この夏劇場で鑑賞してめちゃくちゃ面白かったマカロニゾンビ映画「ヘル・オブ・ザ・リビングデッド」。
監督のブルーノ・マッティと脚本家のクラウディオ・フラガッソがタッグを組んだ1984年のホラーがあるとのこと、パンフ解説によると監督自身が最高傑作と発言したとか。
国内版DVDは入手困難なアイテムと化していましたが、輸入版を購入して観てみました。
2015年に核戦争が勃発し五大陸は荒廃。
人類は地下に逃れた者とその後地上に再び出て暮らし始めた者とに分かれた。
核投下後の世界をAB(アフターボム)と呼び、現在はAB215年である…
冒頭からナレーションがスラスラと流れてきて、次に現れるのはワイルドなファッションに身を包んだ集団…
アニマルパニックかと思ったらマッドマックス便乗映画なのかよ…!!とびっくり(笑)。
当然のように銃や火炎放射器を携えていて、とても荒廃した数百年先の人類とは思えない佇まいが頼もしいです。
一行は寂れた小さな町を探索することにしますが、食料や水槽、栽培された植物などを発見。
思わぬ物資に大喜び、小麦粉を全身に振りかぶって「アンタたちより白いわよ!」とはしゃぐ黒人女性が異様にハイテンション。
ところが家屋の隅々から謎の死体が発見され、方々でネズミが現れます。
仲間から離れてセックスに励んでいたリリスとルシファーのカップルは突然ネズミの襲撃を受けました。
寝袋にネズミが入ってきたけどジッパーが壊れて出られない…!!(なんて間抜けなんだ)
股から体内に侵入したネズミが内臓を食い破り口から出てくる…!!(なんて下品なんだ)
その後も1人ずつ襲われ、噛まれた者は体調悪化、車両はパンクしネズミの大群に囲まれて籠城戦へ…蓋を開けてみればゾンビ映画の王道パターンなストーリー。
あえてネズミを使ったのは「ウィラード」などアニマルパニックものに便乗しようという流れがあったのでしょうか。
ネズミの数は多いことは多いものの、どう見ても逃げられないほどの数じゃないので緊張感に乏しい。
襲ってくるといってもスタッフが画面の外からネズミを投げつけているのが丸バレ、どうみても不自然すぎる画。
そしてそれをカバーするように大根役者が無意味に絶叫しまくるという地獄絵図が続きます(笑)。
苦肉の策なのかネズミの模型がベルトコンベアで運ばれてくる様子を映してネズミの襲撃をむりやり表現しているシーンはシュール。
死体の背中が裂けてネズミが爆発しながら飛び出してくるシーンは、エイリアンに便乗したのか妙に気合いが入っていて笑ってしまいました。
仲間が負傷するとしっかり助け合うパチマックス集団…意外にヒューマニティー溢れる奴らです。
しかし1人だけ例外がいて、ナポレオンジャケットみたいなのを羽織ったデュークだけは仲間を見捨てて、リーダーの座を奪い取ろうと皆と対立します。
女性ばかりが残った部屋の鍵をかけて野郎共を締め出すデューク…1番頭の弱そうな女性・マイナを連れて逃走するデューク…
モテない男の暴走が何だか哀れに映ります。
人間同士の争いも空しく皆次々にネズミに殺され、残ったメンバーは謎のコンピュータルームに籠城することに。
残された音声データが語る過去の歴史…核戦争後の突然変異でネズミは人を食べるようになり彼らが地上の覇者となったことを知ります。
(ここからラストネタバレ)
そんななかガスマスクをつけたクレイジーズのような集団が突然現れ、殺鼠剤を撒き散らし残ったメンバーを救出。
「あなた達は私たちの友達よね」と声かけたのも束の間、マスクをとるとなんと彼らはネズミ人間だった…!!
新世界へようこそ…な驚愕エンド。
ネズミを駆除していたので中身はしっかり人間なのかもしれませんが、「猿の惑星」のような衝撃が走るラストがなかなか素晴らしいです。
狭い場所での籠城戦、人間どうしの争い、助けが来たと思ったらバッドエンド…「ヘル・オブ〜」がゾンビリスペクトなのに対し、こちらは「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」を踏襲したような作り。
音楽はゴブリンではなく昔のゲーム音楽のような電子音でしたが、ピタッとハマっていて悪くなかったです。
「ヘル・オブ〜」の方が役者さんの演技が上手くロケーションもアクションも魅力が深かったように思いますが、この「ラッツ」もまずまずの出来。
脚本家のSFホラーに対する真摯な想いと、監督のエンタメ精神が見事フュージョンしていて、このコンビの作品は楽しいですね。