どうながの映画読書ブログ

~自由気ままに好きなものを語る~

「ザ・リッパー」…殺しのドレス風!?フルチのエロス・スプラッター

ルチオ・フルチが「墓地裏の家」のあと82年に撮った猟奇サスペンス。

このジャンルが下り坂の時期に制作された作品だと思いますが、晩年の作品に比べると予算はあったのかNYの空撮などロケーションはしっかりしています。

「イノセント・ドール」のようなロマンポルノみたいな作品も撮っているフルチ、こちらも性描写がふんだんにあって驚かされます。

主人公が定まっておらずとっ散らかった印象ですが、エロとスプラッターがてんこ盛りで引き込まれて観てしまう作品でした。

NYのブルックリン橋の下で女性のバラバラ死体が発見。
その後もフェリー利用客の女性が車中でメッタ刺しにされる事件が発生。

老刑事・ウィリアムズは女性器を切りつける残忍な犯行は同一犯だと推測、ザ・リッパー(切り裂き魔)と名付けられた犯人を追いますが…

 

最初の犠牲者であるロードレーサーの女性、他所様の車にキズをつけてもどこ吹く風、怒られたのを逆恨みして落書きしに行くわと中々の性悪女(笑)。

どえらい目に遭いますが、メッタ刺しもさることながらドナルド・ダックのようなアヒルの口調で話しかけてくる犯人がとても不気味。

車の片側のドアが壁で塞がっていて追い詰められていく様子など〝いたぶり〟も際立ったオープニングです。

 

警察目線で話が進んでいくのかと思いきや、次に視点は美しい人妻・ジェーンにバトンタッチ。

色欲に駆られた中年女性がセックスショーに足を運んで観客席で自慰したり、若い男に股を足でグリグリされて昇天したり…と一体何を見せられてるんだー!?なエロスなシーンが続きます(笑)。

しかも不貞中の音声をテープに録音して夫に聴かせているようで高度なNTRプレイ。

それでも飽きたらず怪しい劇場で出会った「三本指の男」とホテルで逢引するジェーン。

”欲求不満熟女×怪しい男”の組み合わせ、デ・パルマの「殺しのドレス」に似てる気がします。

行為後「三本指の男」が警察から追われている存在だと知って逃げ出そうとするも、その途中でジェーンは何者かに殺されてしまいます。

 

一方、街ではフェイという若い女性から「三本指の男に襲われた」という通報が警察に入っていました。

ところがこのフェイちゃん、常日頃から幻覚持ちだそう。警察に証言を疑われてしまい、恋人ピーターの家で静養することになります。

熟女から若い娘へ…「殺しのドレス」みたいに華麗に主人公がバトンタッチするわけではなく、視点があっちこっち飛ぶ上に幻覚描写まで出てきて話がめちゃくちゃとっ散らかってます(笑)。


フェイの証言と人妻の録音テープのおかげで警察は「三本指の男」の身元を特定しますが、彼は死体で発見。

その後も真犯人らしき人物による犯行が続き、ウィリアムズ刑事のお気に入りだった娼婦が電話生中継で惨殺されてしまいます。

剃刀で乳首を切られ、眼球を切り裂かれ…目玉がしっかり動きながら切断されるのがよく出来ていて、ここは神経を逆撫でされるようなシーン。

生中継で殺されるのは「ミッドナイト・クロス」のような何とも言えないやるせなさが漂います。

三本指の男は真犯人に被害者を斡旋していただけかもしれない、犯人はもっと知的な奴だ…と再び調査は白紙に戻りますが…

(以下ネタバレ)

 

犯人はフェイの恋人・ピーターでした。

実はピーターには余命いくばくもない難病の娘がいましたが、母親は外国に逃げ、父親の彼も一度見舞いに行っただけでほったらかし。

そんな彼にも罪悪感はあったのか「大人になることの叶わない娘が決して味わうことのできない性の悦びを貪っている女共が許せない…」と別人格(アヒルの人格)が誕生し、残忍な犯行を繰り返していたのでした。

 

ピーター大学生くらいにみえたけど娘おったん!?老刑事にいちいち挑戦状みたいなの突きつけてたのは何だったのよ!?とツッコミどころはたくさん。

けれどラストシーン、小さな娘ちゃんが「お父さんが電話に出ないよ…」って泣いてるのが哀しすぎる…子供はお父ちゃんが見舞いに来てくれるだけで嬉しかったのに…

 

妻を病で早くに亡くし、次女が事故で身体に障害を負ったフルチ。

昨年みたフルチのドキュメンタリーでの彼の人生のエピソードを思い出すと私生活での想いが反映されてるのかなーとか色々考えてしまいます。

とっ散らかってて伏線もヘッタクレもありませんが、倒錯した人間の心、誰もが狂気に向かってしまう恐ろしさ、病や死への純粋な恐怖…そういったものが真摯に描かれているのがフルチらしいところなのかな、と思いました。

 

メインテーマの曲はノリがよくカッコイイのですがラストシーンとはちょっとチグハグ。

そして包帯に巻かれた女の子をみるとなぜか「サンゲリア」が思い出されてしまいます。

タイプの違う綺麗な女優さんがたくさん登場、ねっとりしたエロスと執拗なスプラッター描写は見応えがあって退屈しない1本でした。