どうながの映画読書ブログ

~自由気ままに好きなものを語る~

「ゴッドファーザー」の残念なお兄ちゃん、フレド・コルレオーネをふり返る

今月、コッポラが新たに編集しなおしたという「ゴッドファーザーIII」がBlu-rayになって発売されるとのこと。

※U-NESTで今月末まで先行配信もしてます

1と2は何回も観てるのに、3はぼんやりした記憶しかない…。この機会に見直してみるかー、でもその前に1と2復習しておきたいなーと思って分割になりつつ観たところ、
やっぱゴッドファーザー面白!!と夢中になってしまいました。

観るたびに前に気付かなかったところに気付いて好きなキャラクターが変わったりしますが、昔は「どーしよーもない奴やなー」と思ってたフレド。

フレドの辛さも分かるなー、生まれる家選べずあんな兄弟にサンドされてたらたまらんやろなー…でもやっぱりどーしよーもない奴やなーと無限ループに陥ります(笑)。

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3を観るに当たってもマイケルがフレド殺ったという罪が大きなポイントだろうと思うので、1&2のフレド登場シーンを振り返り、この兄弟の悲劇についてあれこれ考えてみたいと思います。

 

◆Part1のフレド

・結婚式のシーン
1では出番の少ないフレド、ファミリーの全体像がみえる重要な結婚式のシーンでもほとんど登場せず。

マイケルの彼女のケイに挨拶してる場面でちょこっと出てくるだけで、「優しそうなお兄ちゃん」くらいの印象しか残しません。

 

・襲撃されるドン
ドンの襲撃時に運転手を務めてたフレド。

動揺して拳銃を落っことしアタフタしまくるという情けない姿を披露。撃たれたドンの生死も確かめず、その場で泣き崩れるというどうしようもないヘタレっぷりです。

本当はポーリが用心棒として付くはずだったのに風邪でお休み、「病気には勝てないよ」言って付き添いを買って出た優しいフレド。

マイケルだったら勘がよくてこの地点で異変に気付きそうなんだけどなー。

後のシーンではクレメンザが「フレドに代わりをつけるかと言ったがいらないと言った」と話していてこれもホントなんでしょう。

危機感がなくマフィアにはとことん向かないおっとり屋さんのフレド。目の前でパパを撃たれて何も出来ず相当罪悪感を背負ったのではないかと思います。

 

・フレドのベガス行き決定
抗争中戦闘力になるわけでもなく、しかし放っておけば命を狙われるフレドの処遇にファミリーは困っていたものだと思われます。

そこで兼ねてから新ビジネスを企てていたラスベガスにフレドを送ることに。

ベガスは5大ファミリーの抗争圏外で、コルレオーネと親しいモリナリファミリーが安全を保証してくれるとのこと。

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でもフレド的には、このときから追いやられたと感じていたのかもしれません。

 

・ドンの部屋に向かうフレド
ドン不在で家族がギスギスしてる食事シーン。
カルロが料理を取り分けていますが、フレドが最後にお皿を渡されているようで家族の中でとことん軽く見られてそうです。

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そのあとフレドはそっと1人ドンの休んでいる部屋へ。

パパが心配な優しいお兄ちゃんにみえますが、やっぱりドンがいないと家はダメだと言わんばかりで、誰よりも父親への依存度が高いパパっ子にも見えます。

 

・モー・グリーンの肩を持つフレド
マイケルがドンの代わりを務めるようになり、ベガスでのビジネスに本格的に乗り出そうとモー・グリーンからカジノやホテルを買い取ろうと企てます。

先にベガスに行ってたフレドが案内役として現れるもめっちゃチャラい見た目になってます。

「困ったときにフレドを預けといて」
「それで兄貴を殴ったのか」

コルレオーネファミリーが出資してるカジノを赤字にしておきながら強気なモー・グリーン。「コルレオーネは先代ドンがいなくなってオワコン」とナメくさってるからでしょう。完全にバルジーニに鞍替えしたようです。

しかしフレドにはファミリーの誇りが全くなくモーに媚びようとします。

Part2は元々作られる予定はなく、1のヒットを受けて急遽つくることになったそうですが、まるで続編への伏線のように思えるシーン。

しかしモーの言う「客をほったらかしてウエイトレスとイチャついてた」ってのは本当のことなんでしょうね。

原作ではフレドがベガスで5人の女を妊娠させてたという話があります。
カトリックのドンがフレドを遠ざけるようになるのは、息子が優秀ではないからではなく性へのだらしなさからなのですが、フレドはそんなこと知らない…

フレドのベガス出張、悪手だったとしか思えないですね。


◆Part2のフレド

前作から7年経過したPart2。フレドとマイケルの兄弟関係がドラマの主軸となっていきます。

・フレドの嫁がアカン
冒頭パーティーでフレドの妻が登場。ふしだらで頭空っぽ!!って感じでフレド本人もますますダラシない雰囲気になっています。

スケスケ衣装で踊ってすっ転ぶ妻を注意するも、皆のいる前で馬鹿にされるフレド。

自業自得以外の何物でもありませんが、こうやって常日頃からプライドがズタズタになっていたのでしょう。


・情報を流してたのはフレド!?
マイケルの寝室が銃撃に遭い大パニック。賢いマイケルはごく近しい者しか知りえない情報を流したのは身内だろうと早い段階で疑っていました。

その後のシーン、フレドの下にロスの手下・ジョニーから電話が掛かってきます。

「フランクがロサトに手打ちを申し込んできたから奴が1人で来るかどうか教えてくれ」
「だましやがって。もう電話してくるな。」

お前が裏切とったんかい!!オチを最後に持ってくるのではなく、前半からフレドがやらかしたと見せてくるところが最高に面白いです。

ただこの場面観てる限りではアホ兄貴がうっかりと1回こっきり騙されただけに見えるのですが…

 

ハバナにやって来たフレド
新ビジネスへの当資金(キューバ大統領への賄賂)を持って来たフレド、ファミリーの計画について蚊帳の外なのが面白くなさそうです。

「俺の知ってる奴はここにいるかな」とフレドが言うと「ロスにジョニー」とマイケルがカマをかけますが「知らんよ」とシラを切るフレド。

その後2人でレストランに行くと、
「お前の結婚がうらやましい。ケイ。子供のいる家庭。」「一生に一度くらい俺もパパみたいに」とフレドが愚痴りだします。

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皆陰で色々ありつつ幸せな結婚生活送るのに努力してんだよ!!そしてお前が助太刀した銃撃事件のせいでマイケルの家庭ボロボロだよ!!とツッコミたくなりますが、自分しか見えてません。

「ママによく騙された。私の息子じゃないって。本気にしたよ。」
そんな辛い話すんなやー、マッマそれは言ったらアカンやつやろ…

家父長制に誰よりも苦しめられながら、父親は神様、兄は弟より偉いという信仰から抜け出せないのがフレドの悲劇。一方的にマイケルへの不満を募らせていきます。

 

・やっぱりフレドが裏切ってた
アメリカ政府のお偉いさんを接待するためハバナの案内役になったフレド。

その中にロスの手下ジョニーがいるも「初めまして」とか言って取り繕ってくれてたのに、酔いの回ったフレドが自ら「この場所はジョニーに教えてもらった」などと大声で話し始めます。(ほんまにアホ)

こういう店で接待されながら飲んだくれて情報をホイホイ喋ったんだろうなーとその絵面が容易に思い浮かびます。

フレドを抱きしめてキスするマイケル、「やっぱりな。残念だ。」(You broke my heart)

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ここ切なすぎる…分かっててもお兄ちゃん信じてたかったのに…

そして革命軍への政権交代で大荒れになるキューバ、街中でフレドを見かけたマイケルは「フレド来いよ。まだ兄弟だ。」と声をかけますがフレドは怯えた小動物のように逃げ去っていきます。

でもマイケルが怖いというより弟の助けになるか!ってプライド持ってるから逃げたのかなと思います。


・まだ本気で怒ってないマイケル
ネバダに戻って来たマイケルがフレドは無事にキューバから脱出出来ただろうかとトムに尋ねると「ロスは自分の船で逃げた」と返事。

トムならではの皮肉で「フレドはロスと一緒に戻った」と言いたかったのでしょうか。

「彼は恐れてる。もういいんだと言うんだ。」「悪いのはロスだ。襲撃は知らなかった。」

Part2は誰が何をどこまで知って何考えてるか分かりにくいですね…

マイケルは本当にアホ兄貴を許す気だったのか、それともトムすら欺いてこの地点から殺すこと考えてたのか…
自分的にはこのときはマイケルはフレドは騙されただけだと思ってて殺すことまで考えてなかったんじゃないかなーと思います。

 

・マイケル、ガチで切れる
公聴会が開かれ絶体絶命のマイケル。ロス側と繋がりのあったフレドを尋ねると「襲撃のことは知らなかった」と言います。

これは本当でフレドはマイケルやケイが死ぬようなことは全く意図していなかったのだと思います。

しかし「俺のためになると言ったんだ」「尊敬されたいんだ」とか言い出すフレド。

自分がファミリーで優位に立ちたいからという身勝手な理由で家族を危険に晒したことがマイケルの逆鱗に触れたのだと思います。

さらには「委員会のクエスタッドはロスの仲間だ。」

重要な情報を知っていて黙っているなんてとんでもないし、敵とかなり繋がっていたようです。

しかもこれが全く悪気なく我が身可愛さとファミリーの危機を全く察知できない愚かさから来てるっていうのがタチ悪いです。

マイケルは絶縁を宣告、同時にこんな危険な存在は生かしておけないとこのときに殺害を決めたのではないでしょうか。

 

・許されたと勘違いするフレド
お母さんが亡くなってお葬式。コニーが「兄さんを許してやって」と嘆願、マイケルはフレドを許したかのように抱きしめます…けど汚れ仕事役のアルに目配せ。

「相手の懐に入って油断させる」と言う戦術を兄弟にまだ使ってしまうマイケルが哀しいです。

 

・ボート、祈るフレドの死
アルとボートに乗ったフレド、おまじないでお祈りを捧げている間に射殺されてしまいます。

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まるで自分がこれから死ぬことを知っているようにも見える哀しい姿ですが、何も分からないまま殺されたんじゃないかな、と思います。

とことん自分に甘く都合のいいことしか信じられない、用心棒役と2人きりの状況にも何も思わない勘の悪さ、それがフレドなんじゃないでしょうか。

哀しみを誘うのはフレドを慕っていたマイケルの長男、アンソニーの存在です。

繊細そうな性格でケイが去る際にママにキスしなかったりと父親思いのパパっ子、フレドとすごく気が合ったんでしょうね。

3でこの息子がドンにならずマイケルが跡継ぎ探しに困るというのは因果だなーと思ってしまいます。

 

・マイケルはドンになりたくなかった
最後に流れる回想シーン。

海軍に志願したマイケルを皆が驚き非難しますが、フレドだけが「偉いよ、おめでとう」と手を差し出します。 

マイケルも昔は優男三男坊として周りから軽く見られがちでしたが、家の縛りに囚われず、自ら生きる道を模索している弟をフレドは1番認めていたのかもしれません。

しかし結局1番家業に興味なかったマイケルが最もドンの資質を受け継いでいて、何の資質もないフレドが1番父親の世界に憧れ続けていて…というのが何とも皮肉です。

フレド的にはファミリーのはぐれ者仲間だと思ってた弟に置いてけぼりにされてものすごい嫉妬だったんでしょうね。

家族の中で1人だけ居場所がないってどんなに辛いことなのか…しかし本人も益々周りに依存するばかりなので本当にどうしようもない気持ちになります。

 

マイケルはフレドの命まで取る必要はなかっただろうと外野からみると考えてしまいますが、弱肉強食の世界の中でファミリーを守るための行動で、マイケル的には「裏切り者は殺す」という父の代からの鉄則を守ったのでしょう。

裏の世界から表の世界へ…上に行くほど敵は狡猾で時代も変わり義理人情の世界ではもう生き残れない。

アメリカ人として器用にやって行こうとしたマイケルですが、結局代々受け継いでいる気質を捨てられず、堕胎を許せずケイを失う、裏切り者を許せず掟守って兄を失う…と血の呪縛から逃れられなかったマイケルの悲劇。

改めてみると陰鬱な家族ドラマだなーと思います。(でもそこが良い)


1と2であまりにも完成されてて3いるのか??多分3の宗教的なテーマが観ても分からんやろなーと思いつつ3も続けて観たいと思います。