フルチが「地獄の門」と「ビヨンド」の間に撮った81年の作品「黒猫」が初Blu-ray化。
「時計仕掛けのオレンジ」のパトリック・マギーと「4匹の蝿」のミムジー・ファーマーが主演、脇はフルチ作品の常連が固めています。
ゴア描写は少なく思った以上に静かな作品でしたが、物悲しさ漂うジャッロになっていて充分楽しめました。
人々の奇怪な死が続くイギリスの小村。
村を訪れたカメラマンの女性・ジルは村人から忌み嫌われている霊媒師・マイルズの下を尋ねます。
気性の荒い黒猫を飼っているマイルズ、事件現場でもこの黒猫の姿が見られていました。
殺人猫が人を殺めているのか、マイルズが猫を使って人を殺しているのか…ジルは疑いますが…
猫現れるところに死あり…
ボート小屋でイチャイチャしてた男女は鍵を猫に奪われて閉じ込められて酸欠で死亡。そんな密閉状態になるか??とツッコミたくなりましたが、苦悶を想像させるイヤーな死に様ですね。
お母さんが焼死する場面が1番グロテスクで迫力がありました。
行く先々で死のトラップを設置していく猫ちゃんは名演技。撮影で指示通り動いてもらうの大変だっただろうなーと労苦が想像されつつ、可愛らしく見えてしまって恐怖度は低かったです(笑)。
それよりも光るのは偏屈ジーサンの演技。
暗い屋敷に独り住まい、いかにも付き合いにくそうな人のオーラが出ていてハマり役でした。
マイルズが超能力で猫を操っていたのかと思いきや、彼の疎外感や怒りが猫に乗り移って殺人を犯してしまった模様。最後には猫の方が力を持って制御できなくなってしまった…孤独な男の精神崩壊を描いたようなシンプルなお話だけど味わいがありました。
エドガー・アラン・ポーの原作は猫を使って人を殺す云々のストーリーは皆無で「やってはいけないことをやってみたくなる」屈折した人の精神が猫への暴力に至るという内容。
飼い主が煩わしくなった猫を殺すところはトレースされていてグロくせずにゴシックホラーな見せ方になっていてよかったです。
フルチの過去作からの引用(再利用)も見受けられ、ヒロインがコウモリに襲われるシーンは「幻想殺人」、壁に埋められるクライマックスは「ザ・サイキック」が重なります。
昨年みた「ザ・サイキック」はオチも含めておおーっとなったのですが、そもそもこれもエドガー・アラン・ポーからだったのね…(金田一少年の”放課後の魔術師”とかも元を辿ればそうなのかも、古典なんですねえ)
村から孤立してる爺さんの姿は「マッキラー」のような寂寞感もあり、グロがなくてもフルチらしさが感じられる。
ピノ・ドナジオの音楽も含め物悲しい雰囲気で個人的には好きな作品でした。