スチュアート・ゴードンとチャールズ・バンド率いるフルムーン・ピクチャーズが組んだ95年のホラー。
他作品に比べるとかなり地味な印象ですが、家族ドラマの要素もあって個人的にはとても好きな作品でした。
アメリカ人のジョンは見知らぬ親戚から古城を相続することになり、妻・スーザンと目の不自由な娘・レベッカを連れてイタリアに渡った。
しかし城の奥深くには人間の姿をした化物が監禁されていた…
夫婦役はジェフリー・コムズとバーバラ・クランプトンの黄金コンビ。
夫の夜の誘いを頑なに拒否する妻ですが、何やら訳ありの様子。
実は夫ジョンの飲酒運転が元で一家は事故に遭い、息子は亡くなり娘は視力を失ってしまいました。
娘の方は父親を赦し障害を乗り越えようと前向きですが、妻は夫の過失をずっと許せず娘には過保護になって自由を奪いがち…修復できない家族の溝に切なくなります。
古城に着くと盲目のレベッカは何者かの気配を感じます。
なんと地下には亡くなった公爵夫人の息子・ジョルジョが監禁され化物同然の姿になっていました。
元の城の持ち主であった公爵夫人は夫に捨てられた憎しみを息子にぶつけ、40年もの間虐待を行なっていたのです……
2つの不幸な家族が交わる陰鬱なストーリー、ジェフリー・コムズのダメ夫っぷりが名演です。
息子を失った悲しみと罪悪感に耐えきれず結局また酒に逃げて娼婦を城に連れ込んでしまうヘタレ男。
その情事を盗み見たジョルジョが大興奮、性欲と食欲が暴走しひたすらおっぱいを追いかける…!
40年間も何の楽しみもなく過ごしていたら人間こうなるのかもしれん…性命力の強さにただただ圧倒されます。
容姿を気にする心はあるのか顔に包帯を巻き、言葉を話せず自分の幼い頃の写真を手に持ってくるジョルジョ、めちゃくちゃ哀しいです。
盲目のレベッカと心を通わせるのかと思いきや全く意思疎通がとれず、性欲バーサーカーと化してひたすら若い娘の肉体にアタック。
「わたしを抱きなさい!」と怪物を阻止する母・バーバラ・クランプトン。(この人いつも体張ってるなあ…)
舞台の古城はプロデューサーであるチャールズ・バンドが所有する別荘だったそうで相当低予算なこの作品。
制作スタッフにはイタリア人が多く参加していてゴシックなムードが漂っています。
特殊メイクを施され怪物を熱演したのは「ペンデュラム/悪魔の振り子」のジョナサン・フラー。
後半はひたすら怪人が全裸姿で女性を追いかけ回すというゴードン監督らしい!?変態な姿に絶句。
股間にボカシがかかっていて余計にグロい映像になっているような…
クライマックスは父ちゃんと怪物のタイマン勝負。ドカッ!バキッ!やたら効果音のいい格闘戦に。
結局父親は死ぬことでしか赦されなかったという悲しい結末なのですが、ラストの出棺シーンが妙に美しく心に残ります。
もうひと家族を対峙させ、救いを感じさせるエンディングが印象的でした。
ストーリーは何の捻りもなくシンプルすぎるくらいですが、古典ホラーの質感があって好印象。物悲しい家族ドラマしてて好きな作品でした。