フルチが「サンゲリア」と「地獄の門」の間に撮ったという80年公開のギャング映画。
同年公開の松田優作の主演映画となぜか同じタイトル、ハードボイルド路線のフルチだということですが…
話の合間に突然挟まってくるグロ描写に思わず笑ってしまう、フルチファンにはとても楽しい1本でした。
ナポリの港町。
闇タバコを密輸するミケーレ&ルカの兄弟は待ち伏せしていた警察に現場を押さえられてしまいます。
内通者の存在を疑ったルカたちは気鋭の若手ギャング・ペルランテに相談を持ち掛けますが、その帰り道に兄のミケーレが銃撃を受けて死亡してしまいます。
復讐を誓ったルカはやがて血みどろの抗争へ巻き込まれていきますが…
予算があった時代の作品だからか冒頭からボートチェイスをみせるなどロケーションが豪華。
兄のミケーレが銃弾を浴びて死ぬ場面は「ゴッドファーザー」のソニーの死に様に似ています(笑)。
銃撃犯の情報を持つ仲間の下を訪れるルカですが、そこは硫黄の煙が立ち込める温泉地。
突然現れた襲撃者と格闘になり、熱湯に落ちた敵は「サンゲリア」のゾンビのような姿に(笑)。
ルカは兄と仲の悪かったシャリーノが黒幕だと疑いますが、シャリーノはこれを否定。
兄を襲撃した男を見つけて拷問すると「マルシエーゼ」という呼ばれる男の存在が浮かびあがってきます。
マルシエーゼは麻薬を取り扱うフランス人のギャングでした。(演じているのは「フレンチ・コネクション」でジーン・ハックマンに後ろから撃たれた殺し屋役の人)
冷酷な男で、純度をごまかしてブツを納品しようとした女性はランプの火で顔を炙られてしまいます。
(本筋に関係ないのにこのシーン長い)
一方ナポリでは密輸ファミリーが次々に襲撃を受ける事件が発生。
その後ペルランテが「マルシエーゼが麻薬の取引をしたがってる」と話を持ち掛けてきます。
どう考えても裏切り者はペルランテ…!!ですが、ルカも他のメンバーも誰も疑いません(笑)。
ルカは「タバコはいいけど麻薬だけはダメだ」とドン・コルレオーネのように語りだし、他のファミリーもそれに追随します。
ところがその後ペルランテが密告したのかナポリ中で闇タバコの大検挙が行われました。
パスタ食ってるおっさんも修道女も次々に連行されていきます。このシーン妙にほのぼのしててなんか楽しい(笑)。
事態が悪化したのをみてルカはシャリーノと共にペルランテの自宅へ赴きますが、待ち伏せしていたマルシエーゼたちに襲われます。
何とか生き延びたルカが自宅に戻ると謎の小包が届いており、中を開けると妻のパンティーが…
「誰の下着か分かるか?」…ってそこは切断した指とかじゃないのね。
妻子を人質にとられ、しかも妻は電話越しにレイプされてしまいます。(このシーンもやたら長い)
対決のため無謀にもフランス軍団に1人立ち向かっていくルカでしたがそこに思わぬ助っ人が…
ナポリの引退したマフィアの爺さんたちがいきなり集結、「麻薬でワシらの街を汚されてたまるか」と銃撃戦をブチかまします。
↑フルチも派手に銃をぶっ放す…!!
ラストはハッピーエンドですが、合間に登場していた西部劇好きのジーサンがまさかそんな重要人物だったとは…伏線もへったくれもありませんが、敵を一掃して何だかスカッとして終わりました。
同時多発的マフィア襲撃シーン、些細な変化に気付いてとっさに身を伏せるマイケルみたいなムーブみせる主人公…と「ゴッドファーザー」に似た場面がチラホラ。
ファビオ・フリッツィの音楽にも所々ちょっと似たメロディが入っているような…
「ゴッドファーザー」と「フレンチ・コネクション」の便乗映画を撮るぞー!!って走り出した作品だったのではないでしょうか。
そこにボートに馬にグロ描写とフルチの好きなものがふんだんに盛り込まれて、フルチ好きにはニッコリ満足な1本でした。