どうながの映画読書ブログ

~自由気ままに好きなものを語る~

「ジョーズ」…災厄と戦う大人の仕事人映画

先日「王様のブランチ」の映画コーナーにて、スピルバーグ映画特集が放送されていました。

スピルバーグ監督作品全32作品のなかから、20代〜50代が選んだベスト10を発表するという中々面白い企画。

個人的には「魔宮の伝説」が好きだけど、1位はやっぱり「ジョーズ」かな、いやそれとも「ET」とかになっちゃうのかな、と気になってみてたら…

 

なんと1位は…ジュラシック・パーク」!!!

ええー!?

ジュラシック・パーク」も十分面白いけど、パニックものなら「ジョーズ」の方がずっと上でしょ!!と腑に落ちないうるさいおばさん。(「ジョーズ」は4位)

しかし「ジョーズ」の映像紹介がネタバレを一切考慮しない超クライマックス部分だったので、「ジョーズ観たい!!」の思いが一気に沸き立ち、久々に鑑賞。

25年間殺人事件も何にもない平和すぎるアミティ・ヴィレッジに突如やってきたホオジロザメ

女性が1人亡くなり、死因はサメの襲撃と断定されるも、町は海開きの直前。遊泳禁止案は町の有力者たちに反対されてしまう…。

 

今みるとこの大人同士の対立のドラマってリアルなんだなーとしみじみ感じます。

分からず屋のろくでなしだと思ってみてたこの市長。

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「夏は稼ぎどきだ。」「海は島民の命綱だ。」

経済活動も市民にとって大事で、目の前で確認できたわけでもないサメのために全てを棒には振れない…この人の言っていることにも一理あるんだなあと。

しかしいざ海開きするとサメが現れ、今度は少年がその犠牲になってしまいます。

遺族のご両親からすればたまったもんじゃなく、「なんで海閉鎖してなかったんだー!!」と署長を平手打ち。

 

そのあと懸賞金が掛けられて、ハンターたちが大きなサメを捕らえますが、本当にこのサメが犯人なのか??

その後の再度の海開き…やっぱり皆んな恐れが残ってるのかなかなか海に入ろうとしない。市長が説得して1人の家族に先導して入ってもらうと、皆んながゾロゾロとそれに続いていく…。

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このへんの集団心理の描き方もすごいなー、と見入ってしまいます。

 

結局また犠牲者がでてしまって、宿敵のサメを狩るために3人の男が結託するわけですが、それぞれのキャラクターが本当に魅力的!!

まずは警察署長のブロディ。立場的にはリーダーのはずだけど、行政との窓口担当であり、板挟みにもなる心苦しいポジション。

海が苦手な上、街には今年来たばかりで市民とも馴染めていない。細マッチョで男っぽいのに暗い感じがするロイ・シャイダー

でもこの人の”得体の知れないものにはとりあえず用心しとけ”っていう姿勢には共感するし、勤務時間外に本読んでサメの勉強するところなんて実に真面目!!

 

ブロディと対照的に明るさを感じるのはリチャード・ドレイファス演じる海洋学者のフーパー。

どことなく漂う坊ちゃんオーラ。でも知識に基づいた冷静な分析で警告してくれる。

 

しかし最も強い印象をのこすのは、やはりロバート・ショウ演じる漁師のクイントです。

いかつい強面おじさん、まさに頑固おやじ。フーパーとまた正反対なザ・労働者階級という感じで、圧倒的現場主義!!

 

各々に役割があり、気質も異なる人たちが1大プロジェクトに向かって協力していく…という仕事人映画になっているところがやっぱりオモロイですね。

 

後半50分かけての3人のサメ狩りはもう全編クライマックス!!

ジョーズ」、自分は子供の頃レンタルビデオでみたんだけど、鮮烈にのこってるのは、署長が撒き餌を投げてたらいきなりサメが出てくるというところ。

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署長、後ろ、後ろー!!

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一瞬で血の気のひいたこの顔。

映画館でみてたら叫んでそう…。それまでの登場シーンはあの音楽で、「くるぞ、くるぞー」だったのに、ここは本当に突然出てきて「うわあー!!」とこっちまで飛び起きそうになります。

「サメ(モンスター)の姿をあえて中々見せない」という演出は、今ではこういう映画での常套手段の1つかもしれませんが、「ジョーズ」は70分くらい出てこないから相当じらしてきますねー。

前半あれだけ人を襲いながら全容が掴めない正体不明感は不安を煽り、ここに来て「船が小さい。」と呟く署長の台詞にもう絶望しかありません。

 

そして、”樽の重しを引かせて動きを鈍くし浮かせて居場所特定”という、クイントのシンプルな作戦がまた分かりやすくて面白いのですが…

「また潜るぞ。」「嘘つけ。樽3個だぞ!」

バケモノすぎるサメにまさかの〝経験者〟であるクイントが最も冷静さを欠いてしまうというのがまたリアル。

3人が少し身を寄せて会話をした夜の場面…クイントが過去に壮絶な体験をしていたことが明らかになりますが、一度経験していたからこそ恐怖心が蘇り、闘志を失ってしまったのかと思わせます。

あれだけ強く見えた人が最期には恐怖に追いやられてしまう圧倒的敗北に、やるせない気持ちでいっぱいになる…。

クイントの死、ブランチでそのまま流してたけど、ここはみるの辛いシーンなのよね…。


しかしここからまさかの署長の逆転劇がはじまる!!

自信のない男が戦って男らしさを取り戻すというのは、「激突!」と重なりますが、最も臆病だった人が最後まで1番マイペース、ある意味冷静でした。

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もうここまでブランチで映してた(笑)。

ラストサメを吹き飛ばして声上げて笑う署長が何ともカタルシス。そして「フーパー生きとったんか、ワレ!!」で変な余韻をのこさず最後はスカッと終わってくれる。そこもまたいいですね。

 

昔テレビで芸能人の誰かが、「子供の頃にジョーズを観て、海やプールどころか水たまりも怖くなった」と話していました。水たまりって…そんなに!?と思ったけど、1975年当時としてはそれだけすごい衝撃の作品だったんだろうなあと思います。

サメに引きちぎられた手足が水中をプカーと漂うシーンなんか、スプラッタだなあと改めてみると思ったりして、今でこそこういう刺激の強い映画は多いけど、当時はかなりドキツイ表現だったのかな、と思いました。


これに続いて類似の多くの作品が作られた…スピルバーグアメリカン・ニューシネマを終わらせた人なんだ…と言われたりもしてたみたいだけど、それにしても圧倒的な完成度で、やっぱりこれだけ純粋に面白いものをつくれるのはすごいなーと。

今みると人間ドラマも沁みるし、スピルバーグの最高傑作といっていい作品なんじゃないかなー、「ジュラシック・パークじゃねえだろ!」と改めて呟きたくなりました(笑)。

 

ちなみに「王様のブランチ」でやっていたスピルバーグ・ベスト・ランキングは、

ジュラシック・パーク ②インディ・ジョーンズシリーズ ③ET  ④ジョーズ ⑤未知との遭遇 ⑥AI  ⑦シンドラーのリスト ⑧レディプレイヤー1  ⑨激突! ⑩宇宙戦争

でした。

インディがシリーズ合算って雑すぎない!?なんて思いつつ、トロッコの場面を流してて、これも観たくなっちゃうわー。


いつも録画して映画コーナーだけ観てた「ブランチ」、ここ暫くは自粛で最新映画紹介がおやすみになってしまってましたが、旧作の特集してくれるの、個人的には嬉しかったです。