どうながの映画読書ブログ

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「殺人者たち」…ファムファタールな回想と強烈殺し屋コンビ、ドン・シーゲル監督のハードボイルド・アクション

ドン・シーゲル監督による1964年公開のハードボイルド・アクション。

先日鑑賞した「突破口!」が大変面白かったのと、リー・マーヴィンが主演ということで気になったのを観てみました。

殺し屋コンビが依頼を受けてターゲットを殺害するも、なぜか男は無抵抗…謎に思った殺し屋が関係者を追って問い詰めていくミステリタッチなストーリー構成。

合間に回想シーンが挟まりますが、こっちが本編かと思うくらい大胆に長くてびっくり。

ファムファタールに出会って転落していく男をジョン・カサヴェテスが演じていて、なかなかハマり役で面白い。

なんと元はテレビ映画だったらしく暴力描写が原因で劇場公開扱いになったそうですが、そうは思えないクオリティ。

突然振るわれる乾いた暴力描写は確かに鮮烈。そしてラストがカッコいいの一言に尽きる!

ドン・シーゲル監督らしい緊迫感に満ちていて、小粒ながら見応えのある1本でした。

 

◇◇◇

突然盲学校を襲撃する殺し屋コンビ。

受付の盲目の女性に容赦なく掴みかかり蹂躙する様がショッキング。

威圧感半端ないチャーリー(リー・マーヴィン)も怖いけど、おちゃらけた様子でサディステックに暴力を振るうリー(クルー・ギャラガー)も恐ろしい。

視界のない人のパーソナルスペースにズケズケと押し入る不快さといったらなく、突然花瓶の花の匂いを嗅いで水を机にこぼすなど、若手殺し屋・リーの全く意味のない子供じみた挙動がとにかく怖い(笑)。


元レーサーのノースという男を追っていた2人は、彼のいる教室を突き止めるとあっさり殺害。

事前に殺し屋の襲撃を知らせる電話を受け取ったにも関わらず、ノースはどこか納得した様子で一切の抵抗を見せず撃たれて死んでしまいます。

そんな男の死に様に違和感を抱くチャーリー。

ノースには数年前に銀行強盗に加担していた噂があり、仲間割れしたメンバーが今回の依頼主で誰かが大金を隠し持っているかもしれない…2人は関係者から情報を集めることに。

 

最初に訪れたのはノースがレーサーだった頃に彼をパートナーとして支えていた整備工・アール。

1人の女がノースの全てを変えてしまったのだと語り始めるアール…ここから長い回想シーンに突入。

前途洋々のレーサーだったノース(ジョン・カサヴェテス)はある日突然やってきた美女シーラ(アンジー・ディキンソン)に夢中になり、骨抜きにされてしまいます。

見物客も多い華やかなカーレース場面。スピードマックスなドライブデートにゴーカート対決と、車のシーンがこれでもかと連続。

背景がバリバリ合成ですがそんなアニメ的映像が今みると却って面白かったりして、ひたすら疾走する男女の危うい感じが堪りません。


美女に夢中になって心ここにあらずになってしまったノースは、レース中に事故を引き起こしてしまい負傷。

目に軽い障害を追ってレーサーを引退することに…

そんな中シーラが実はヤクザ男・ブローニングの愛人だったことを知り絶望します。

 

高そうな服着て謎の豪邸に1人住まい。どうみても堅気の女じゃなさそうだったけど、惹かれてしまったが最後、泥沼に落ちてしまうものなのね…

事故にあったノースをみるやいなや全力疾走、病院の枕元でずっと待機してくれていた整備工のおっちゃんが正ヒロインの佇まい(笑)。

ノースの死を知って泣き崩れる様子などだだならぬ愛を感じてしまいました。

 

チャーリーたちは次にブローニングの元仲間であるファーマーという男を訪れることに…

蒸し風呂マシンとやらに入った無防備な状態でこんな男2人に取り囲まれたらビビる(笑)。

 

ファーマーは、ブローニングらと共にノースを引き入れて強盗に加担していたことを告白。

郵便車強盗を計画するもドライブタイムが間に合わないことに悪戦苦闘していたブローニングたちは、シーラの提案により、ノースを仲間に引き入れることに…

好きな女に誑かされて犯罪の片棒稼ぎ、しかも愛人男の手伝いをさせられるなんて惨めすぎる。

「彼女は無理矢理従わさせられているだけで本当は俺のことが好き」と思ってしまうの、アホだけどしょうがないわね…

 

ノースのドライブテクが生きて強盗は見事に成功するものの、金を積んだトラックに乗っている最中、ノースがブローニングを突き落とし、100万ドルはノースの手中に渡り行方知れずに…

ブローニングからそう聞かされたのだと語るファーマーでしたが、果たしてそれが真実なのか…チャーリーたちはいよいよブローニングの下を訪れることにします。

 

ブローニング役は後のアメリカ大統領ロナルド・レーガンパトロンジジイ役が違和感なくハマっていますが、迫力には欠けた印象。

ノースに金を奪われたあとシーラも行方知らずになったのだとトボけて語るブローニングでしたが、抜け目なくシーラの居所を聞き出すチャーリー。

「午後9時に会おう」と言っておいて、6時間前に襲撃する作戦、地味だけどめっちゃビビる(笑)。

2人の訪問を受けたシーラは金の行方は知らないと言い張りますが、そんな彼女を相棒・リーが容赦なく強打。

さらには今にも突き落とす勢いで体を抱き抱えて窓外へ…「LAコンフィデンシャル」を思い出してしまいましたが、相手が女性でも情け容赦ないのに絶句。

 

脅されたシーラがついに真相を語りはじめ、3回目の回想シーンに突入。

ノースを焚き付けて金を奪わせたシーラですが、ノースが合流場所のモーテルを訪れるとそこにはなぜかブローニングの姿が…

やはりシーラは最初からブローニングに一途で、ノースのことは利用できる駒としかみてなかった!!

ブローニングに撃たれ負傷しながらもノースは逃亡。その後ようやくノースの居所をみつけたブローニングが彼を始末しようと殺しをチャーリーたちに依頼した…というのが今回の顛末。

 

真相を知ったチャーリーが一言。「あいつが泰然としてたのは死んでたからさ。4年前に君が殺してたんだ」…ノワールっぽい粋で渋いセリフ。

 

殺し屋2人はシーラを連れ去ろうとしますが、向かいのビルからブローニングに狙撃され、若い相棒・リーはあっさり死亡。

ブローニングの家に向かうチャーリーでしたが、負傷した姿を映さず地面に血の滴るカットをみせるのがおしゃれ。

ブローニングと逃げようとしていたシーラが「私は無理矢理やらされてたの!!」と白々しく命乞いしますが、このジジイにはそんな三文芝居きかんやろ(笑)。

あっさり2人とも撃たれて死亡。

そして負傷していたチャーリーもそのまま死亡。

やって来たパトカーに指鉄砲を向けて倒れる姿がめちゃくちゃカッコいい。

今際の際まで金を抱えて殺る気満々、それでも無情な死が…ラストはやはりリー・マーヴィンが全部持っていってくれました。

銃の構え、悪人全員死亡で長いエンドロールもなくサッと終わるところ、全てがクールでした。

 

同じキャストが出ていることもあってか先日鑑賞した「殺しの分け前/ポイントブランク」にイメージが重なるところもチラホラ。

裏切られた男がずっと過去に囚われていてもはや死人、死神のような殺し屋にも逃れられない死がやって来る無情さがひたすら渋い。

 

回想シーンを語るうちの誰かが嘘をついていて真相が明るみになっていく…そんな凝ったサスペンスドラマを期待すると肩透かしですが、ヘミングウェイの原作短編小説はもっとシンプルで驚き。

レストランにいる殺し屋2人の会話を聞いて、従業員がこれから殺される男に善意で警告しに行くことにするも、男は諦観して死を受け入れていた…

なんの背景も描かれず、ひっそりと寂しい感じのする不思議な短編。これをファムファタールものにしてしまう脚色が凄い(笑)。

 

アンジー・ディキンソンはハナからどうみてもクロでなんの意外性もなかったけど、着地点のみえる転落劇に仄暗い楽しみがあるようで面白かったです。

殺し屋2人の出番はもっとあればと惜しまれるほどでしたが、リー・マーヴィンはもちろん、若手相棒・リーのキャラもユニーク。バタリアンの社長だったのかと驚き(笑)。

障がいを負った人に平気で暴力を振るうところ、食に妙な拘りがあるところ、子供じみた狂気を覗かせるところなど、「突破口!」のジョー・ドン・ベイカーにどこか似ていて先駆けたキャラクターにも思えました。

 

消音銃の音の響きにドキッ。

地味なようでアクション1つ1つに緊迫感があり、ドン・シーゲル監督のその後の作品への助走としても楽しめる作品なのではないかと思いました。