ブライアン・デ・パルマ監督の73年のサスペンススリラーが期間限定公開。
なんて渋いチョイス、同じデ・パルマなら「キャリー」か「フューリー」か「殺しのドレス」が劇場で観てみたかったなーと思いつつ、改めてみたらこちらも面白かった…!!
ヒッチコックや以降のデ・パルマ作品との共通点をあれこれ考えるのも楽しく、ストーリーより映像が観ていてとにかく面白い。
地味ながらキャストの面々も皆ハマり役で魅力的でした。
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テレビ番組のクイズショーから始まるオープニング。
覗き見している人を覗き見ているテレビの聴衆…をさらに覗き見している私たち…と虚構に虚構を重ねた三重構造がユニークで冒頭から一気に引き込まれます。
ショーに出演していたモデルのダニエルは共演したエキストラの男性と一夜を共にすることに…
ワンナイトラブでいい思いした男性が痛い目に遭ってしまうわけですが、この黒人男性、メンヘラな彼女のために薬買いに行ってくれるわ、バースデイケーキまで用意してくれるわで、めっちゃ優しい。
突然殺されて気の毒でしかありません。
バーナード・ハーマンの音楽が鳴り響くまさに「サイコ」な殺人シーンは、口を刺されたシルエットの画がショッキング。今みても迫力がありました。
ここから主人公がバトンタッチし、お向かいさんの女性・記者のグレースが偶然殺人現場を目撃し、真相を追って行きます。
「殺しのドレス」のようなヒロイン交代劇ですが、場面転換が上手い。
瀕死の被害者とそれをどうすることも出来ない目撃者の絶望感…スプリットスクリーンの映像も抜群に効果的。
昨年みた「VORTEX/ボルテックス」は全編画面2分割にしてましたが自分はあまりしっくり来ず、ここぞという時に効果的に使っているデ・パルマの映像がやっぱりいいなあと思いました。
グレースは怪しいダニエルを独自に調査しますが、実はダニエルがシャム双生児だったことが発覚。
穏やかで感受性豊かなダニエルと激しい気性のドミニクの姉妹は、ダニエルが主治医のブルトンと恋に落ちたのをきっかけに関係がギクシャク。
ブルトンは姉妹の分離手術に挑みましたが、結果ドミニクは死亡。
ダニエルの精神はその後不安定になり、薬を服用しないと、肉体的接触を持った男性を切りつけてしまうようになってしまったのでした…
妹の意識が乗り移ったのか、妹に対する罪悪感が別人格を生んだのか…ここら辺が分かりにくくてドラマパートが薄いのは残念。
サイコサスペンスにした方が面白かった気もしますが、ダニエルの手術跡に触れるとなぜかグレースは姉妹の過去の記憶を覗き見ることに…
過去の白黒映像は「サイレントヒル」のような不気味さ、双子の妹がいつのまにかグレースに代わっている不条理な悪夢が恐ろしい。
医師のいいなりにならなかった気難しい妹と、束縛されない自由な女グレースの2人が重なり合う…全体的に抑圧された女性のドラマを感じさせるストーリーでした。
妹そんなに社会不適合やったんかな…姉の方がめっちゃ不安定な感じして正常な人格っていうのどうなんやろ…と思ってしまいましたが…
ソファから死体の臭いしそう…なんて余計なこと考えつつ、打ち捨てられた黒人男性の死体が気の毒。催眠は永遠に解けないし、待っていても犯人はもう来ない…苦味の残るエンディングもデ・パルマらしい。
いつまでもソファを見守り続けるチャールズ・ダーニングの姿が妙にシュールで余韻が残りました。
シネマート新宿さんで鑑賞、500円でリーフレットが販売していました。
自分はいつもA4のクリアファイルを持ち歩いてますが、今回のリーフレットはB2サイズとデカくてびっくり。
ビニール袋を大っきいカバンに入れて持ち帰ったら上がちょっぴり折れてしまったという(汗)。
でもこの昔のポスターのビジュアル、やっぱりカッコいいですね。
シネマートさんはヘルレイザー2・3・4も上映していて観たかったのですが、時間がなく断念。パンフだけ買わせてもらいました。
初期のデ・パルマを堪能できてとても楽しかったです。