フルチの作品の中で長らく未ソフト化だった「未来帝国ローマ」が待望のBlu-ray化。
気になっていたタイトルだったので嬉しい限りですが、なるほどこれは長らくソフト化されてなかったのも分かるかも(笑)。
後期の低予算作品でも拘りや工夫して撮られた戦いの跡が感じられることの多いフルチですが、今作はかなり雑な印象。
マッドマックス便乗企画を依頼されたもののSFアクションとは相性が悪かったのかなーと思う作品でした。
2079年ローマ。
各テレビ局は刺激的なショーを毎夜放送し視聴率を競っていました。
圧倒的人気を誇るのは本当に死人が出る「キルバイク」という競技で、チャンピオンのドレイクは不動の人気を誇っていました。
ところがある日ドレイクが自宅に戻ると謎の男たちに襲撃され、妻が目の前で殺されてしまいます。後日ドレイクは犯人の男たちを惨殺した罪で逮捕。
実はこれはライバル局であるWBSが仕組んだ罠で、死刑囚ばかりを集めたデスゲームを企画した局は視聴率アップのためドレイクをそこに引き入れようと工作したのでした。
ドレイクは逃亡防止のためのブレスレットを腕に埋め込まれ、仲間の囚人たちととも刑務官にしごかれながらトレーニングすることに…
「ブレードランナー」のサイバーパンクな世界を真似たかったのか、キラキラした電球が光る未来都市ローマが舞台。
ジオラマの都市は手作り感に溢れていてチープながらも不思議な魅力があります。
さらに「ニューヨーク1997」のような小道具設定が盛り込まれ、「マッドマックス2」を剣闘士風にアレンジしたようなコスチュームが登場。
テレビに圧倒されイタリア映画業界が衰退しはじめた80年代…刺激を追い求め続けるメディアと視聴者を皮肉ったプロットは「バトルランナー」と重なり意外に社会派!?であります。
が、ビックリなのは肝心のデスゲームがラスト30分まで出てこない!!
推理ものに脱獄ものにAIもの…とごった煮のストーリーについて行くのに必死になります(笑)。
局のコンピュータ担当だという女性・サラに記憶を覗く装置を取り付けられるドレイク。
妻が襲われた日の記憶を探るとそこには犯人たちを殺害する謎の第4の男が…
ジャーロっぽい雰囲気を醸すも特に何も起こらない(笑)。
元から有名人だったドレイクは他の死刑囚たちから嫌がらせを受けるも、意地悪な刑務官と相対することで絆が深まり友情が芽生え始めます。
「ショーシャンクの空に」のようなハートフル囚人ものになるのかと思いきや、電流が流れる床の上で懸垂をさせられるドレイクたち。
脱落した仲間が感電し身体から煙が…急にホラー描写が出てきてビビります(笑)。
また裏方の仲間が高周波を操れるというマイクロチップを横流ししてくれ、こっそり脱獄をアシスト。
大きさがSDカード位あるチップをなぜか丸呑みするドレイク。
すると刑務官の電流攻撃がブロックされるばかりか、壁を溶かして皆で外に脱出することに成功。
コロッセオの地下墓地だという蜘蛛の巣が張りミイラが住まう「地獄の門」のような世界…ようやくフルチ映画らしいのが始まったという期待感も束の間、あっさり捕まってしまいます。
一方ドレイクが無実の罪であることを知ったサラは、局を管理しているスーパーコンピュータが暴走しているのではないかと、その生みの親であるトーマス博士を訪ねます。
博士は何者かに殺されるもスーパーコンピュータ【ジュニア】にアクセスできるキーを譲り受けます。
時折暴走AIものに話が逸れつつも、ようやく【極刑ゲーム】が開始。
冒頭でやっていた他局のバイク番組を丸パクリした内容にびっくり。
途中には「ベンハー」を思わせるサイドカー付きバイクでグラウンドを周回して競争するゲームが始まりますが、スピードが遅いし全員同じヘルメット付けてて誰が誰だか分かりません(笑)。
そこにコンピュータキーを手にしたサラが突撃してきて番組のやらせを生告発。
皆で局内に突撃しますが、黒幕かと思われたプロデューサーのコルテスはあっさり死亡。
モニタ越しに映っていた局の社長・サムが実はスーパーコンピュータ・ジュニアから削除されたプログラム(悪意の集合体)で、本体は宇宙衛星にあることが発覚します。
大変、皆の腕輪が爆破されちゃう…!!(もう忘れてたよ)となった矢先、サラが部品に内蔵されていた破壊コードを読み取りそれを送信すると衛星がドカンと爆発。
フルチにしてはかなり珍しい!?男女が結ばれるハッピーエンドで幕を閉じます。
B級映画のごった煮のようでそれなりに楽しいのですが、勢い・熱量・こだわり…いずれにも欠けていて物足りない印象。
コンピュータの設定がガバガバなのはともかくガジェットの魅力や狂った未来感もなく、かといって「マッドライダー」のようなカラッとしたアクション風味もない。バイクより途中でやっていた「幻覚ホラーショー」の方が遥かに面白そうだと思ってしまいました。
テクノな音色と勇猛な管楽器が重なるテーマ曲が映画をかなり底上げしてくれていますが、音楽はリズ・オルトラーニ。
作曲の幅も広くてこの人本当にすごい…!!
フルチ作品だと思って期待するとちょっと残念ではありますが、Blu-ray自体はスタッフキャストインタビューなど特典映像が充実していました。
2020年に撮影されたものらしく映像が綺麗、時が経ったゆえなのか皆さんフルチに優しめなコメント。
これだけ色々便乗しておいて脚本家が「バトルランナーにパクられた」と堂々宣うのには笑ってしまいました。
気になっていたタイトルだったので、観れただけで圧倒的感謝…!
SFでもなんでもない、主人公の奥さんが殺される場面で男たちが口笛を吹きながら近づいてくるとこが1番よかったです。