先日鑑賞した「ヘル・オブ・ザ・リビングデッド」のパンフレットにて脚本家クラウディオ・フラガッソの手がけた作品の1つとして「トロル2」が挙げられていました。
昨年Blu-rayがリリースされたというのもあって気になっていたタイトル、まずは1の方をみてみました。
(1と2、スタッフ・キャスト何から何まで入れ替わっていて全くの別作品のようです)
1作目はチャールズ・バンド製作。脚本は「ドールズ」のエド・ナーハ、監督は「13日の金曜日Part7」のジョン・カール・ビュークラーが担当しています。
「ドールズ」のような真面目なおとぎ話要素を孕みつつ、「ガバリン」のような80年代特有の明るさみたいなのもあって、思った以上によく出来ていて楽しいファンタジー映画でした。
サンフランシスコの賃貸アパートに引っ越してきたとある一家。
お父さん(名前はなんとハリー・ポッター)はレコード集めが趣味の評論家。
その息子のハリー・ジュニアはSFや怪獣が好きな年頃の男の子。
引っ越し早々、愛らしい妹のウェンディが1人で地下を探検していると悪い妖精・トロルに襲われて攫われてしまいます。
魔法の指輪の力でウェンディに成り変わったトロル。
ハンバーガーをドカ食いしたり、家族に暴力を振るったりやりたい放題。
兄のハリーは「あれは妹じゃない」とその正体に怯え始めます。
トロルはさらにアパートの住人を1人ずつ襲い、別の生き物に「転生」させ、魔力で部屋を森に変えてしまいました。
全ての部屋を征服すると4次元爆発が起こり、世界はトロルの支配下に置かれてしまうのだといいます…
お兄ちゃん役は「ネバーエンディング・ストーリー」のノア・ハザウェイですが、妹役の女の子の演技も上手。
挙動がどこか愛らしいトロルは段々と絶妙なブサかわキャラにみえてきます。
さらに面白いのはアパートの住人たちで、自分ではモテると勘違いしている独身男、主人公父が出版業界だと知ると「自由主義者め」と罵る元海兵隊員…
そのお父さん(マイケル・モリアーティ)も大音量でレコードをかけながら1人コンサートやっちゃうような能天気キャラで、それぞれがいい味を出しています。
最上階には謎めいた美人のお婆さんが住んでいますが、実は妖精と人間が共存していた時代の王女。主人公を助けてくれる善なる魔女として活躍します。
髪をほどくと若返るとかファンタジーしてていいですね。
けれど登場人物の中で圧倒的に印象に残るのは小人症の男性・マロリー教授。
中身がトロルのウェンディにその見た目から親近感を抱かれ思わぬ友情が生まれます。
実は骨髄が悪化する難病を抱えているという教授。
「子供の頃思ってた…これは魔法だ、病気じゃなくて…」
「目が覚めたら僕の周りにユニコーンやドラゴンやペガサスがいたらって夢想してた。僕みたいな変わった人も…」
「ドールズ」の小さな女の子が継母と父親に虐げられていたように、現実はいいことばっかりじゃなくて辛いこと、理不尽なことも多い…(だからこそフィクションが心の救いになったりする)
1人苦難を抱えて生きてきたこの教授の独白が胸をうちます。
良かれと思って、トロルは魔法の力で教授をエルフの赤ん坊に転生させますが、果たしてその方が幸せだったのか…その答えは描かれていませんでした。
マロリー教授役の俳優さんが着ぐるみトロルの中身も演じられているようで、双方のキャラクターとその関係性がとても魅力的でした。
元は人間だったものの強欲が暴走して秩序を乱し、罰として醜怪な姿に変えられてしまったというトロル。
ラスト、自分の作った大きな化け物がウェンディを攻撃しようとすると自分の利を捨てて彼女を助けました。
悪いことばっかりしているけれど、人を残酷に殺したりはしておらず、寂しがり屋っぽかったり、どうにも憎めない、絶妙ないいキャラに仕上がっているトロル。
家族愛が強調されたような80年代らしさ、ジュブナイル的要素、意外にしっかりつくられているファンタジーの世界観…全体的にバランスよく大人でも子供でも楽しめる良い作品になっていると思いました。
途中で入るトロルの歌(リチャード・バンドの音楽)も楽しくもどこか怪しげでホラーな雰囲気が出ていてとても良かったです。
1は真っ当なファンタジー映画、これが2になるとどうなってしまうのでしょうか…