劇団四季のミュージカルが好きで間違ってこのビデオ借りちゃった人はきっとトラウマもの。
ホラーファンが観てもなかなか珍妙な作品で、アルジェント好きの人間が観ても「どうした、アルジェント!?」とのけぞるような、別の意味で記憶に刻まれるトンデモな1本でした。
オペラ座の地下深くには音楽の才を持つ謎の怪人ファントムが住んでいた。ある日怪人は美しき新人ソプラノ歌手に恋をするが…
基本のストーリーは原作・ミュージカルと同じですが、本作の怪人はなぜかイケメン。
金髪ロン毛に黒装束、乙女ゲーに出てきそう(笑)。
奇形があって両親に捨てられたというオリジナルの哀しい設定はいずこ…「ファントム・オブ・パラダイス」の爪の垢でも飲んどけや、という気持ちになります。
しかし冒頭、捨てられた赤子の乗った揺り籠が下水を下っていく様子は「バットマンリターンズ」に似ていたりして、なんと怪人はネズミに育てられ大きく成長したのでした。
どうやって言葉や音楽の才を磨いたのかサッパリ分かりませんが、新人歌手のクリスティーヌ(アーシア・アルジェント)と恋に落ちる怪人。
やたらと生々しい性描写の多い作品で娘のヌードをバンバン撮るお父さん。
全裸の男女が交わるサウナ(風呂場?)のシーンがあったり、バレエ劇団の少女を追い回すロリコンのジジイが登場したりと退廃的というか無駄にヘンテコなシーンが多かったです。
官能的でもなければ美しくもなくむしろ汚いといっていい仕上がり。
そして極め付けは怪人の特殊性癖。
クリスティーヌがいない間にこっそりネズミたちと…(以下自重)
これぞアルジェント作品に登場する「動物を友とする孤独な男」の極北。
「オペラ座の怪人」といえば、ヒロインが才能ある気難しい男と一緒になってアウトローとして生きるか、それとも普通のいい男と一緒になって平凡な幸せを掴むか…揺れる女心を描いているのが面白いところではないかと思います。
それが今作はイケメン彼氏の特殊性癖を許容するかどうするか…これはこれで悩みそう(笑)。
さすがアルジェント、「フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ」みたいな生ぬるいもんじゃない変態性をみせてくれます。
怪人を美男にしたため本来イケメンに描かれるはずのライバル男キャラがビミョーな印象になってしまったり、恋愛ドラマ皆無のまま性描写が挟まるためヒロインがビッチにしかみえなかったりと、色々残念。
コミカルな描写が浮いてしまいホラーとして大いに緊張感に欠け、グロ描写も昔の作品のような精彩はなくただグロいだけの味気ないものになってしまってました。
同じくオペラを舞台にした「オペラ座の血の喝采」でアイデアが出尽くしてて、もうあっちがアルジェントの「オペラ座の怪人」ってことでよかったのでは思いますが…
ラスト、怪人と仲違いして別れようとしたクリスティーヌが唐突にファントムの死を嘆き悲しみ愛を叫びます。
思うに本作の怪人はアルジェントの投影。(イケメンなのに陰キャ、多くの人には理解されないかもしれない性癖)
そして揺れ動くヒロインは我々アルジェント好きの映画ファン。変態やなあ…と思ってもやっぱ好き!!大好きなんやでーー!!
アルジェント映画にランク付けしたら最下位かもしれませんが、よくも悪くも記憶には残る作品でした。