子供の頃自分が初めてみた「オペラ座の怪人」がこれだったのですが…
めちゃくちゃグロくてびっくり、だけどストーリーはしっかりしてて時を超えるタイムスリップ展開が秀逸。
基本は原作(ミュージカル)に沿いつつそこにスラッシャー映画が投げ込まれた感じですが、執念といっていい怪人のヒロインへの愛が凄まじく変態に突き刺さる1本!?でした。
物語はなんと現代のニューヨークからスタート。
音大生のクリスティーヌはブロードウェイのオーディションで使うための古い楽譜を図書館で発掘しました。
作曲家のエリック・デスラーは殺人犯だったらしいという曰く付きの曲でしたが、クリスティーヌはそれを舞台で熱唱します。
審査員の目に留まるものの、同時に舞台裏から土嚢が落下し彼女を直撃。
「前にも似たようなことがあったかも…」瞬間クリスティーヌに前世の記憶がフラッシュバックし、舞台は100年前のロンドンにジャンプします。
現代から過去へ…ミュージカルの「オペラ座の怪人」も時をかける幕開けがドラマチックに構成されていますが、本作はあの導入を大胆にアレンジしていてよりファンタジックでロマンを感じさせます。
100年前も駆け出しのコーラスガールだったクリスティーヌ。
歌を指導してくれる謎の怪人を「音楽の天使」と崇めていましたが、実はその怪人は彼女の成功を阻む者を裏で手にかけていたのでした。
過去クリスティーヌに現代クリスティーヌの記憶が乗り移ったりはせず、この過去編から視点が怪人・エリックの方に移っていきます。
実は売れないピアニストだったエリック、ある日悪魔と契約し芸術家としての成功と不老不死の肉体を手に入れることとなりました。(この辺りは「ファウスト」というか「ファントム・オブ・パラダイス」が混ざった感じ)
その代償として顔は崩れ落ち、彼自身は愛されることがないという呪いをかけられてしまいます。
糸と針で自分の肌を必死に修復する姿には悲壮感が漂っていて痛々しい…
愛と名声の両方が簡単に手に入ると思うなよ…人生の苦味と渋味がグロ映像とともに五感に訴えかけてきます。
唯一の生きがいは自分の楽曲を見事に表現してくれる美しいクリスティーヌ。舞台に立つ彼女を後方彼氏面でそっと見守ります。
舞台が成功を収めた夜、気持ちの昂った怪人は街の娼婦に声をかけて宿にしけこみます。
「クリスティーヌ…」
「??私の名前クリスティーヌじゃないんだけど」
「いいから今夜はお前がクリスティーヌになれ!」
…と言って娼婦を抱く怪人(笑)。
女だったら誰でもいいんかい!!って感じですが、クリスティーヌのことめっちゃ好きなんやな…と愛が伝わってくるような気もする…ムッツリスケベな怪人の複雑な男心が垣間見える名シーン!?です。
ところがクリスティーヌの側には若いイケメンが現れプロポーズ、そして怪人の残虐な犯行は警察に追われることとなり大ピンチ。困った怪人はクリスティーヌをオペラ座の地下深くにさらっていきます。
基本は原作と同じ展開を辿りつつ、セットや衣装もしっかりと作り込まれている本作。
クリスティーヌが雪の日に父親の墓参りをするシーン、仮面舞踏会のシーンなどはミュージカル版に寄せたのか迫力のある綺麗な画が撮れています。
オペラのシーンにも力が入っていて、現在と過去をつなぐ運命の1曲も効果的に使われています。
その一方グロ描写は情け容赦なく、修復する皮膚の材料をゲットするため犠牲者は皮を剥いで殺す…という「羊たちの沈黙」も真っ青な設定が登場。
カルロッタが生首スープと化す悪趣味な殺され方をしていたりかなりのハードモードです。
怪人の特殊メイクだけでもかなり観る人を選びそう…けどこれが「整形を繰り返して顔崩れてきた六本木ホスト」みたいなもう後戻りできない、なんとも言えない悲哀を感じさせるんですねー。
さて地下に攫われ怪人と対決したクリスティーヌは身体をぶつけて、それが冒頭の事故のシーンとオーバーラップして現代に戻っていきます。
倒れた彼女にオーディションの審査員たちが駆けつけてきますが…
↑あれ!?君の名は…
なんと怪人は好きな人が生まれ変わるのをずっと待ってたんですね…!!現代でもしっかり作曲家となって…ここまで来ると凄い執念!
クリスティーヌには過去の記憶は一切ないままで、作曲家の自宅であるスタジオにノコノコついて行ってしまいます。
しかし運命のあの曲をきいて記憶が一気に甦る…!!再び彼女に迫る怪人でしたが返り討ちにあって刺されてしまいます。100年越しでフラれる怪人(笑)。
こういうホラー映画のヴィランは「異様なしつこさ」が恐怖ポイントの1つかと思いますが、現代にまで追いかけてくるという展開が衝撃的でした。
繰り返す運命を暗示したようなどこか切ないエンディングも他作品にはない余韻が残ります。
怪人はまた100年待つのでしょうか…
海外版Blu-rayはフレディに便乗しまくりのジャケ写になってる本作(笑)。
物理法則を無視したような移動してきて嬉々として人を殺める姿には確かにフレディと重なるものがありますが、作品自体はもっとゴシックロマンの雰囲気。
シルエットはサム・ライミの「ダークマン」に似ているような気もします。
それにしてもこの怪人、喧嘩はめちゃくちゃ強いわ、裁縫得意だわ、金払いはいいわ…不老不死で年重ねても「最近の時代についていけん」なんて泣き言一つ漏らさずパソコン使ってしっかり作曲、将来性はトリプルAと言っていいでしょう。
ペラッペラのイケメンよりこっちの方がいいじゃない!?なんて思っちゃいますが、エゴの塊なので付き合ったら苦労すること間違いなし!
ヒロインが天真爛漫な少女から戦うホラーヒロインに変貌するのも非常に良かったですし、ねちっこい変態オーラ放ちつつどこか人間らしさを感じさせるロバート・イングランドの怪人が素晴らしかった。
自分がみた「オペラ座の怪人」の中ではこれが1番オモロかったです。