カルロ・ポンティ製作、セルジオ・マルチーノ監督による1973年公開のイタリア製ジャーロ。
スラッシャー映画の先駆的存在と呼ばれ、タランティーノのお気に入り作品でもあるそう。
後半3分の1が爆上がりで面白かったです…!!
イタリアの学生街で連続殺人が発生。警察は現場で発見されたスカーフの目撃情報を求めます。
亡くなる前の犠牲者を目撃していたダニエラは怪しい人物に付け狙われ、遊びも兼ねて友人らとともに田舎の別荘に向かいますが、密かに犯人が後を追っていました…
最初の犠牲者はカーセックスに興じていたカップル。性に奔放な若者が真っ先に殺されるのスラッシャーあるある。
女優さんが美人で殺人の幕開けとして華があるのも王道な感じがします。
次の犠牲者はビッチっぽい雰囲気のキャロル。
ヒッピーが集うフリーセックスの溜まり場から帰るところをメッタ刺し。
薄暗い沼地で泥水に顔を押し付けられて殺されるのがアルジェントっぽいいたぶり方。
さらにスカーフを売った露天商の男や現場付近にいた男も巻き込まれて殺されていきます。
男の死体はポイ捨てなのに女性の死体は手足をバラバラに切断する犯人、異常な執念を感じさせます。
本作の原題はTORSO(胴体)、犯人の過去と思しき「西洋人形の映像」が度々インサートされるのも印象的です。
そんな中別荘に出掛けた4人の女性たち。
富豪の姪ダニエラ、スタイル抜群の黒人女性ウルスラ、そのウルスラといい感じのカティア。
そしてもう1人がアメリカからやって来た女性ジェーン(「歓びの毒牙」のスージー・ケンドール)。
皆よりちょっと年上で落ち着いた雰囲気のジェーンですが、階段から転落して足を捻挫。
鎮痛剤を飲んで爆睡、翌朝目を覚ますと3人の仲間が惨殺されていた…!!(ここめっちゃ怖い)
死体をバラバラにするため戻ってくる犯人、存在を気付かれていないジェーンは声を押し殺して自分の痕跡を消しながら屋敷に隠れます。
しかしその後犯人が偶発的に部屋に鍵をかけてしまい隔絶した古屋敷に1人取り残されてしまいます。
ラスト30分はすごい緊迫感、ハンデを負ったヒロインの孤立奮闘に手に汗握ります。
ドア越しに細工を凝らし鍵を手に入れたと思った矢先、再び戻ってきた犯人と対面、その正体は…
(以下ネタバレ)
犯人は大学の美術講師・フランツでした。
子供の頃人形を拾おうとして崖から転落死した友人を目撃して以来性的不能に。
そのことを生徒のフローとキャロルに脅され2人を殺害、その後は目撃者と思しき人間を場当たり的に殺していったのでした。
回想シーンでも亡くなったお友達とそういう関係だったっぽいことが示唆されていたり、冒頭に出てきた絵画・聖セバスティアヌスはゲイのアイコンだったり…とおそらく同性愛者だったのかな…と察せられますが伏線みたいなのも皆無だしドラマが薄いのが残念。
思わせぶりなストーカー男についても丸投げ、姪の身体をジト目でみつめる叔父さんは何だったんだ!?と色々気になりましたが(笑)。
思わぬ犯人と対峙するジェーンでしたが、捻挫の治療の際に屋敷を訪れていた医者が異変を察知して助けにやって来ます。
飛び蹴りも交えての突然の格闘戦(笑)、犯人は崖下に落ちて破滅。
最後は生き残った2人がいい感じになって去っていくあっけらかんなハッピーエンド。カラッとしててこういうのもイタリアらしいですね。
殺人シーンはグロは控えめなもののカット割が細かく工夫されていて、ピアノの旋律がメインの音楽も緊迫感を高めてくれて耳に残ります。
タランティーノがこの作品を好きな理由、足を痛めたヒロインが悶えながら逃げ惑うの、足フェチの彼には堪らなかったのではないでしょうか。
学生街も別荘のある田舎町もどこやねん!!って位の絶景のオンパレード、美女の裸体もてんこ盛りでそれだけでも眼福。
「サスペリア2」や「マッキラー」などと比べるとドラマ面は残念ですが、ジャーロをみた…!!という満足感が残る作品でした。