どうながの映画読書ブログ

~自由気ままに好きなものを語る~

「華麗なる殺人」…イタリア製デスゲームはオシャレな男女の殺し愛

「未来帝国ローマ」の特典映像にてルチオ・フルチが自分の親友だったと語っていたエリオ・ペトリ監督。

フルチが27年生まれ、ペトリが29年生まれと同時代を生きた映画人で、そんなペトリが65年に撮って時代を先駆していたというSFアクションがあるそうな。

製作はカルロ・ポンティ、主演はマルチェロ・マストロヤンニウルスラ・アンドレスと豪華。

近未来殺人スポーツをポップでお洒落に描いたSFアクション!!…ってどんな映画なんだ(笑)。

 

2079年。道徳の向上と暴力抑制のため政府主導で〝人間狩り〟のゲームが催されるようになっていました。

・ハンターと標的の役割は1回毎に交代
・10回競技に勝つと100万ドルの賞金
・ハンター役には標的の情報が与えられるが、標的役は誰がハンターなのか知らされないまま日常を送る

色々ルールがありますが、雰囲気はTV番組の「逃走中」みたいですね。

標的役として追われていたキャロリン(ウルスラ・アンドレス)はハンターの裏をかき反撃に出ることに成功。

銃を仕込んだシルバーのブラで攻撃…!!(パン!パン!と片乳ずつ発砲するのがよい) 

 

10回目の優勝が目前になったキャロリン。

ハンター抽選機が次の対戦相手に選んだのはイタリアの中年男マルチェロ・ポレッティ(マストロヤンニ)。

愛人と同棲中のポレッティはカトリックの国イタリアではなかなか離婚できず、6年かけて最近ようやく離婚。慰謝料を払うため金欠という訳ありの人物でした。

ハンター役としてポレッティを追うことになったキャロリンは身分を隠して彼に近づきます。
しかし2人はお互い惹かれるようになってしまって…

デスゲームそっちのけで男女の恋愛が始まっちゃうイタリア、逞しすぎる(笑)。

けれど60年代のポップアートをみているようなオサレな世界観がストーリーにマッチ。

街も建物も特撮を使っているわけではないのに、独創性溢れるインテリアと衣装だけで近未来を演出できているのが凄いです。

ポレッティの唯一の癒しであるロボット犬・トマソがお手製AIBOみたいだったり、海辺で日没をみて皆で涙を流す太陽教とやらがヒッピーみたいだったり、リアルを感じさせるところもチラホラ。

ごく普通の日常を送る人々に混じって男女が撃ち合いながら追いかけっこする画には狂ったような陽気さがあります。

 

優勝目前のキャロリンにはアメリカのテレビ局が中継の話を持ちかけてきます。

殺人中にスポンサー付きCMを入れれば大金が入る!!

「デスレース2000」や「バトルランナー」のような社会風刺の効いたエピソードも交じってきます。

絶景をバックに殺し合う中、商品名を声高に叫びながら踊るCMのバックダンサーたち。

なんだろう、大晦日のガキ使をみているような妙にシュールな笑いは…

クライマックスはややグダグダ気味で、化かし合いを繰り返しつつ元妻と愛人も入り混じっての銃撃戦に。

世界遺産のような場所で西川貴教みたいな衣装を着た美女が追っかけてくる、これまたシュールな画。

キャロリンに手を引かれポレッティが命からがら乗り込んだ飛行機はなんと結婚専用機。

「結婚はもうコリゴリ」と頑なに抵抗していた男が再びお縄になってしまうのでした…

 

マンハントと男女の愛憎劇、2人が恋に落ちるキッカケとか何も描かれてないのでドラマ性があるわけではないけれど、「Mr.&Mrs. スミス」とかよりこっちの方がオモロいやん、と思いました。

「華麗なる殺人」という邦題がビミョーな気がしますが「華麗なる賭け」から取ったのかな。

この監督早くに亡くなられたようで寡作なのが残念です。

昔のイタリアの景色、オシャレな衣装と音楽、出演者は美男美女ばかり…眼福な楽しい作品でありつつ、独特の狂気感もあって魅入られました。