どうながの映画読書ブログ

~自由気ままに好きなものを語る~

「地獄の謝肉祭」…ランボーな食人族の愛・アムール

タランティーノの「イングロリアス・バスターズ」にてイタリア人に扮したブラピ一味のうちの1人が、アントニオ・マルゲリーティと名乗る場面がありました。

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こちらの元ネタでおられるアントニオ・マルゲリーティさん(映画監督としての芸名はアンソニー・M・ドーソン)が撮ったイタリアンホラー「地獄の謝肉祭」が最近めでたくBlu-ray化。

先月発売してからなぜかAmazonでも有料配信開始という謎の大盤振る舞いになっています。

ベトナム戦争から帰還した3人の兵士。人肉嗜好となるウイルスに感染してしまっていた彼らは都会にて食人鬼と化していく…

当時流行りのベトナム帰還兵もの?にゾンビものを足したようなストーリー。

Apocalypse Now(地獄の黙示録)から拝借したような原題:Apocalypse domaniからして逞しい商魂を感じずにいられません。

本作のユニークな点は「食人鬼化しても人肉嗜好以外においては本人の知性・元の人間性は保たれたまま」というところ。

死人ではない人間の彼らはダメージを負うと普通に痛がって倒れるし、知能もそのままなので過去の戦闘経験を活かし兵士として追っ手の警察と戦う…そういう意味では全くゾンビホラーしてない作品です。

ただ食肉場面、目潰しシーン、お腹に大穴が空くなどグロシーンはやたら気前がいい。

冒頭は戦地ベトナムのシーンからきっちりみせる意外に丁寧な作りとなっていました。

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帰国後仲間の1人であるチャールズ・ブコウスキー(某作家と同じ名前)が1人寂しそうに街を彷徨いヒッピーっぽい見た目の集団と争う場面は「ランボー」のような深い社会的メッセージを感じなくもない…??

戦争から帰ってきたら元の自分ではいられなくなった…居場所のない孤独感が飢餓感となっていった…一世一代の傑作ドラマになり得た可能性を僅かに感じさせつつ中身はB級映画

めちゃくちゃな場面転換に薄いキャラクター描写、チグハグなBGMと空っぽの頭でみられる安心の品質となっています。

謎のサービスシーンもいくつかあり、ブコウスキーが入った映画館にて目の前のカップルがいきなりコトを始める、主人公の隣の家の若い娘がパンツみせて誘惑してくる…と唐突すぎるこれらのシーンには唖然としてしまいます。

とっくにベトナムで感染してるはずの主人公だけなぜか発症が遅いのが謎ですが、性欲スイッチのオンが食人鬼化するトリガーにもみえました。

こういう設定も上手く掘り下げられてたら文学作品のような味わいがでた気もするのですが、よう分からん映画になってます(笑)。

ゾンビものあるあるな「食人鬼に噛まれたらその人も食人鬼化する」というルールは踏襲されていて、途中噛まれた病棟の看護師さんが仲間に加わるのは1人だけ場違いで浮いてました。ここはベトナム帰りの主人公勢3人だけにしとかないとダメだったでしょう。

後半彼らが下水道を逃走する場面はロケ地不足によるものなのか代わり映えのない画が続きやたら長い。

警官隊が盛大に火炎放射器を発射するけど、それ冒頭のベトナム戦争シーンで使ってたやつやん。

せっかく借りてきたモノが勿体無いから使いまわしてる…という終始ぬぐいきれない低予算感は逆に可愛らしく思えてきます。

ストーリーもチグハグだけど一応主人公とその妻の夫婦ドラマを軸にしたかったのかなという印象でした。

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↑夫役はB級映画が似合うジョン・サクソン

戦地から帰ってきた夫の異変にいち早く気づいた妻は知り合いの医者に相談するが、夫はその医者と妻の浮気を疑う…

夫は妻を傷つけたくない一心で彼女から距離をとろうとしたものの、なぜか食人鬼化してた医者に妻が噛まれて2人で心中エンド。

すれ違いもあったけど最後は夫婦2人一緒にいれてよかったんだよね…??よく分からないけどそんな話でした。

サンゲリア」あたりを三流映画とよぶ人が本作をみればきっと五流・六流もいいとこでB級映画耐性を問われるような作品でしたが……でも私この映画なんか好きです。

タイトルの雰囲気や内容から暗くて取っ付きにくい印象がありましたが、思った以上にカラッとしてて疲れずに楽しめる作品でした。