷を飛び出すジェーン。(よくやった!)

ロチェスターの妻バーサは気が狂っていて屋敷に監禁状態。当時のこの社会の認識の限界というか、障害や病気に対して理解も配慮もなく「災い」として容赦なく描かれています。

一応ロチェスターは政略結婚の被害者でもあって、実家に利用されて精神障害のある妻を押し付けられた…そして離婚が許されない…と、気の毒な面もあるのですが、若い頃は見た目だけで女性を判断して遊んでた感がバリバリ。

そしてやっと内面で通じ合えるジェーンに会えた!一緒にいたい!!って一途に想う。

落ち着いた大人の男かと思いきや、かなり脆い人だったという…

 

でも自分もロチェスターなぜか好きでした。根はあったかくて悪くない人なのが伝わってくる。紳士な感じと翻弄してくる感じと、何より孤独だった主人公に理解しあえる人が…の恋の歓びには胸が高鳴ってしまいます。ツンデレ系同士の掛け合いみたいな会話が読んでいてとにかく楽しいですね。

 

 

◆冷血モラハラ男、セント・ジョン

重婚の事実が発覚後、ロチェスターの家を身一つで飛び出し行き倒れになりかけたジェーンを救ったのは牧師のセント・ジョンでした。

若くてイケメンで、頭もいいセント・ジョン。

これまでの「ジェーン・エア」映画化作品ではセント・ジョンは存在自体がカットされていて、2011年版だけが彼を描いたということですが、それにしても出番は少なかったー。

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セント・ジョン役はジェイミー・ベル

クリス・ヘムズワースみたいなガッチリしたイケメンを想像してたけど、神経質な感じが伝わってきて思ったよりよかったです。

 

小さな村でセント・ジョンとその妹たちと付き合ううち、なんと彼らはジェーンの従兄弟であることが判明!!

そしてジェーンはリード夫人のイジワルもあって受け取れていなかった伯父の遺産を突然手に入れます。

 

そんな中、従兄弟のはずのセント・ジョンからプロポーズされるジェーン。あらら、イケメンにも言い寄られちゃって…と思ったら、このセント・ジョンがとんでもない男で…

 「自分は宣教師としてインドに行きたいと思う。協力者が欲しいから結婚してくれ。あなたには一切女性としての魅力を感じないが、この激務に耐えられる人間だと思うからあなたを妻にしたい。」

大体こんな感じ…ロマンチックのかけらもないし、妻にした女性を利用することしか考えていないかなりの鬼畜っぷり。

何だコイツかなりヤバい男やな、と思うのですが、大人になって読むとこのセント・ジョンの方が先のロチェスターより深い人物像のような気もしました。

 

「この生活は、実にくだらない。変えなくてはならぬ。」

「何か牧師以外の運命を求めて、燃えていました。そうです。政治家の心、軍人の心、栄誉を渇望する人間の心、名声を愛する人間の心、精力に憧れる人間の心が、副牧師の白い法衣の下で、はげしく脈打っていたのです。」

「ああ、地元つまんないなー。どこかに行きたいなー。自分はもっと大きなことが出来るんじゃないかなー」なんて思いながら漠然と夢見るごく普通の若者でもあったのではないでしょうか。

この時代におらず生まれに囚われていなければもっと自由な選択肢があったかもしれないけど、牧師の家系を継ぐ義務感に囚われている。野心家の一面は権威主義的で人を見下したような性格に歪んでしまい、親愛に欠けた人物となってしまいます。

 

最後にジェーンとロチェスターが結ばれる「ジェーン・エア」という物語のラストが、遠い地にいるセント・ジョンを想うジェーンの言葉で締め括られているのも、大人になって読むとただならぬ趣があります。

「彼から受け取った最近の手紙は、わたしの目に人間としての涙を流させたが、しかしわたしの胸を聖なる喜びで満たした。」

ジェーンを妻にすることは叶わず、1人異国の地で死を迎えるセント・ジョンは果たして幸せだったのか…

信仰のない&凡人の自分としては、もうセント・ジョンは地元の名士の娘と結婚して、村の人たちの信仰を守る平凡な人生の方が幸せだったんじゃないかと思うし、宣教活動も当時は尊ばれるものだったのか知らんけど結局背景には植民地支配の策があったんじゃないのー!?なんて思ってしまうのだけれど…

でもセント・ジョンの尊大さ、向上心がそれを良しとしなかったわけで、愛をとらずに大志に振り切る…自分が本当に好きな人と結ばれる、自分の近くにいる人たちを愛することを選んだジェーンの生き様とは対照的であります。


セント・ジョンと、上巻にてソーンフィールド内を散歩する場面でのジェーンの独白は共通しているものがあるなーと思うのですが、

「人は平穏な生活に満足すべきである。と言ってみたところで、無益な話である。」

(女性たちも)「男たちとまったく同じように、あまりにも強すぎる束縛、あまりにも果てしない沈滞に苦しんでいるのだ。」

ジェーンももっと自由な、価値のある人生を!!と望んでいて、セント・ジョンとは似たものどうしでもあったのかなあ、そしてそういう思いは時代と場所を超えて若い時分に多くの人が馳せるものかと思うのですが、身分や生まれで固定された時代の中でこの2人は耐え難い束縛を感じていたのかなあと思います。

 

結局ジェーンの人生は「身体に障害を負ったロチェスターの世話に身を捧げ、結婚して子供を産む」という一見平凡なものにみえますが、自分の感情、愛で道を決めたジェーンの人生の方が、セント・ジョンよりも幸せに映りました。

(そもそも当時のイギリスでガヴァネスと呼ばれる家庭教師身分の女性が身分の差を超えての恋愛結婚すること自体、非凡なことなのかもしれませんが…)

 

 

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不美人なはずのジェーンも美人だった…!でも地味めの雰囲気はいい感じ。

 

小説のあとがきにて、作者シャーロット・ブロンテ自身も牧師の娘として生まれ、父親はかなり気難しい牧師さんだったと知ったのですが、ブロックルハーストやセント・ジョンは作者の父親がモデルなのかなあと思いました。

このお父さんだけが長生きして、ブロンテ一家の子供たちはシャーロットも含めてみな若くして亡くなってしまった…というのは何とも悲しい家族史。

 

キリスト教圏の人間じゃないからピンと来ないところは多々ありますが、「ジェーン・エア」という作品を通して感じるのは、信仰の多様性というか、同じキリスト教信者でも、権威を振りかざし本当の弱者を虐げるブロックルハーストみたいな奴もいれば、信じることで良心に生きたヘレンのような存在もいる。私欲に負けて重婚の罪を犯そうとしたけど、悔い改めて〝許された〟ロチェスターもいる。

キリスト教を自由に捉えているところが凄いのではないかと思うし、その中で己の道を突き進むジェーンの姿にエネルギーをもらえる作品だなあと思います。

 

映画の感想から大きく逸脱したけれど、今回観た映画も雰囲気は伝わってきたし、セント・ジョンとの出会いのシーンから話をスタートさせたのも面白かった…でも小説の内容を2時間でやるのは土台無理だなあという感想。

 

ちなみに過去の映画化は、

・1943年度版 オーソン・ウェルズジョーン・フォンテイン
・1996年度版 ウィリアム・ハートシャルロット・ゲンスブール

あたりが有名なようで気になります。BBCのテレビドラマなんかでガッツリ忠実にやってくれてるのがあればそっちを観たいなーなんて思いますが…機会があればまた鑑賞してみたいと思いました。

 

↓↓BBCのドラマ版を観てみました☆彡

dounagadachs.hatenablog.com

 

※引用部分は、「ジェーン・エアシャーロット・ブロンテ 大久保康雄訳 新潮社より抜粋しています