ドキュメンタリー「フリードキン・アンカット」で取り上げられていて気になっていた2011年のフリードキン監督作。
全盛期の作品に比べればずっと小粒ではあるけれど、善人不在の突き放したような冷たさ、リアルな暴力描写は健在。
年取ってからも元気にこんな映画撮ってたんだなーと嬉しくなるような作品でした。
麻薬組織に多額の借金をしたドラッグディーラーのクリス。
仲の悪い実母の生命保険金を手に入れようと名うてのヒットマン・キラージョーに殺しを依頼しますが、頭金を用意できず妹を担保に差し出すことに。
その後も想定外の事態に陥って…
冒頭から下半身マッパで主人公を迎える継母のジーナ・ガーションに唖然。
この息子にしてこの父親あり、頭は鈍いのにがめつさだけは人一倍のトーマス・ヘイデン・チャーチのオトンに苦笑。
掃き溜めの底辺一家がみせる地獄の日常が軽妙に描かれていてダークな笑いに満ちています。
そしてトム・クルーズの「コラテラル」並にイマイチ現実感がないマシュー・マコノヒーの殺し屋・ジョー。
現役の警察官が副業で人殺し…顔も隠さず身バレしそうだけど大丈夫なん…
何考えてるのか分からない変態オーラに満ちていて、ロリコンの気があるのか一家の年若い娘・ドティに一目惚れ。
目の前でお着替えプレイを要求するも「ブラジャーより先に靴下を脱いで」ってムッツリスケベのおっさん(笑)。
娘の方は家族から頭が足りない子扱いされている不思議ちゃんですが、クズ一家に囲まれて育ってイケメンに突然花束渡されたら好きになっちゃいそう…と思ってみてたら案の定ジョーといい感じに。
踏んだり蹴ったりなのは主人公のクリスで、実母を殺してもらったあとに保険金の受取人が自分たちではなく母親の現夫になっていたことが発覚。
そもそもクリスに保険金の存在や殺し屋・ジョーのことを教えたのもその現夫で完全に担がれていただけ…
さらに継母であるジーナ・ガーションがその男と不倫中で、皆を裏切ってこっそり分け前をもらう算段だったことが明らかになります。
アンタらどんだけ爛れた関係なのよ…とドン引きですが、だらしない中年女がハマリ役のジーナ・ガーション。
お仕置きにフライドチキンをチ◯コに見立ててフ◯ラをするプレイをジョーに強要されます…
(上級者プレイすぎる)
報酬を受け取れなかったジョーは担保のドティを約束通り連れて行こうとしますが、「妹は俺のだー!!」とゴネるお兄ちゃん。
しかしクズの父母が殺し屋の方に加担し、ジョーにボコボコに殴られるクリス。
錯乱した妹は銃を乱射し弾丸が兄とオトンに命中。
次にはジョーに銃口を向けるも「赤ちゃんが出来たの」と突然告白し、それをきいてマジキチスマイルを浮かべるジョーの姿を映してエンドロール…
妹がジョーを撃ったのかどっちなのか、はっきりみせず観客にゆだねるスタイルですが、フリードキンこんなの多い気がしますね…
イカれてて訳のわからんまま唐突に終わるのが自分はオモロかったです。
兄は救いのないクズだったのかもしれませんが、幼い頃から妹のことは庇ってきて心の拠り所だったというのは伝わってきました。
知能の足りない妹は「無垢の存在」かと思いきや突然やって来た強いイケメンに庇護を求めたり、思考を放棄して兄に思いがけず暴を振るってしまったりで、欲のない人間が人を傷つけないとも限らない…
善悪が不確かなキャラクター像がフリードキンらしいと思いました。
元は舞台劇だそうですが、「真夜中のパーティー」といい完成された戯曲と職人気質のフリードキンの相性は良かったのかなと思いました。
「フリードキン・アンカット」ではマシュー・マコノヒーが「自分のキャリアの転換になった」とこの作品に感謝していたけれどハマリ役。
基本1発撮りで撮られたとのことですが、役者陣が皆生き生きしていて観ていて楽しかったです。
フリードキン元気だったんだなあと今更観て嬉しくなるような作品でした。