この武富士みたいな場面写が気になってしまって…
先月からU-NEXTに大量投下されたルチオ・フルチ作品。
今回鑑賞した「マーダロック」は84年制作のジャーロものです。
何でも「フラッシュダンス」の大ヒットに便乗して作られたそうで、ダンス教室で起こる殺人事件というプロット。
「ジョーズ」がヒットしたらゾンビ映画にサメ投入してくるしイタリア映画人の商魂マジ半端ないっす。
舞台はニューヨークのダンススクール。
ステージに立てるのは選ばれた3名だけ、クラスでは日々過酷なレッスンが行われていました。
精神がすり減るような厳しい練習、仲間といいつつ実はドロドロした関係のライバル…アルジェントの「サスペリア」しかりダンスとホラーの組み合わせは相性悪くない気がします。
しかしこの映画のダンスシーン、「フラッシュダンス」というよりなぜか残念な子だった「サスペリア2018」の方が頭をよぎってくる…個人的にはあまり魅せられず美しいとは思えない仕上がり。
音楽は単体では悪くないのですが、ホラーのムードと全く相容れない雰囲気になっていました。
優秀な生徒から順番に殺されていき「犯人は嫉妬したクラスメイトでは??」と捜査が進んでいきます。
ジャーロものということでグロ描写は皆無、殺しのシーンはかなり控えめ。
犯行の手口は「尖った長いピンで心臓を刺す」というもので殺人シーンの度に女性の胸が露わになりますが、なぜか全員ノーブラ…!!
主人公であるダンススクールの女性教師・キャンディスは生徒が殺されても厳しいレッスンを続けます。
ところがある日謎の男に自分自身がピンで刺し殺される夢をみる。
夢でみたのと全く同じ顔をした男を偶然発見したキャンディスはジョージと名乗るその男に近づき、その身辺を探ります。そして段々彼といい関係に…
また予知夢とかオカルト要素出てきたよ、近づいた男が犯人パターンっぽいなコレ…と思ってみてるとあら意外、
(以下ネタバレ)
なんと生徒を殺していたのは主人公であるキャンディス。
夢に出てきた男・ジョージは実は数年前にバイク事故でキャンディスを轢いた犯人でした。
ダンサーの夢を壊した憎い男に復讐するため、無実の罪を彼に着せようと恐ろしい犯行を繰り返していたキャンディス…
受け身にみえたヒロインが実は内に激しい復讐心を秘めた殺人鬼だった…というストーリーは非常に好みでした。
回りくどい復讐方法でそこまでするか??と思わなくもないけど、無関係な生徒を手にかけれたのは、主人公の心の中に若く未来ある生徒たちへの嫉妬心があったから…色々想像させてくれて意外に説得性を感じるストーリーです。
キャンディス役は「サンゲリア」で目玉グッシャーされてたオルガ・カルラトス。
終盤の演技は鬼気迫っててかなり良かったです。
主人公の部屋のベッドサイドが鏡張りだったり、若い頃の自分のポスターをでかでかと貼ってたり…「役者になりたかったナルシスト面」が強調されたような小道具も効いてると思いました。
非常に残念なのはミスリードが下手くそで犯人が途中で分かってしまうところ。
刑事さんが「ピンの情報は警察内に留めておく」と言ってた場面がやたら強調されてたので、後半の主人公の言動がどうみても犯人にしかみえませんでした…
きっちりどんでん返しとして成立させられていれば評価爆上がりだったんだけどなー。
映像面もセンスに欠けていて、せっかくのNYロケ、「サンゲリア」の冒頭はニューヨーク港からの景色がすごく綺麗に撮れてたのに、本作は外のシーンが非常に少なくこれといった特徴のない狭い室内の画ばかりだったのもイマイチ。
殺しのシーンでは電灯がチカチカ点滅する演出をやたら繰り返していましたが、緊迫感もなくクドく感じられました。
「フラッシュダンスやからフラッシュ(点滅)したろ!」ってなったんでしょうか。
そして本作の音楽はなんとプログレ界の重鎮、キース・エマーソンが担当しています。しかしこれがまた全く合ってなかった…
同じくエマーソンが音楽を手掛けたアルジェントの「インフェルノ」も曲単体はすごく好きだったけどマッチしてたかといわれると評価の分かれるところだと思います。
イタリアンホラーのアートな雰囲気とは相性がイマイチなのかもしれません。
何回もかかる武富士ダンスの曲、めっちゃ耳に残るんですけどね。
途中唐突に登場した目撃者の女の子は先日みた「墓地裏の家」に出てた子…!!
音捜査の専門家の人は「サンゲリア」にも出てた「ビヨンド」で死体に脳波計つけてた人…??
どっかで見たような顔がチラホラ。
ラストは「復讐やり遂げてやった」ヒロインにカタルシスと切なさが残り、過去に犯した罪の報いを受ける男の「運命から逃れられなかった感」…フルチらしい無常さ、寂寞感はあって、色々粗はあるけど嫌いじゃない、好みの作品ではありました。
とりあえず観れて満足です。