どうながの映画読書ブログ

~自由気ままに好きなものを語る~

「トロル2 悪魔の森」…ベジタリアンに野菜にされる!!狂気炸裂イタリアンホラー

ヘル・オブ・ザ・リビングデッド」の脚本家クラウディオ・フラガッソが監督を務めた「トロル2」。

トロル2 悪魔の森 [Blu-ray]

トロル2 悪魔の森 [Blu-ray]

  • マイケル・ポール・スティーヴンソン
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アメリカでは〝最低映画〟としてカルト的人気を博すレジェンド作品だそうですが…

自分は真っ当なホラー映画として案外普通に楽しめてしまいました(^^)。

 

宣伝の都合上「トロル2」と名乗っただけらしく、最早トロルも出てこなくて代わりに登場するのはゴブリン。

安っぽい電子音が鳴り響く中、ゾンビのような恐ろしい容貌のゴブリンたちが沢山追いかけてくる…

冒頭だけでも前作と雰囲気が余りにも違いすぎて思わず吹き出してしまいました。

 

本作のゴブリンたちはなんとベジタリアン

ムリヤリ人間たちに謎の食べ物を食べさせようとしてきます。

しかしそれが口に入ると緑色の血が全身から吹き出し体に枝が生えてきて内臓を食い破り「植物人間」となってゴブリンに刈り取られて食べられてしまう…

こんなん子供泣いてまうやん…というビックリのストーリー(笑)。

フラガッソの妻で脚本のロッセラ・ドルーディが自分の周りの友人たちが急にベジタリアンになったことに腹が立ってこんなストーリーを思いついたのだとか(笑)。

 

けれど「食を強要される」って中々恐ろしいもので、村人(に化けたゴブリン)が無理矢理得体の知れない物を食べさせてくるの、結構怖いなあと思って観ました。

一応今回のお話も「家族」が主体で、ウェーツ一家というファミリーが田舎の農村で休暇を過ごそうと出掛けたらそこがゴブリンの村だった…というシンプルなストーリー。

文化の全く違う土地に足を踏み入れてしまった「嫌な感じ」はひしひしと伝わってきます。

自分たちと異なる「肉食」の人間を異様に憎み、集会で血眼になって叫ぶ村人はカルト教団のような恐ろしさ。

「植物人間」になってしまった一家の友人が鉢植えから抜け出せず四苦八苦するシーンはシュールですが、話すことも歩くことも許されず、捕食者の都合のいいときに刈り取られ切り刻まれる存在…

何にせよ食べることって残酷だよなあ…そんな気持ちにちょっぴりさせられたりもして、作っている方は大真面目にホラーを作っている。その気概や真摯な想いは十二分に感じられました。

 

最低映画という評価は個人的には解せないのですが、残念なところも多々あって、役者陣の演技はかなり酷かったです。

主人公少年は子役らしさが鼻につくあざとい演技であまり好きになれず…

また友人男の1人・アーノルド役は「サンゲリア2」の博士役をも超える大根演技で一気に白けさせてくれます。

(そう思うと「ヘル・オブ…」の出演陣は皆ハイテンションで高い演技力をみせていて素晴らしかった)

 

ジョシュア少年が亡くなったお爺ちゃんと交信できるというプロットは良かったけれど、ちょっと何でもありすぎで緊迫感が激減。

けれど部屋を間違えるところは思わず笑ってしまったり、トウモロコシがはじけてポップコーンになるところや肉サンド投げつけてゴブリンを撃退するところなど、楽しい場面もたくさん。

子役が愛らしい美形ではなく、家族だからといって理解が得られるわけでもなく孤立してしまうところなど、1とはまた全く異なる魅力がありました。

バッドエンドのラストもしっかりキマっていて、無限ループで少年の幻覚(悪夢)を見せられているような不穏なエンディング…個人的には嫌いではありませんでした。

 

ジョシュア役の男の子(マイケル・ポール・スティーヴンソン)は大人になってからこの「トロル2」のカルト的人気に迫ったドキュメンタリー「ベスト・ワースト・ムービー」を製作したそうで、それが丸々Blu-rayに特典映像として収録されていました。

本業は役者ではなく歯科医だというお父さん役のジョージ・ハーディの活動に焦点が置かれつつ、当時の出演者が大集合。

熱心なファンが集う上映会に呼ばれると皆まんざらでもない様子で喝采を浴びる…という一見微笑ましい様子が収録されていました。

しかし一方怒り心頭なのはフラガッソ。

「最低映画」と呼ばれてもニコニコ、悪口とも受け取れるような当時の撮影エピソードを吐露する出演陣にフラガッソ監督は本気で怒っているようにみえました。

一見ハートフルなようで複雑な気持ちにさせられるこのドキュメンタリー。

茶化されてもヘラヘラしている出演陣とは対照的に、フラガッソには「大真面目に撮りたいものを全力で撮った」という作り手の誇りがしっかりとあるようでした。

気難しいし曲者かもしれないけど映画人として一流なのはフラガッソだけだったのかも…

役者陣が「トロル2」以降誰1人大成していないのは何となくお察し。

逆にフラガッソとその妻は現役で作品を作っていて意欲に溢れている…

評論家の評価など気にせず、自分の作りたいものに情熱を傾けてきた仕事人の真摯な姿を垣間見た気持ちにもなりました。

人の良さそうな歯科医のおっちゃんが冷遇されると急に悪態を吐きだす姿がリアルで痛々しく、上映イベントに唯一出席せず「カサブランカ」と本作を比べてみせたお母さん役の女優さんがある意味1番プロだったのかも…と思いました。

 

特典ドキュメンタリーまで観ると別の意味でお腹いっぱいになってしまいましたが、自分は真剣に作られたホラーとして思った以上に普通に楽しめました。

「トロル1」の続編だと思って観ると噴飯物かもしれませんが、「ベジタリアンに野菜にされて食われる」っていう発想だけでもうオモロいし、狂気感があって素晴らしい。

フラガッソの関わった作品が他にも観たくなりました。