先月鑑賞した「組織」という作品で主人公の相棒役を演じていたジョー・ドン・ベイカーという俳優さんが気になって調べていたら、同年代のクライムアクション映画を発見。
1973年公開、監督は「ダーティ・ハリー」のドン・シーゲル、主演はウォルター・マッソー。
タランティーノのお気に入り作品でもあるらしく好きそうな映画かなーと思ってみたらドンピシャですごく面白かった!!
頭脳で勝負するタイプの主人公が活躍するアクション映画っていいなあ。
最後になって全体像が明かされるストーリー構成がお見事。脇役も含め奥行きを感じさせる登場人物たちが魅力的。
個人的には同じくウォルター・マッソー主演の「サブウェイ・パニック」よりもずっと刺さって、時代遅れオヤジの全てを賭けた生き残りバトルが胸熱。
「アルカトラズからの脱出」に通じるストイックさも感じて大変シビれる1本でありました。
◇◇◇
少人数チームで田舎の小さな銀行を襲撃、数千ドルの儲けで満足するケチな銀行強盗を続けていましたが、ある日襲った銀行で思わぬ反撃に遭ってしまいます。
命からがらアジトに帰り盗んだ金をあらためると75万ドルもの大金が…
なんとチャーリーたちが強奪したのはマフィアの隠し金。
警察、FBI、マフィアから追われる身となったチャーリーの下に冷酷な殺し屋・モリーが差し向けられますが…
平穏な田舎町の日常を映し出したオープニングクレジットから、銀行強盗という非日常の世界に一気になだれ込む冒頭から掴み抜群。
銀行の前にひょっこり現れた一台の車。

「足が悪いからちょっとの間ここに車停めてていい?」…中には老人と付き添いの女性が…
これが実は主人公&強盗仲間の妻で、保安官を騙して銀行入り口のすぐそばに逃走車両を設置することに成功したというわけなのですが、ウォルター・マッソーの愛嬌ある顔と老けメイクにこりゃ騙されるわーと納得してしまいます。
しかし騙したはずの保安官が「あの車盗難ナンバーじゃなかったっけ?」とふと思い出し道をUターン。
仲間と共に鮮やかな手つきで金を強奪したチャーリーですが、駆けつけた警察勢と鉢合わせになってしまいます。
近づいてきた保安官の頭を何の躊躇いもなく撃ち抜く奥さんにびっくり(笑)。
ボンネットが視界を遮るのも物ともせず、とにかくデカいアメ車が大暴れ。
チャーリーと妻、仕事仲間のハーマンの3人が命からがら警察の追っ手をばら撒き逃走。しかし実はこっそり負傷していた妻・ネイディーンは道中そっと息を引き取ってしまいます。
迷わず保安官に発砲するなど間違いなく悪人な主人公勢ですが、なぜか不快感なく見入ってしまう魅力的な人物造形。
生き残り仲間の1人・ハーマンは血気盛んな若者。(ダーティハリーのサソリ役、アンディ・ロビンソン)

ベトナム帰りの青年らしく、チャーリーが死んだ妻の分の取り分を主張したのを「それでいい」とあっさり引き下がるなど、意外にフェアな性格。
そして元曲芸パイロットの主人公・チャーリーは、どこか哀愁漂う〝生き残った老いぼれオヤジ〟。

飛行機スタントの危険な仕事を引退し、農薬散布の仕事をはじめたら農業機具が一気に台頭。
機械に追いやられた失業者、厳しい競争世界を生き抜こうとするアウトロー…苦味ある人生が観客にも伝わってきて思わず肩入れしながらみてしまいます。
盗難車と共に妻の死体を葬る場面の切なさ、結婚指輪を2本指につけた姿など、随所で奥さんへの深い愛情を感じるのも人間味があってよかったです。
しかし感傷に浸る間もなくドラマは大きく展開。
生き残ったチャーリーとハーマンがアジトに戻り金を数えるとお札は100ドル札ばかり…盗んだ金が75万ドルもの大金だったことが発覚。
大喜びするハーマンとは裏腹に、ベテラン強盗のチャーリーは青い顔。
「マフィアの金を掠めたから奴らは死ぬまで追ってくる、金は当面使えない」とハーマンに釘を刺します。
ここで若者&老いぼれバディの関係性に緊張感が走るのが面白く、思慮が浅く銃に頼りがちな若者ハーマンと、用心深くベテランの経験値でピンチを切り抜けようとする主人公チャーリーが対照的。
ニュースで妻の死体が発見されたことを知ると、カルテから身バレするのを防ごうと歯科医に潜入するチャーリー。
偽造パスポートを取得しようとするなど、どうにか突破口を開こうとする主人公の苦心にハラハラさせられます。(しかしこれが後のとんでもない伏線に…)
一方裏でマフィアの金を預かっていた銀行関係者は大慌て。
なぜ裏金を隠していた時期に都合よく強盗が現れたのか…内部に裏切り者がいたのではと疑心暗鬼に。
殺し屋・モリーが実行犯の後を追うよう組織から放たれます。

ここでジョー・ドン・ベイカー演じる不遜な殺し屋が登場。
スーツにカウボーイブーツ&ハットという奇妙な出立ち、話が通じそうにみえて目が全く笑ってないのがおっかない(笑)。
躊躇いなく人を殺すし、車椅子の老人を突き飛ばすし、黒人一家から容赦なく車を奪い取る…いい奴・悪い奴・汚ねえ奴でいったら間違いなく〝悪い奴〟なのですが、時折垣間見せる人間味がユーモラス。
「野生牛牧場」というトンでもないネーミングセンスの娼館に泊まることになったモリーですが、ビキニ美女たちから猛アタックを受けるも「金で寝る女は嫌」と一蹴。
潔癖な男なのかと思いきや、調査中に出会ったパスポート偽造女性とは即ベッドイン。もしかして熟女好き??
寝ても寝なくてもとりあえず女性のケツはガン見、お尻フェチなのは伝わってきました(笑)。
チャーリーがあちこちで逃走経路を整えている中、その足取りを掴んだモリーがチャーリーたちのアジトにやって来ます。
軽率なハーマンはうっかり扉を開けてしまい、惨たらしく殴られた末死亡。
ハーマンの死体を発見したチャーリーは、マフィアとコネのある銀行頭取に電話をかけ「金を全額返すから見逃してほしい」と取引を持ちかけますが…
(※ここからどんでん返しありネタバレ)
小型飛行機に乗って取引場所に現れたチャーリー。
策士・チャーリーは頭取とグルだったかのように見せかけ、その様子をモリーに目撃させます。
勘違いしたモリーは頭取を車で轢き殺し、小型飛行機で飛び立とうとするチャーリーを猛追。

廃車置き場というロケーション、滑走路のない悪路で飛び立とうとしてもなかなか飛べないのにヤキモキ。
「カプリコン・1」みたいな超クライマックスシーンが来るのかと思ったら結局飛ばないのかよ(笑)。
でも車に負けじと小回りのきく小型飛行機の機動が凄まじい。
狭いところを延々ぐるぐる回って追いかけっこ、「ミッション・インポッシブル」に比べたら遥かに地味な映像ですが、緊迫感はこっちがダンチ!!
激闘のすえ、車に追突された飛行機はぐるっと回転しまさかのでんぐり返り。
逆さまの飛行機から出られなくなったチャーリーは金の居所を吐くようモリーに迫られます。
「そこの青いシボレーに置いてある」…チャーリーの言葉に従ってモリーがトランクを開けると仕掛けられていた爆弾がドカン!!
見事殺し屋を返り討ちにしたチャーリー。飛行機内に隠していたお金を持って、ちゃっかり逃走してジ・エンド。
最後までみると、主人公がいかに十重二十重の策を練っていたかが明らかになり、その用意周到さに惚れ惚れしてしまいます。
銃器店の車椅子のおっちゃんに「もし大金を得たらどこに隠すか?」と身バレするような相談をしていたのもわざとで、あえてモリーに足跡を辿らせてハーマンを始末させたのね…
ハナから自分がパスポートを使うつもりはなく、ハーマンの分を注文することで免許証から居所をモリーに知らせた鮮やかな手口。
そして歯医者に行った際、妻のカルテを処分するだけでなくハーマンと自分のカルテを入れ替えていたチャーリー。
これも最後にハーマンの死体(歯形)を自分の死体だったと偽造するための策略。
途中でチャーリーの結婚指輪が2本から1本になっていて妻の指輪を小指に付けているだけになっていましたが、自分の指輪と腕時計をハーマンの死体に付けておくなど、本当に抜け目がありません。

ハーマンの利用された感が強くてちょっと気の毒に思ってしまいましたが…
軽率だから切り捨てられたに違いないけど、主人公は一体いつからどこまで仕組んでいたんだろうと思うと、なかなか非情で恐ろしい男であります。
最後に見せた小型飛行機のでんぐり返りまで見事でしたが、大ピンチのようにみせかけて、元曲芸飛行士の主人公には何てことのない芸当だったというオチ。
これまで生きて来た老いぼれ男のスキルが身を結び、敵に一泡吹かせる展開には清々しい気持ちが残ります。
ずっと密やかに入念に準備されて来たものが静かに勝利する…「アルカトラズからの脱出」にも似たようなものを感じますが、個人的には超胸熱で大好物でありました。
主人公が大変魅力的ながら、ほんの少ししか映らない脇キャラクターもそれぞれ印象的。
裏切り者と疑われて自殺する銀行の支店長は、気が弱そうな人でちょっぴりお気の毒。
頭取はモリーにやられる最期までいまいち冴えない男だったけど、子供のブランコを押してやる紳士な一面もあってオモロかったです。

一応本人もマフィアの上層部!?みたいだけど、組織の一端に過ぎず飼われる牛と同じ。サラリーマン然としているのが妙に世知辛かったです。
そんな頭取の愛人秘書がチャーリーと唐突にベッドインするのにはびっくり。退屈な男とは一味違う気骨あるジジイに惹かれたのかしら…急にモテるウォルター・マッソーに笑いました。
そしてなにげに1番強烈だったのは偽造パスポート屋の女性。

チャーリーにはキャンディー1個も出し渋ったのに、後からやって来た殺し屋・モリーには迷わずビールも振る舞おうとする対応の違い(笑)。
舐めてもいい相手と、暴力的な男の匂いをすぐに嗅ぎ分ける食えない女だったということでしょうか。
モリーにビンタされた後満更でもない様子でベッドイン、複雑な女性の心理を垣間見たようでした。
その他、隠し部屋で裏賭博をやっている中華料理屋、トレーラーハウス近くに住む噂好きおばあちゃんの生き生きした様子など、妙にリアルな登場人物たちがひたすら愉快で、牧歌的ムードと殺伐ムードの同居が素晴らしかったです。
原題はCharley Varrick。主人公の名前の入った農薬散布会社のスーツが燃えるエンドクレジットまでお洒落。
最後にはビジネスマンスーツに身を包み生き残りのため過去の自分を完全に消すことになったチャーリーですが、喪失感よりも主人公が己の全てを賭けて勝利したという爽快感、やりやがったという敬意の気持ちの方が後に残りました。
最後の最後でなかなか掛からないエンジンにはドキドキ。
人生順風満帆なことなんてないぞ!!と終わりまで気を抜かずにいさせるところも胸に残りました。
ラロ・シフリンの音楽がオープニングから絶好調、緩急をつけてアクションを大盛り上げ。
動的シーンで流れる曲の旋律はELPの「タルカス」にちょっと似ていると思いました。
〝突破口〟というワードは漫画の「カイジ」でよく出てきたよなーとふと思い出しましたが、主人公がある種のギャンブラーというか、暴力でも運否天賦でもなく盤石の選択で戦っていたところに意外性があり、とてもカッコよかったです。
アクション1つ1つ、人物1人ひとりが印象的で、反骨精神溢れる主人公からしっかりと人間ドラマが感じられる。楽しくも大変味わい深い1本でした。
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