86年製作、「影なき淫獣」のセルジオ・マルチーノ監督がメガホンを撮ったSFアクション。
ジャケ写はマッドマックス亜流の雰囲気ですが、「ロボコップ」や「ユニバーサル・ソルジャー」を先取りしたかのような内容。
後半アクションの盛り上がりアリ、人間ドラマもちょいアリで中々の良作でありました。
近未来のアメリカ。環境保護活動家モズリー博士の暗殺ミッションを与えられた片腕サイボーグのパコ。
しかし任務の途中で突然自我に目覚めアリゾナに逃走。逃亡先のモーテルで追っ手たちと戦うことになります…
世界観やストーリーが頭に入って来にくい序盤。
どうやら環境汚染が進んだ未来のようで、エコロジストと敵対するハイテク会社がサイボーグを開発したようです。
ハイテク会社のボス(ジョン・サクソン)が証拠隠滅のためにパコを始末しようと追い、事件の犯人を探すFBIも後を追いかけてきます。
最初の逃走シーンでは車をも溶かす酸性雨の中をドライブ…!!(急にホラーな描写)
偶然立ち寄ったモーテルで身を休めるパコでしたが、店を1人で切り盛りするリンダという女性と知り合います。
「1週間薪割りしてくれたらタダで泊めてあげるわよ」「もう終わった」
漫画みたいな描写やな(笑)。
なぜかこのモーテル、アームレスリング好きのトラック運転手たちの憩いの場でもあり、男たちは夜な夜な腕相撲に興じていました。
挑発されたパコも勝負に乗りますが圧勝。そんな謎めいたパコに急速に惹かれていくリンダ。
しかしパコは自分の機械化した腕をみせリンダに秘密を打ち明けます。
「事故に遭って手足を失い入院していたが気がつくと暗殺をプログラムされていた。
すんでところで心の制御がきいて命令に抗ったが、自分はもう人間じゃないのかもしれない…」
そんなパコをリンダは優しく受け止めます。
パコが元々どんな人間だったのか、なんのトリガーで自我がどれだけ戻ったのか…この辺がロボコップやユニソルと違って描写に欠けていて分かりにくいのが難点。
ですが、刺客が追ってやって来て後半は怒涛のアクションが展開します。
実は暗殺者コンビだったモーテルに来たバカップル。
ビニールパンツを履いた女性の方は「ブレードランナー」のダリル・ハンナを思わせる大立ち回りをみせます。(あんな名作と比べたら怒られそうww)
メカ生首になっても威勢よく捨て台詞を吐く散り様がカッコ良すぎる…!!
橋を舞台にしたトラックでのアクションなど低予算ながら健闘していて良い意味で90年代ハリウッド風味。
ですが敵を倒すのに「鋼鉄の腕」で相手の頭部にミシッと力入れるところや、敵の心臓を抜き取ったりするところは急にイタリア風味であります。
ラスト黒幕のジョン・サクソンを倒し、リンダがそこに駆け寄りますが衝撃の告白が。
(以下ネタバレ)
耳を損傷した結果、頭部まで機械だったことが判明したパコ。
タイトル「片腕サイボーグ」(Hands of Steel)がとんだミスリードで、なんと全身サイボーグだったのですね…
「パコなんて人間は一度も存在していなかったかもしれない」…という悲しすぎる主人公の呟きとともにエンドロールへ突入。
スカッとしたアクションで終わるのかと思いきや人間と機械の未来を憂いて終わる、「エクスマキナ」みたいな余韻残してく驚愕のエンド。
パコめっちゃ切ないやん…
ワイルド系でありつつ繊細さをしっかり感じさせる主人公も、芯が強そうな涼しげな目元美人のヒロインも共に好印象。
色々パクっているようで実は色々先取りしていたのかも!?
世界観が掴みづらいのが残念ですが、B級アクションとしては充分楽しめる作品でした。