「サンゲリア」のイアン・マッカロック主演のマカロニホラーということで気になっていた作品のBlu-rayを鑑賞しました。
監督は「サイコファイル」などでアルジェントともタッグを組んでいるルイジ・コッツィ、音楽はゴブリンが担当。
SFホラーかと思ったら予想の遥か斜めを行く作品でめちゃくちゃ面白かったです…!!
ある日NYに辿り着いた無人の漂流船。
調査員たちが乗船するとコーヒーと書かれた積荷の中から奇妙な緑色の卵が発見されます。
今にも孵化しそうな卵がいきなり破裂、さらにはその飛沫を浴びた人たちの内臓が派手に破裂していきます。
探索で唯一生き残ったアラス警部補(マリノ・マッセ)は米軍に呼び出され女性大佐ホームズ(ルイーズ・マーロー)とともに調査に参加することに。
解析の結果卵は未知のバクテリアだと判明、ホームズ大佐は火星探査から帰還した宇宙飛行士の話を思い出し、彼らのうち誰かが卵を持ち込んだのでは…と推理します。
ホームズとアラスは元宇宙飛行士ハバード(イアン・マッカロック)を訪ねることにしました。
火星で目撃した卵の話をするも精神錯乱だと見なされ誰にも信じてもらなかったハバードはやさぐれて隠居生活を送っていました。
ハバード曰く火星の洞窟で無数の卵を発見した際、虚脱状態に陥ったのは同僚のハミルトンだったとのこと。
しかしハミルトンは地球帰還後に不審死しており真相は確かめようもありません。
大佐たちはハバードを仲間に加え、積荷にあったコーヒーの出荷元である南米の工場を訪れることにします。
NYの空撮といい冒頭からめちゃくちゃサンゲリアな雰囲気ですが、「エイリアン」を彷彿とさせる卵が登場、そこからケインの胸食い破りシーンを大人数で再現したような謎の気前の良さ。
爆発→爆発という予想だにしない二段構えで、ただのパクリでは終わらないイタリア人の感性にただただ圧倒されます。
だけど宇宙に行くのかと思ったら行かなくて、また南米にクルーズするのかよ…!!と再びめっちゃサンゲリアな展開(笑)。
前半は特撮のセットもSF映画らしい雰囲気が出ており、推理要素のあるようなストーリーにもワクワクさせられます。
イアン・マッカロックは前半3分の1を過ぎてようやくの登場ですが、ツンデレな感じの女性大佐と、おちゃらけ男の警部補と生真面目で皮肉屋のハバードと…この3人組のバランスが良く冒険もののような楽しい雰囲気です。
南米に着くと大佐を始末しようと敵が刺客を送り込んできました。
直接殺せばいいのにエイリアンの卵を浴室に入れて閉じ込めるというやたら回りくどい暗殺方法。(このシーン異様に長い)
卵がもはや卵である必然性が全くなく、ただの時限爆弾です(笑)。
なんとか難を逃れた大佐たちは二手に分かれてコーヒー工場を調査しますが、大佐とアラン警部補は早々に敵に捕われ地下に連れて行かれます。
そこにいたのは死んだはずの宇宙飛行士・ハミルトン。
火星で怪物に心を支配されてしまったハミルトンは、密かに地球に持ち帰った卵を育て、成長した怪物・サイクロプスを地下に住まわせていました。
そしてそのサイクロプスが産んだ卵を世界各地にばら撒き地球を滅ぼそうと企んでいたのです。
怪物を目の前にした2人は心を支配され、アラン警部補はサイクロプスに身体を丸呑みにされてしまいます。
あわや大佐も…というときにハバードが現れサイクロプスの目に銃弾を命中させ、怪物と同調していたハミルトンは内臓を大破させながら散っていきます…
↑内臓爆発の際に毎回スローモーションになるのはペキンパー・リスペクト
「ハミルトンに罪はない、悪いのはあいつを操っていた怪物だ。」「本当のハミルトンは帰還できなかった、今も火星にいる。」…
夜空を見ながら語るシーンが切なく、こんなB級映画なのになぜか良い映画を観たという気分にさせてくれます。
映画の目玉であるエイリアン(サイクロプス)は予算が足りなかったようで動きがほとんどありませんでした。
しかし動かないことで逆に怪物が大物然として見え、不気味さが増していたように思います。
ゴブリンの音楽もカッコよく、卵の交信音のような独特なサウンドも映画を大いに盛り上げていました。
イアン・マッカロックは「サンゲリア」「ドクター・ブッチャー」に引き続き、内容が酷似したイタリアンホラーに立て続けに主演したことになります。
以前何かの特典映像で「フルチは役者の力量を均等にみせるのが上手だった」…と語られていたことがありましたが、意識して「サンゲリア」を観ると安定した演技力のマッカロックさんが皆をリードして全体的な演技のレベルを引き上げていてくれていたのだということが伝わってきます。
今作では〝挫折した男の心の再生〟みたいなドラマが感じられ、役柄的には他の2作と比べてもダントツでカッコよかったと思いました。
「エイリアン」便乗映画かと思いきや、宇宙には行かずなぜか南米に行くという「サンゲリア」60%みたいな内容。
所々潜入アクションもののような要素もあり、悪役は白スーツに美女の部下を侍らせていて007みたい…と何とも節操のない映画でしたが、何本も映画を観たような謎のお得感があり、めっちゃオモロかったです。