ダリオ・アルジェントが娘・アーシアを主演に迎えた93年の作品。
どこか「サスペリア2」を彷彿させるジャーロもので決して面白くないことはないのですが、アメリカをロケ地にしたからかビジュアル的な魅力が半減。
音楽はピノ・ドナッジオが担当していますがあまりしっくり来ずゴブリンが賑やかにやってくれた方が良かったんじゃないかなー…と映像&音楽面が残念な作品であります。
拒食症に苦しむ美少女・オーラは精神病院を脱走し自殺を図ったところを偶然通りかかったデヴィッドに助けられる。
警察に保護されたオーラは自宅に送り返されるが、その夜霊媒師をしている母・アドリアナが降霊会で怨霊に憑依された。
「殺人犯がいる」と叫びながら外に飛び出した母親は追いかけた父親共々何者かに首を切断される。
再びオーラを匿ったデヴィッドは次々に起こる首切り殺人の謎を追うことになるが…
16歳の娘を自宅に住まわせちゃう主人公にドキドキ。
けれどどこかボーイミーツガール的要素を感じさせるストーリーで、青年が心に傷のあるヒロインをどうにかして助けようとする…アルジェントにしては明るめなドラマが描かれています。
オカン&オトンが訳あり霊媒師とメンタル病むのもまったなしなオーラちゃん。
降霊術→殺人事件…という流れは「サスペリア2」とよく似ています。
本作での犯人の手口は一貫しており、電気ドリルにワイヤを取り付けた特殊機械で首を切断…!!
アルジェント特有の痛覚に訴えかけるような殺しのシーンはなく描写はあっさりしていますが、絞首刑と斬首刑を一体化させたような殺人方法は強い怨恨を感じさせます。
事件が起こるのはいつも雨の日、被害者は医者に元看護師…これは何かありそうと惹きつけられるサスペンスです。
(以下ネタバレ)
ラスト10分ほどで急転直下!!
なんと冒頭殺されたはずのオーラの母は生きていました。
十数年前…オーラの弟の出産時、突然の停電が元で医者が誤って赤ちゃんの首をメスで切断してしまいました。
事実を隠蔽しようとした医者たちは母親に電気ショック療法を施し記憶を抹消していたのです…
どんな病院やねん!!とびっくり仰天、恐ろしすぎるトラウマ。
犯人が自分の死を偽装していた…ミステリものあるあるなどんでん返しですが、母親が「自分の手で自分の頭を掴んで首を切られたように見せかけていた」というトリックが面白いです。
「最初にみたものに真相があった」…「サスペリア2」とここも重なります。
結局殺人を犯していたのは死んだ赤子の怨霊だったのか、それとも母親のトラウマが雨の日に偶然蘇ってしまったのか…
オーラの精神科医は母親と不倫関係にあったようで殺人の協力者。オトンが殺されたのは完全に巻き添え…??
なんにせよ目撃者として利用され凄惨な場面を見せつけられたオーラが可哀想ですね。
母親役は「キャリー」で毒母を演じていたパイパー・ローリーでさすがの迫力。
このキャスティングはアメリカ合作ならではでしょうか。
そしてラストこのオカンが「サスペリア2」まんまな壮絶な最期を迎えます。
隣の家の少年にトラウマが残るわ!!っていう(笑)。
途中主人公カップルの視点以外にも度々少年のドラマパートが挟まっていました。
「フェノミナ」を思い出させる昆虫好きの描写はファンには嬉しいですし、「隣の家に住んでるのは実は殺人鬼かもしれない」…という恐怖には童心が感じられて良かったのですが、まとまりはイマイチだったかも。
でもラスト10分で怒涛の種明かし&破滅ってのがイタリアのジャーロっぽい感じがしますね。
とってもリアルな生首、特殊効果はトム・サヴィーニが担当。
切断後に喋るという「魔界転生」並みのファンタジーにびっくり(笑)。
犠牲者の1人をブラッド・ドゥーリフが演じているのも豪華キャストですが、あまり見せ場がないのは残念でした。
「シャドー」までに在った映像と音のキレみたいなのが失われていてビジュアル面の魅力が乏しい1作。
だけど全体的にはしっかり陰鬱ジャッロしていて「サスペリア2」が好きならそれなりに楽しめる、そんな作品でした。
↓↓元ネタ!?かもしれないエラリイ・クイーンの小説を読んでみました。