どうながの映画読書ブログ

~自由気ままに好きなものを語る~

「ボーンヤード」…超能力おばさんvs巨大ゾンビプードル

ハピネットさんの第13期ホラーマニアックスシリーズが続々と発売、知らないタイトルもあって気になるものばかりですが今月発売されたタイトルの1つがこれ。

「ガバリン」で特殊効果を手掛けていたジェームズ・カミングが監督・脚本・特殊効果のすべてを担当した91年の作品。

ジャケ写だけみるとアニマルホラーっぽいけど全然違った(笑)。

前半と後半でテンションが違いすぎてビビりますが、ゾンビものの変化球で楽しいホラーコメディでした。

 

とある葬儀屋にて東洋人の子供3人の死体が発見、その胃の中からは人肉が検出されます。犯人と思しき葬儀屋は「子供たちは不死身のキョンシーだ」などと不気味な言葉を残していました。

事件を追うジャージー警部は手がかりを掴むため霊能力者・アリーの元を訪れます。

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汚部屋に住む太っちょおばさんのアリー。

だらしない人かと思いきや物に触ると残留思念がみえるサイコメトラーエイジな能力者。

かつて妊娠中に彼氏に捨てられ流産したという悲しい過去があり、マスコミには魔女と呼ばれ追い立てられたよう…

主人公が美人女優じゃなく太ったおばちゃんってのが何ともいえない味わいで、人と違う特性を持ったためにメンタル病んで世捨て人になってしまった…意外にキャラ描写がしっかりした作品です。

 

捜査協力を決意したアリーは、警部らとともに事件の遺体が収納されている死体安置所を訪問します。

シリアスサスペンスっぽい雰囲気だった序盤から一気にトーンが変わり、保管されていた子供たちの死体が起き上がり襲いかかる…!!密室ゾンビパニックものがいきなりスタート。

本作のゾンビはキョンシーらしいのですが、皮膚は黒くただれており容貌は結構グロめ。頭でなく胸を撃つと倒せる奇行種で知能もそこそこありそうです。

けれどこのゾンビより人間のキャラクターの方が個性際立ってて魅力的に描かれてるように思いました。

安心感バツグンの老警部のおじちゃんはずっとアリーのことを気にかけていたようで、捜査協力によって彼女のプライベートが犠牲になったことを謝ります……誠実な人。

能力のせいで孤独で辛い思いをしてきたアリーはそれでも他人を見捨てられず危機に立ち向かっていきます……おばちゃんもいい人。

そしてもう1人、自殺未遂をしたダナという若い女性キャラクターも登場。

ゾンビ事件とは全く関係のないところで、安置所に運ばれてきた死体が実は生きてましたというカオスな展開(笑)、ダウナーな雰囲気を醸す女性が一味に加わります。

「小さいことを気にして将来を台無しにしたの。前は自分を強い人間だと思ってたけどそうじゃなかった。」……人生何かあったんかなー、繊細で生き辛かったんかなー……

一度は生をあきらめた人が表情を取り戻し、果敢にゾンビを撃退する姿に勇気100倍。

その他も陽気な監察医のおっちゃん、ウィリアム・ボールドウィンをだらしなくした感じの新米刑事など印象に残る顔ぶれ。

そして少ない出番ながらも場を掻っ攫って行くのは死体安置所の夜勤受付のバーサン、プーピンプラッツさん。

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規則に厳しくて口うるさい、プードル犬・フルーフソムズが唯一の友。

目力ありすぎ、ディズニー映画の悪役みたいなバーサンがゾンビのネチネチ肉を口に詰め込まれる。

ワンちゃんもゾンビ肉を食べてしまい揃ってゾンビ化、この2人だけなんで巨大化したのか謎です(笑)。

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↑プードル犬は毛のモフモフがそのままであんま怖くなくちょっとかわいい(U^ω^)

クライマックスに繰り広げられるスケールのちっちゃい「エイリアン2」みたいな攻防戦。太ったおばちゃんが走ってるのみてるだけでハアハア。

人生どん底だった女2人(自殺女性とおばちゃん)が行き詰まりから脱出していく…意外に人間ドラマが感じられる優しい風味で、ラストに流れる恋愛映画の主題歌みたいなザ・80年代風ソングになぜか感動。気分スッキリとなる作品でした。

 

バーサン役の女優さん(フィリス・ディラー)はアメリカの有名なコメディアンだそうで、ハスキーがかった声と喋り方が独特、間の取り方も絶妙でした。

ワンちゃんは「エルヴァイラ」にも出演してた子だったようで、名俳優犬だったんですかね。
特典でバーサンが「あの犬年とってて重かった」って言ってて吹き出しました(笑)。

 

91年の作品と言われると(良い意味で)もう少し古い感じがしましたが、この年代の映画の手作り感は素晴らしいですね。

こんな素敵な作品がVHSのみでカルト化してただなんて勿体ない!めっちゃオモロかったしすごく好きな作品でした。