「激突!」を思わせる82年公開のオーストラリア製サスペンス。
監督は「サイコ2」「パトリック」のリチャード・フランクリンですが、この人はやっぱり才能アリ。
低予算ながら引き込まれる作品になっています。
ペットの狼犬・ボズウェルを相棒に長距離トラック運転手を続けるクイッド(ステイシー・キーチ)。
ある日精肉を運ぶ緊急の仕事を引き受けた彼はモーテルで緑色のバンに乗った男がヒッチハイク女性を連れ込むのを目撃。
翌朝その男が早朝ごみ収集を確認しているのを不審に思っていたところ、ラジオでバラバラ死体発見のニュースが飛び込んできて…
ヒッチコックリスペクトで知られるフランクリン監督、限定された状況での目撃&推測というシチュは「裏窓」によく似ています。
それにしても40代半ばのトラック運転手から溢れ出る圧倒的孤独のオーラ。
助手席の犬を相手に運転中ひたすら喋る、喋る…すれ違う車をみては人間観察を披露してあだ名をつける…1人が楽と言いつつ実は人恋しい、そんな寂しいおっさんの人物描写が秀逸で「なんか分かる」と突き刺さります。
ヒッチハイカーを乗せるのは会社のご法度らしいのですが、罠を用意して無理矢理乗りこんでくるおばちゃん。乗せてもらっといて態度デカすぎる(笑)。
ところがふとした勘違いで不審者だと疑われてしまう主人公。
殺人鬼を追っているはずが同じ足跡を辿っていて逆に疑われてしまう&もしかして主人公の妄想なのでは……というプロットは良いのですが、後半に進むにつれ尻すぼみに。
犯人とのサシの対決があっけなく、クライマックスに分かりやすい見せ場のカーチェイスシーンなどがあって欲しかったように思われます。
犯人が主人公に罪を着せようと意図的に行動していたのか、結局どんな殺人鬼だったのか不明。
「激突!」のように全てを見せないならそれはそれでアリだと思いますが、中途半端に姿は出てきたりでキャラクターがイマイチ立っていません。
それでも映画的におっと引き込まれる場面はチラホラあって、積荷の吊るし肉がなぜか増えていて冷凍庫の中を主人公が確認するシーンはドキドキ。
薄暗い中映し出される人肉にも豚肉にもみえるフォルムが不気味…!
冷たい町の人間の様子をカメラがぐるーっと回りながら映し出すシーンはデ・パルマっぽいですが、主人公の隔絶した状況がよく伝わってきます。
途中ではジェイミー・リー・カーティス演じるヒッチハイカーが旅の仲間に…若いのにおっさんとタメを張る逞しさで出番が少ないながら魅力的でした。
ラストは思わず吹き出してしまうザ・B級な終わり方。
「パトリック」もそうでしたが、最後にバーン!!と驚かせて終わりたいタイプなんでしょうか。
全体的にはゆったりした雰囲気ですがおっさんの人生を描いたロードムービー的な感じがしてそれも悪くない、地味だけど光る作品でした。