どうながの映画読書ブログ

~自由気ままに好きなものを語る~

「ドクター・ブッチャー」…ゾンビと食人族とイアン・マッカロック

映画「サンゲリア」で主演を務めるイギリス人俳優、イアン・マッカロック。

特典映像などで披露されるエピソードでは気難しく撮影時には他の出演者と打ち解けられず孤立していたそう。

時を経て作品が再評価されてファンイベントなどに呼ばれても終始しかめっ面。

義理の親戚は議員で映画を検閲する仕事に関わっていたのだとか、ご本人もイギリスの劇団出身でプライドが高そう…ホラーというジャンルを心の底から軽蔑したような発言を繰り返しています(笑)。

そういう見方の人もいるけどさー、折角出演した作品が愛されてるのにもうちょっと人生楽しんだらどーなん…とか思っちゃいますが、そんなイアン・マッカロックさんのもう1つの代表作がこの「ドクター・ブッチャー」です。

ニューヨークのとある病院では遺体の一部が盗まれる事件が頻発していました。

犯行現場が取り押さえられるも犯人の職員は投身自殺、「キートー」という謎の言葉を残して息絶えてしまいます。

調査の結果犯人の出身地がモルッカ諸島だと判明し、事件の謎を追う男女4人は秘島に向かいますが…

 

サンゲリア」によく似たプロットでマッカロック演じるキャラクターの名前もピーターと完全に一致。

「島には食人文化があるけど死体しか食べない」と説明されていたのにジャングルに入ると襲われ次々と丸かじりにされていく一行。

オーガニックパンツ一丁の原住民の姿はまさに「食人族」、しかしボディが薄くて野性味があまり感じられません(笑)。

仲間が食われて大ピンチの一行でしたが、そこにさらに謎のゾンビが出現し食人族たちは一気に退散…!!

↑「サンゲリア」のミミズゾンビを髣髴させるも顔しかペイントされてなくて手抜き加工!?やたら目力があってこれはこれで独特の雰囲気があります。

 

島の調査には現地に住むオブレロ博士の協力が得られるはずでしたが、部下のガイドはなぜか違う島を案内。

タイトル:ドクター・ブッチャー……博士が黒幕ってことか…(全力のネタバレ)

なんとオブレロ博士は生きた人間の脳を死体の脳と入れ換えてゾンビを生産し、永遠の命の研究をしていたのでした。

じゃあそもそも冒頭の事件は何の話やったの??
たまたまNYに出稼ぎに来てた食人族さんがお腹すいて遺体食べちゃってただけ??

様々な疑問が頭を駆け巡りますが、食人族とゾンビが入り混ざって三つ巴の戦いになる…!!

ゾンビは人を食べないけど食人族がゾンビを食べる…!!

 

短い上映時間にマッドドクター、食人族、ゾンビと詰め込みすぎな脚本ですが、そんな内容のおかげでグロシーンは出血大サービス。

ボートのモーターでゾンビの頭部を破壊する場面や博士が行う頭部切開のオペシーンなどかなり力が入っています。

中でも出色なのは「仲間が生きてた!」と駆け寄ったら「バーサンになってた!」…からの「頭皮カツラ被ったバーサンだった…!」のシーン、まさかの三段構えに予想がつかずギョッとなります。

 

マッカロック演じる主人公は嫌がる女性を強引に調査に同行させるわ、仲間が死んでもノーリアクションだわ、島に空き缶ポイ捨てするわとさりげなく嫌な奴(笑)。

対してヒロインの女優さんは全裸で巨大岩に張り付けられるなど本筋と全く関係のないところで体を張りまくっています。

雰囲気のあるロケ地は一部「サンゲリア」と同じ場所を使用。燃やした教会をそっくり建て直すというトレースっぷり。

↑ラストシーン、本物はどっちだ!?

イタリアで制作された89分版(ゾンビ・ホロコースト)とセールスのため勝手に編集された82分版(ドクター・ブッチャー)の2バージョンが存在していて、テンポよく楽しいのは82分版の方ですがファミコン音楽みたいなやたら軽いBGMに脱力、思わず笑みがこぼれます。

「僕が出演した中で最もバカバカしい作品だ」…マッカロックさんは全く気に入ってないようですが自分は大好きです。