どうながの映画読書ブログ

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「パニック・アリゲーター/悪魔の棲む沼」…ワニより怖い原住民!?意外と真面目なB級アニマルパニックホラー

「MaXXXine マキシーン」にて仲良しビデオ店長がみていた映画がコレ!?

昨年のホラー・マニアックスシリーズでリリースされていたイタリアンホラー「パニック・アリゲーター/悪魔の棲む沼」をみてみました。

監督は「影なき淫獣」「片腕サイボーグ」のセルジオ・マルティーノ。

ジョーズ」をワニに変えた明らかな便乗映画ですが、スリランカの密林をロケ地にして「食人族」風味がちょっぴり追加。

チープかと思いきや、ロケーションやエキストラなど意外としっかりしていて、ワニよりもおっかない現地住民にびっくり(笑)。

ワニ映画としては「アリゲーター」には到底及びませんが、真面目に作ったことが伝わってきて、やっぱり楽しいイタリアンホラーでした。

 

◇◇◇

アマゾン奥地に建設された豪華なリゾートホテル〝パラダイス・ハウス〟。

宣伝の仕事で現地に飛んだカメラマンのダニエルは、施設の美しいマネージャー・アリスと親しくなります。

宣材写真のモデル役を演じている黒人女性がスタイル抜群で美しい。

そしてその横に佇むアリス役バーバラ・バックも美しい。

モデルを撮りながらも時々アリスに目配せしながらカメラを向ける主人公。

ナンパかよ!!と思ってしまうけど、こんな美人がいたら撮りたくなってしまうわね…

ホテルの社長・ジョシュアを演じるのはメル・ファーラー。

「悪魔の沼」でもワニに食われていましたが、晩年はお金がなかったのかB級映画に多数出演。今作では台詞も多くしっかり存在感を放っています。

 

ホテルではアクティビティのため近くの川でワニを囲い、そこに生きた子豚を投げ込んでいました。

野生のワニを餌付けする光景に「自然を偽るのか」とダニエルが問いますが、商魂逞しいホテル従業員は開き直った態度でそれを無視します。

ジョシュア曰く「雇用ができて原住民も豊かになり喜んでいる」とのことですが、住民たちと深く交流したアリスは複雑なものを感じとっている様子。

「以前は狩りが主流で、子供は愛されお年寄りは敬われていた」
「でもその代わり平均寿命は30歳だった」
「どちらが天国でどちらが地獄なのか」

こんなB級映画には似つかわしくない、深い台詞に思わず色々と考えさせられてしまいます(笑)。

発展し続ける文明社会が果たして本当に幸せといえるのか…途中では旧約聖書の禁断の果実を模したデコレーションが登場、神に知識を授けられたアダムとイブについての会話が挟まれるなど、意外に深いテーマを内包!?しているようです。

 

そんな中住民たちが「太古の神が蘇った」と突然大騒ぎ。

翌日には現地男性と離島に出かけたモデルのシーナが行方不明に…邪神クルーナ(12メートルのアリゲーター)に襲われてしまいます。

危機を訴えるダニエルに対し、商売優先だと一蹴する社長。(ジョーズの署長と市長のやり取りにそっくり)

水中のワニ視点のカメラワークといいまさに亜流「ジョーズ」なのですが、そこに未開の地の原住民の様子が挟まれてちょっぴり「食人族」風味。

マントヒヒにオランウータン、白コブラなど様々な動物も時折登場。

ヘル・オブ・ザ・リビングデッド」だと明らかに画質の異なる借用映像がインサートされていましたが、本作は意外としっかり撮影されていてジャングル感が出ている映像に感心でした。

 

アリスとダニエルは原住民に案内され、ワニのことを知っているというジョナサン神父のもとを訪れることにします。

大滝のロケーションもなかなかの迫力。

神父役はなんと「サンゲリア」のメナード医師リチャード・ジョンソン。

仲間を殺され正気を失ってしまった変人神父を熱演していますが、5分程度の出番で本筋には特に絡まず、何のために出てきたキャラなのか意味不明でした(笑)。

 

ダニエルたちは再びホテルに戻り危機を訴えますが、強欲社長は観光客を乗せた遊覧船をナイトクルーズに出航させてしまいます。

しかしそこに巨大ワニが現れ阿鼻叫喚の地獄絵図に…

ワニがしょぼいと不評だったようですが、ミニチュアと組み合わせて編集で何とかしようとかなり工夫して撮っているように感じました。

バーバラ・バックは身体を張っていて、ワニの生贄になる姿はまるで「キングコング」。

主人公とヒロインが車ごと川に水没し、酸素ボンベを使いながらワニと対峙するシーンは水中撮影が見所になっていて、ボンベを突っ込むところはまんまジョーズ

アリゲーター」のように陸で暴れる姿もあるとよかったのですが、その代わりにおっかない原住民が登場。

水上にはワニが、陸からは食人族もどきが、という四面楚歌に(笑)。

ホテルに残っていた客たちが原住民に惨殺されている展開にはびっくり。

友好的だった原住民の心変わりがよく分かりませんが、邪神のワニが復活してその怒りを鎮めるため余所者の白人たちを殺しまくったということでしょうか。

能天気な金持ち客が食われてザマアになるかと思ったら、先陣を切って川に飛び込みボートを持ってくる人がいたり、みんな必死で泳いでいたり、意外とモブ客は好印象。

 

中にはフルチの「墓地裏の家」に出ていた子役の女の子が出演。

お母さんが新しい男とイチャイチャしていて蔑ろにされてるの可哀想…と思っていたら、新恋人の男がいざパニックになると血の繋がってない娘を優先して必死で助けていてこちらも意外な人物像。

ラストにはちゃんと3人とも助かって笑顔に…雨降って地固まるみたいなエンドに丸く収まっていて唖然(笑)。

こんなB級アニマルパニック映画に妙に現実的な家族ドラマを押し込んでくるイタリアンホラー、恐るべし!!

よその子を抱きかかえた主人公たち2人を映して流れてくるエンドロールに全員他人やんw wと思いながらも、爽やかな気持ちになるラストでした。


ハリウッド映画と比べるとチープだし、イタリアンホラーとしてはケレン味少なめだったけど、ちゃんとパニック映画してて楽しかった。

マルティーノ監督は「ドクター・モリスの島/フィッシュマン」を同じキャストで同じ年に撮っているのね…こちらも観てみたくなりました。