今期のホラー・マニアックスのラインナップの中でも一際強烈なジャケ写で、気になりすぎる作品が…
レンタルビデオ時代から目を引くビジュアルで有名だったようですが、自分は全く知らなくて初見。
もうすぐ家にチャドが来る!!発売が楽しみでここ1ヶ月くらいウキウキだったのですが、いざ見てみると、あれ思ったよりも地味!?
クリーチャーの出番は少なめ、ハッチャけたグロホラーを期待してたら意外と堅実なつくりで驚き。
モンスターパニックものだと思ってみると肩透かしかもしれませんが、登場人物が好感の持てる人たちばかりで魅力的。
ニューヨークの地下ホームレスと産業廃棄物を絡めたストーリーが王道SFホラー的でシリアス。
個々に異変に立ち向かっていたキャラクターたちが繋がるクライマックスには静かな感動が…
思っていたのとは違ったけれど、しっかり美味しくいただける良作ホラーでした。
◇◇◇
ニューヨークの下町。
愛犬を散歩に連れ出していた女性がマンホール下から出てきた何者かに襲われ行方不明に…
ラファイエット通りではここ数週間行方不明者が続出。
妻を失ったボッシュ警部は自ら捜査に乗り出しますが、上層部は何かを隠している様子。
一方ホームレスたちのフォト撮影をしていた写真家・ジョージは、何者かに足を食いちぎられた男性と遭遇。
下水道や地下鉄奥に住むホームレスたちもここ最近立て続けに行方不明になっていることが発覚。
ボッシュたちが恐ろしい街の秘密に迫る中、とうとう奴らが地上に這い出ようとやって来て…
序盤は主人公誰!?となって話が掴みにくかったですが、メインキャラ3人でストーリーが展開。
1人目は中年警部のボッシュ。

連行されてきたホームレスのお婆さんをみて「電話をかける権利がある」と言葉を添えるなど真面目でいい人そう。
いなくなった妻を思い出し虚ろげに過去を語る様子からは深い愛情が伝わってきて、好感の持てるキャラクター。
もう1人のメインキャラは写真家のジョージ。

香水広告に出演することになったモデルの妻のヌード撮影を担当することになるも、嫉妬からなのかギスギスした空気に…
束縛が強いタイプなのか、商業主義的仕事に嫌悪感があるのか、夢のためにやりたくない仕事を無理してやっている妻を庇っているのか…いまいち読みにくかったけど、こういう本筋に関係ないエピソードを人物描写にしっかり絡めようとしているところに丁寧さを感じました。
ある晩妻が妊娠したと告白。
…「子供が欲しい?」「分からないわ。産んで欲しいとか言わないの?」「君の体のことだから」…
現代的カップルの会話というか、2人とも結構ドライ。そして「ローズマリーの赤ちゃん」や「プロフェシー」コースかと思ったら全然違った(笑)。
写真撮影協力の際に知り合ったホームレス女性が電話をかけてくると迷わず警察署まで迎えに行くなど、義理堅い男だというのが伝わってきました。
どっかで見たことある顔だなーと思ったら「ホームアローン」のお父さん!!
そして3人目のメインキャラはホームレスのための無料食堂を営むシェファード。

前科持ち男だけど、現在はホームレスたちを支援し、”牧師”と呼ばれ慕われる男。
「ホームアローン」の相棒の泥棒に似てるなーと思ったら本人だった(笑)。
人間味溢れるユーモラスなキャラで真面目な警部と好対照。2人のやり取りがよかったです。
出ている役者さんたちの演技が安定しているのが作品のクオリティを底上げ。
またホームレスたちの住む地下世界の描写が本物っぽくて見入ってしまいました。
落書きされた壁にゴミのたくさん落ちた道路…ホームレスの人々が寒々しく佇む冒頭の景色からおおっと引き込まれましたが、80年代ニューヨークのうら寂しい景色がホラーのムードにマッチ。
弟がモンスターに襲われ、身を守るため銃を盗もうとしたホームレスのお婆ちゃん、「空が閉じる」という謎のセリフをいいながらブルブル震えるおっちゃんなど、出番の少ないキャラクター陣も皆いい演技。
衣装や顔のメイクはよかったのに、歯が綺麗なところだけはちょっぴり残念。
ボッシュ警部たちが真相を探る中、孫と散歩に出かけていたお爺ちゃんがマンホールから突然現れた謎の怪物の餌食に…
泣き叫ぶでもない目撃者の女の子の虚無の表情がこれまたいい演技。
異変を上層部に訴えるボッシュでしたが、政府の役人・ウィルソンは全く取り合わず事態をうやむやにしようします。
反対を押し切って、火炎放射器部隊を地下に送り込むシーンは「エイリアン2」っぽかったですが、戦闘シーンを一切映さず全滅するところは低予算映画(笑)。
ボッシュがウィルソンの所持する書類にふと目を落とすとそこにはC.H.U.D.の文字が…
・Cannibalistic Humanoid Underground Dweller (地底人喰いヒューマノイド)
・Contamination Hazard Urban Disposal(都市型汚染危険物)
怪物の名前かと思ったら、しっかり意味のある頭文字だったタイトル。ガンダムSEEDのGUNDAMみたいな(笑)。
実はラファイエット通りでは過去に産業廃棄物の運搬が行われており、ウィルソンたち役人が放射性有害廃棄物をそのまま放置。
地下に住むホームレスたちが身体を毒され怪物チャドに変貌を遂げていたというのが事件の真相。
写真家・ジョージとシェファードが地下を調査している中、証拠もろとも全てを隠滅しようと、ウィルソンはマンホールの蓋をすべて塞ぎ地下に毒ガスを流し始めます。
そこに地上に這い出ようとするチャドたちも現れ、クライマックスへ…
チャドたちに追われながら地下の迷宮を疾走、そんな大掛かりなアクションシーンにはなっておらず、ガスで咳き込む2人を映すばかりで絵面はかなり地味(笑)。
でも閉塞感ある暗い地下セットがよく出来ていて、♫デュンクデュンク~と鼓動のように鳴り響き続けるメロディにテンションがあがりました。
一方地上では地下室のある家に住んでいたジョージの妻・ローレンがチャドに襲撃されてしまいます。
シャワーを浴びていたローレンが詰まった排水溝に手を伸ばすと突然血が飛び散り浴室が真っ赤になるシーンは、全く意味不明でびっくり(笑)。
次の場面で何事もなく、シャワーを終えて服を整えているのが強メンタルすぎて絶句。
さらにそのあと襲ってきたチャドの首を刀でぶった斬るローレン。

このニュニュッと首が伸びるチャドがとてもよく出来ていて、爬虫類のような質感といい、首が切られても噛み付く姿といい、これぞ見たかったモンスター。
しかし気合いが入っていたのはこの1体のみなのが残念!!
途中には足を噛まれていたホームレスのおっちゃんがチャド化する場面も描かれていて、ゾンビ的設定を匂わせつつも消化不良。
〝元ホームレスたちが地上の人を襲う〟一大パニックシーンがみたかったように思われますが、チャドの出番は全体的に控えめ。
唯一描かれる街のパニック描写は、ダイナーでウェイトレスにちょっかいをかけている警官がチャドに襲われるシーンですが、警官役がジョン・グッドマンなのに驚きました。
写真家と牧師が毒ガス攻撃に喘ぐ中、地上では真相を知った警部が上層部に盾付き奔走。
顔色が悪くて目の下のクマが凄い悪党役人役のおっちゃんの顔がチャドよりも怖かった(笑)。
警部の導きによりジョージとシェファードは何とか地上に脱出。
合流してきたローレンの一言で暴走するウィルソンの車から身をかわし、シェファードの撃った弾が命中してウィルソンの車は炎上し死亡。
「ナイスショット」と声をかける警部のおっちゃん、人助けのため自分が撃たれてしまって助からなさそう…でも奥さんの仇がとれてよかったのかな…切なくてカッコいい最期。
そして大惨事の後再会するジョージとローレン。これから赤ちゃんの生まれる2人が固く抱きしめ合っててなんかよかった。
最初は主人公が誰なのか掴みにくくてノリにくかったですが、仕事人警部、反骨精神の写真家、人情味ある食堂の牧師の3人が交錯していく様がとてもよかったです。
バカっぽいグロホラーだと思ったらお話もつくりも至って真面目な良作。
けれど気取ったところは全くなく、ゆったり楽しめるとてもいい塩梅。

ジャケ写詐欺とは言わないけど、これで売ったる!!と盛大にかました昔のVHSいいなあ(笑)。
思ったのとなんか違ったけど、いいホラーをみた満足感がしっかりと残って楽しかったです♫
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