何度も出てくる出涸らしのお茶。
またしても「ヘル・オブ・ザ・リビングデッド」のブルーノ・マッティ監督作。
邦題は「食人族3」となっていますが、「食人族2」と2003年にまとめ撮りされたというだけで、お話的には続編ではなく別個の作品のようです。
ロケ地も出演陣も所々被っていて2作続けてみると混乱してしまいますが、あれ、2より面白い!?
思い切りよくバトルアクションに舵切り。
「プレデター」と「食人族」の名シーンが矢継ぎ早に再生されるというだけでもうめちゃくちゃ面白い(笑)。
この2作品ってこんなに相性がよかったのか…!!と感動してしまうほど、上手くフュージョンしていて、監督の編集の腕前が生きた輝きのパチムービーになっていました。
◇◇◇
アマゾン奥地で消息を絶った探検隊。
その中にはなぜか上院議員の娘サラがおり、特殊部隊に救出のミッションが下されます。
部隊を率いることになったのは、ウィルソン少尉。
「今までの任務の経験は?」
「演習も含めて30回。実戦は今日を含めて2回だ」
頼りなさげな上官を前に部隊に微妙な空気が流れる中、ロメロという男性が現地のガイド役としてさらに招集。
ヘリから降下する直前にも仮眠をとる余裕のロメロをみて、「眠れる森の美男子がいるわよ」とチームの紅一点女性・マリアが囃し立てます。
無事ジャングルに降り立った部隊は、呪術師の息子であるという沼族の男性に道案内をさせながら、探検隊が行方不明になったという食人族の村へ。
姦淫の罪を犯した女性が石で撲殺されるのを見てショックを受けたり…ガイドの助手が突然生きた動物を捌き始めたり…毒蛇にやられた仲間の四肢を切断するも助からなかったり…
これで見るのは何度目だ!?となる緑の地獄の景色の数々。
「食人族2」ではトレースされていなかった名場面も数多く登場して、村人に敵意がないと知らせるためガイド助手が武器のナイフを何度も出し入れしてみせるシーン。
「彼らと同じ姿に戻ってみた」…自ら全裸になって川に入り現地女性たちとスキンシップする場面。
そうそう、「食人族」って残酷な場面だけじゃなくて、異文化コミュニケーションなこういう場面もすごく良かったよね…しみじみとそんな気持ちにさせてくれる名セレクションに思わずニッコリとなってしまいました。
さらにジャングルを進んでいると、皮を剥ぎ取られた逆さ吊りの隊員の死体を発見。
「奴らの死体にあんたの名前を刻んでやる」…プレデター風に仲間を弔いながら復讐を誓うバスクエス風の女性。
「各自5メートル距離をとって移動しろ、沈黙を守れ」…まんまダッチな台詞で少尉が指示を出すも、その直後5センチも離れてないような距離で皆で団子になって移動しているのには爆笑。
インディアン風のガイド助手が木から水を啜って飲んだり、仲間の背中についたサソリをナイフで刺して殺したり…やたら芸の細かいプレデター模倣が連続発射されていきます。
ようやく食人族の村に辿り着いた一行は部族と親交を深めることに成功しますが、呪術師の村長は何かを隠している様子。
なんと村では議員の娘・サラが〝愛の女神〟として奉られていました。
サラ曰く探検隊の他の仲間は惨殺され、金髪だった自分だけが村長の目に留まり匿われたのだといいます。
彼らから女神を取り上げると全面戦争は必至…100人vs6人、勝ち目はあるのか!?
それでも任務遂行を決意した部隊は、村に火を放ち奇襲作戦を開始します。
救助ヘリが来るポイントを目指すものの、知らぬ間に1人ずつ殺されていく仲間たち。
「まるで幽霊のようだったわ、森に溶け込んでいた」…なぜか襲われても連れ戻されなかった女神・サラがしたり顔で食人族の恐怖を語り始めます。
やがて食人部隊が姿を現し、吹き矢にマチェーテ、マシンガンが入り乱れる戦闘が勃発。
頼りなかった少尉が部下を追って森へ…腕チョンパで応戦するその姿はまるでゴーマンのようでディロンのよう。
黒人軍曹の如く復讐を誓っていた紅一点マリアは、手榴弾を手にバスクエスのように自爆。
「プレデター」に準拠しつつも「エイリアン2」と合体したキャラ造形が意外なほどに違和感がなく、キャラクターにしっかり感情移入できる作品になっていました。
最後に残ったのはロメロですが、自らが食人族たちを引きつけることで、サラを逃すことに…
議員の娘だけがヘリに乗って助かり部隊は全滅という哀しすぎる結末。
しかし主人公の顔が突然フリーズして各隊員の顔が映し出されていくプレデター風エンドロールに突入すると、またまた気分はゴキゲンに…
父親たちの星条旗ムードな勇壮なメロディーに太鼓のドコドコ音が重なった妙ちきりんなBGMが、なぜか延々と耳に残ります。
非常にテンポがよく、マッティの編集技がこれでもかと炸裂。
冒頭のヘリ降下シーンでは「プレデター」本編からと思われる映像が、ジャングルシーンでは「食人族」本編からと思われるヒョウの映像がインサートされていて、大胆を通り越した掟破りには閉口するばかり。
部隊が滝からジャンプするシーンは大滝の映像を組み合わせてより迫力ある映像にするなど、工夫が感じられます。
偽物と見抜けたりもするけれど、怒涛のスピード感で意外と粗は気にならずハッタリが効いていて、映画を躍動感あるアクションムービーに仕立て上げていました。
「食人族2」とキャストが被っているので2本続けてみると少し混乱(笑)、前回クズ野郎だったボブ役の役者さんが今回は1番美味しいロメロ役に…
こんな頭がこんがらがりそうな同系統の2本を、70歳超えた身でまとめ撮りしていたマッティ監督には驚愕…!!
「食人族2」はハッチャケ感が少なく内省的ムードを感じる作品でしたが、本作は思い切りのいいアクションになっていて、まさに陰と陽のような2本。
マッティ映画をたくさん見ているわけではないけれど、「ヘル・オブ〜」は別格としてこれまで観た中では今作がその次にオモロかったかも…
センス溢れるツギハギにニッコリとなる意外な快作でした。