どうながの映画読書ブログ

~自由気ままに好きなものを語る~

「死霊のはらわた ライジング」…気前のいいスプラッターと家族ドラマの悲哀

日本劇場未公開だそうですが評価が高いようなので観てみました。

いやー、面白い!!

オリジナルのエッセンスをしっかり継承しつつ、「エクソシスト」のような物哀しい家族の描写、「エイリアン2」のような母性愛、「シャイニング」もびっくりの血の洪水が拝めたりして見所てんこ盛り。

これ1作で独立して観れるのも素晴らしく、大満足の1本でした。

 

(以下ネタバレ)

冒頭からいきなりの頭皮引きちぎりに唖然。

タイトルバックが神々しくてあまりのカッコ良さにシビれました。

RPGのラスボスみたいでめっちゃ強そう、早くも勝てる気がしねえ。

 

時系列遡って1日前、舞台はとある家族の住むアパートへ…

3人の子持ちの姉・エリーの下を妹のベスが久々に訪れました。 

ベスは予期せぬ妊娠をして相談しようと身を寄せたのですが、実はエリーの方も思わぬ悩みを抱えていて夫に家を出て行かれたばかり…子どもたちともギクシャクしていたのでした。

そんな中突然大地震が起こり、倒壊したアパートの地下から長男が「死者の書」を発掘。

謎のレコードを再生させたら悪霊が蘇り、エリーの身体に取り憑いて大惨事が幕を開けます…

 

冒頭ではいつもの山小屋かと思わせておいていきなりの場面転換、今回の舞台はオンボロアパート。

笑いやユーモアは全くなく、家族を主人公にしてがっちりシリアスに作られていました。

悲哀を誘うのは悪霊になった母(姉)の言葉がもしかして本人の本音だったのではないか…とグサグサ心に突き刺さってくるところ。

私が困っていたときには電話を取りもしなかったのに自分が困ったときには突然押しかけてくるのね…

世界を飛び回り好きな仕事をしてきた「自由人」の妹に対し、良い人だったという姉は「我慢する人」だったのでしょう。

心掻き乱す悪霊の嘘の中には幾らか真実が含まれているのかも…と切ない気持ちに。

エクソシスト」の死んだ母親に責められるカラス神父のような哀しみを感じました。

「世話の焼ける子供から解放された」の台詞もこんなん言われたら堪らんよなーと辛い…

(お母さん役の女優さん、すごい迫力!!)

 

子供たちはそんなに酷い目に遭わないんじゃないかなーと思いきや予想以上に厳しい展開。

大戦犯の長男も根は悪い子じゃなさそうで「自分のせいでこうなってごめん」って妹に謝るところが哀しい。

発掘したものが金目のものでお母ちゃん楽にさせてあげられたらなあ、また幸せな家族が戻ってこないかなあ…ほんのちょっとの出来心が悲劇のトリガーに。

長女は多様性社会を尊重し温暖化デモにも参加する真面目で優しい女の子…だけど近所の男子の「エルム街の悪夢イッキミしようぜ」の誘いを無下にするような一面も(笑)。

浅はかな長男は死に、スノッブな長女も死に、ホラー好きの変わり者の末娘・キャシーだけが生き残る…

なんちゅー非情な展開や…と子供相手でも全く怯まない情け容赦なさにビビりました。

 

ガラスにハサミにタトゥー入れる針、大根おろし器みたいなギザギザしたのでグワーッとやられたり…痛覚に訴えてくる負傷度合も素晴らしかったです。

妹が姉を串刺しにした武器がカンダリアンダガーに似ていたり、エレベーターの電線絡みつきが旧作の枝レイプと重なったり…

あまりの絶望感にブルース・キャンベル出てきてくれーと思いましたが、レコードの神父の声で出演していたんですね。

 

クライマックスには満を持して伝家の宝刀が登場。

アッシュ不在を心もとなく思っていたらヒロインがアッシュのように(笑)。

キャシーを助けに戻るところはリプリーの「その娘から離れなさい、ビッチ」と重なりぶっち切りのカタルシスでした。

夫に去られてメソメソしていた姉は死に、1人でも子供産んだるわ…!!の妹が生き残る…これまた厳しい世界。

アパートという舞台装置を密室ホラーとしてあまり上手く生かせてないような気もしましたが、逃れられない空間で家族がギスギス殺り合うの、しんどいホラーしてて自分は良かったです。

家族ドラマというオリジナルにはない味わいがありつつ、ラストはしっかりオリジナルリスペクトなエンディング。(冒頭としっかり繋がったー)

96分でタイトにまとまっていてとってもよく出来ていました。