どうながの映画読書ブログ

~自由気ままに好きなものを語る~

「月の輝く夜に」…あっけらかんイタリアンファミリーがみせる謎の生命力

1987年公開、ノーマン・ジュイスン監督によるラブコメディ。

シェール×ニコラス・ケイジの濃すぎるカップルもさることながらほんのちょっとしか出ない脇役もやたら個性の強い人ばかり…フリーダムなイタリア一行に爆笑しながら観てしまいます。

ニューヨークに住む37歳のロレッタ(シェール)はある日幼馴染のジョニーからプロポーズされます。

愛情がないのに妥協してOKしてしまうロレッタ。

「式はどうするの?」 
「お袋が危篤だ。死んだら挙げよう。」
「いつ死ぬの?」

めっちゃ不謹慎(笑)。

男の方も指輪の存在すら忘れててやる気あんのかいって感じのゆるゆるプロポーズ。

おまけにロレッタは「あれやらないと縁起悪い、悪運を呼ぶ」だの言い出して完全に迷惑なスピリチュアルさん…

…かと思いきや実は前夫を事故で亡くしているロレッタ。「思うような人生じゃなかった」「色々失って守りに入った」そんな喪失感を感じさせて切なかったりもします。

危篤の母を看取りにイタリアに発ったジョニーは弟のロニーを式に招待するようにロレッタに頼みます。

その弟役がニコラス・ケイジですが…

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↑この貫禄で23歳とか嘘やろ…

兄貴の話を聞くやいなや荒ぶるロニー。
5年前ジョニーがパンを注文してる時にスライサーで自分の手を切ってしまい片手が義手に。以来兄とは絶交してたのだとか。

気の毒だけどそれ自分のうっかりミスで兄貴のせいじゃなくね??…と思うけどニコラス・ケイジに「理屈じゃねえ!」と凄まれると何も言い返せません(笑)。

お互い失ったもの同士で気が合ったのかシチリア人の稲妻ってヤツなのか、ロレッタとロニーは恋に落ちてしまいます。

普通に考えたら不倫略奪愛どーなんって話ですが、2人リンカーンセンターにオペラ聴きに行く場面が人生で切り取られた良い思い出の瞬間って感じでとにかく美しい。

待ち合わせでなかなかお互いに気付かない2人にドキドキ、ステージじゃなくて好きな女性をじーっとみるニコラス・ケイジの視線がアツい…

冒頭では全く色艶のなかったシェールが白髪染めしたとたん一気に若返り、美女に変身するのもロマンチックです。

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リトルイタリーに住むロレッタは両親、祖父、伯父伯母と同居してて3世帯ファミリー、こういうところがイタリア人らしいというべきなのか、このファミリーの様相が本作の肝だと思われます。

ロレッタのロマンスと並行して描かれるロレッタの父母の夫婦関係。

実はお父さんは別の女性と浮気しててそれに気付いてるお母さんは1人傷ついている…

二世帯で浮気してんのかよ!?と恋多きイタリア人にドン引きですが、お母さんは最終的にお父さんを許す。

この結末も今風の映画と全く違ってて、お母さん浮気し返して別の良さげな男性とくっつけば良かったのにね…って思っちゃいますが、「教会で懺悔してきてね」で仲直りするっていう…

明るいおちゃらけ映画のようでいて老いや喪失を描いた作品であるのは確かで、大人になって観るとこれも懺悔系映画というか年取ったら許されたい系映画なのかなと思いました。

なぜ男は女を追いかけるのか??の答え、「死が怖いから」は真理ではないかと思いました。
若い女性追っかけちゃう大学教授が「相手の目に映る若かった頃の理想の自分をみる」って台詞がなんか切ない。

映画全編とにかく食べてるシーンが多く、エスプレッソ、ワイン、ステーキ、トースト…地味に飯テロ映画でもあります。

家族皆揃ってご飯食べて、それでなんか全部許される…

自分じゃどうしようもできない性とか親から受け継いだものに悩まされることってあって、「ゴッドファーザー」とかだとその暗い面が描かれてると思いますが、この映画は「俺たちはイタリア人だ!」(ドンッ!!)って感じでここまで来るといっそ清々しい気持ちに(笑)。

人間業深くて傷つくことも沢山あるけど愛や幸せを感じる瞬間があればそれでいいのかも…登場人物からほとばしる強い生命力に圧倒されてしまいます。

犬5匹連れてるおじいちゃんかわいいと思ってたら最後にビシッと決めてくれて1番カッコいいのがギャップ萌え。

ツッコミどころは山程あるのになぜか不思議な完成度でみると元気のでる作品でした。