どうながの映画読書ブログ

~自由気ままに好きなものを語る~

「タイムトラベラー きのうから来た恋人」…核シェルターからこんにちは!異色ラブコメ

ハムナプトラ」(1999)でブレイダン・フレイザーにハマっていた友人一家から「これ、めっちゃ面白いから!」とおススメされてみた作品。

全く期待しないで観たのに、面白かった…!!

まずオープニングが、ソ連の水爆実験の映像というとてもラブコメとは思えないスタート。

本作の舞台は、1962年のアメリカ。閑静な住宅街に暮らすウェバー夫妻ですが、キューバ危機のニュースが連日テレビで流れています。

奇人変人の発明家としてご近所さんに評判な夫・カルビンは、核戦争の不安に耐えきれず、妊娠中の妻・ヘレンを連れて、自宅に作った核シェルターに避難を開始します。

なんとそこに、奇跡のような偶然で、小型飛行機がカルビン家に落下。

シェルターシステムの誤認で、35年自動ロックがかかってしまいます…!!

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発明家カルビンを演じているのは、クリストファー・ウォーケン。妻のヘレンはシシー・スペイセクという、超能力使えそうな豪華カップル…!!

とにかくウォーケンの変人博士っぷりがハマりすぎていて、大爆笑です。


そしてヘレンはなんとシェルターで出産!!

「人類が甦るようにアダムと名付けましょう。」「お前がアメリカを再建するんだ。」って、実際は核戦争なんて起こってなくて、ご近所は平和なんだけど、3人家族は浦島太郎状態に。

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個人でつくったシェルターなのに意外に広くて、食料たんまりとすごすぎる!!

 

ようやく35年の月日が流れ、いよいよロックが解除…!!

マッドマックス2の世界を想像しながら、ウォーケン父が恐る恐る外に偵察に行くのですが、「生存者か?」街行く人に聞きまわる姿がおかしくて、またまた大爆笑。

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街の治安が悪化して、意外に世紀末にみえてしまうというまさかの落とし穴…!

 

そして外の変化にショックを受けて身体をこわした父に代わって、アダムが外に出る、”はじめてのおつかい”がスタートします。

 

下手をすると奇人にしかみえないアダムだけど、その天真爛漫さが嫌にならない、不思議な魅力のキャラクターになっています。ハムナプトラ」のブレイダンに心ときめかなかったけど、素朴な雰囲気にほっこり。

そしてそのアダムが恋に落ちる女性、イヴを演じるのは、アリシア・シルヴァストーン。ギャルだけどスレてない今どき女子役がまたハマっていて、可愛いです。

 

62年から97年へのタイムトラベル。

もっと時事ネタを入れたり、作中でも軽く描写してるような黒人差別や同性愛への価値観の変化などをもっとガッツリ描いて、社会派コメディみたいにも出来そうだけど、カラッと明るい90年代ラブコメに。

古めかしいといっていい、大仰な礼儀正しさのアダムが案外90年代女性にモテる!!というのが面白いです。

 

恋はハッピーエンドでアダムとイヴは結ばれるのだけれど…ラストは改めてみると、意外にほろ苦い感じがしました。

アダムは多分これから現代に適応して幸せに暮らして行くんだろうけど、そのアダムが両親には外の世界はショックだろうと、世間から隔離した一戸建てを建ててプレゼントする。

お父さん・お母さんは、もう60年代の時が止まったような世界から出てこないという結末。

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挙句お父さんは、息子が説明しても、冷戦の終結など歴史の事実も一切受け入れないままでした。

歳とった親には変化がしんどすぎた。お年寄りは時代の変化に取り残される…って昔は最後までコメディだと思って笑ってみてたような気がするけど、ここは改めてみるとちょっと切ないドラマでした。


でもアダムがずっと好青年で、失われた自分の35年を悔やまず、幸せをゲットしてるところ。古き良き時代の価値観をもった息子が両親にとって1番よいだろう選択をしたこと。哀しいけど、アダムの善良さに救われるラストです。 

 

とにかくクリストファー・ウォーケンが面白くて最高な映画!!という記憶でしたが、本当にハマり役で前半は思い切り笑わせてくれますし、ラストの哀愁あふれる姿も見事でした。

 

原題:Blast from the Past はスラング的意味合いで「懐かしい思い出」とも訳せるようです。日本人にはさっぱり伝わらない…。

「タイムトラベラー」というタイトルだと他作品と被りがちですが、シェルターにて”時をかける青年”…的を射たタイトルな気もします。

90年代ラブコメの意外な良作でした…!!