どうながの映画読書ブログ

~自由気ままに好きなものを語る~

「ブラッディ・バレンタイン3D」…スピード感&リスペクト満載の良リメイク

昨年初めて観てめちゃくちゃ面白かった81年のスラッシャー映画「血のバレンタイン」。

2009年にはリメイクもされているとのことでこちらも鑑賞してみました。

うーん、これは良いリメイク…!!

オリジナル版のクライマックスを冒頭に持ってくる意外性と圧倒的スピード感。

3Dであることを利用し尽くした殺人シーンは今見るとバカっぽいけど竹を割ったような潔さ。

前作トレースのキャラ配置がいい感じにミスリードになっていて犯人予想も結構楽しい。

どうやったってオリジナルには敵わないけど、別物の楽しさと旧版リスペクトが上手く同居していて、ロメロの「ゾンビ」と「ドーン・オブ・ザ・デッド」のような感じ!?

美味しくいただけるリメイク作品でした。

 

◇◇◇

小さな炭鉱の町・ハーモニー。

ある年のバレンタイン、社長の息子トムのミスで大事故が起こってしまい、6人の炭鉱夫が生き埋めになってしまいます。

酸素を得るために5人の仲間を殺害したハリー・ウォーデンという男だけが生還。昏睡状態となって病院に運びこまれます。

しかし1年後のバレンタイン…突然覚醒したハリーは人々を惨殺。

炭鉱でパーティーをしようと集まっていた若者たちにも襲いかかります。

保安官たちに撃たれたのち、ハリーは行方知れずとなりますが…

 

新聞記事の見出しで始まるオープニングからしてバリバリ3Dを意識(笑)。

スピード感が凄まじく、死体だらけになった病院の地獄絵図っぷりにはびっくり。 

(初っ端からキルカウント22はえげつない)

序盤から主人公勢である若者たちが登場しますが、トムにサラにアクセル…前作のキャラクターを引き継いだ三角関係が早くも垣間みえてワクワクさせられます。

薄暗い炭鉱道をツルハシを持った殺人鬼が襲いかかってくるクライマックスが冒頭で展開される気前の良さに驚きつつ、仲間から1人取り残されてしまった主人公トムがなんだか切ない…

各キャラクターの立ち位置を明確にしつつ、スピード感に一気に持っていかれる導入部分が非常に秀逸でした。

 

そしてさらに10年後…

アクセルは町の保安官となり、サラと結婚、2人の間には子供が誕生していました。

冒頭からしてサラが本命なんだろうという雰囲気を醸しまくっていたアクセルですが、結婚後は若い女を別宅に連れ込んで浮気中。

おまけに相手女性は妊娠…昼ドラみたいなドロドロがぶち込まれてきてびっくり(笑)。

決して幸せばかりではなかった10年の歳月の残酷さがまざまざと迫ってきます。

 

そんな中長らく町を離れていたトムが帰省。町のスーパーでサラと再会します。

(結婚したのか、俺以外のやつと…)

夫の浮気を知っているのかサラも夫婦生活色々とありそうで、〝そうじゃなかったかもしれない人生〟に思い巡らす2人がほろ苦い。

元恋人に心揺れる妻をみてすっかり気が動転するアクセル、自分は浮気してるくせに嫉妬深いってかなり面倒臭い男(笑)。

でも拗らせ片思いが長かったんだろうなーと3人の歴史を感じさせます。  

 

しかし…!!トムが帰ってきた途端、町では惨劇が勃発。

ガスマスク姿にツルハシを持った殺人鬼に人々が次々と襲われていきます。

3Dを意識しまくった映像は今みるとバカっぽいですが、飛び出る目玉や飛んでくるツルハシなどサービス精神てんこ盛り。

分かりやすい構図が愉快で、清々しさを感じました。

 

そんな中でも強烈なインパクトを残していくのはマッパのお姉さん。

ある日トムが身を寄せたモーテルの隣部屋には、激しくセックスするトラック運転手と女性が泊まっていました。

運転手がこっそり行為をビデオ撮影していたため大喧嘩になる2人。

下着も着けずに外へと駆け出し運転手を詰問するお姉さん。

しかしそこで殺人鬼とバッタリ遭遇、マッパで殺人鬼と大格闘するはめに…

揺れるお姉さんのボディ、これぞ3Dと言わんばかりに金網越しに振るわれるツルハシに大興奮。

体張りまくりのお姉さん助かってくれ…!!と心から応援してみていましたが、あえなく惨殺…

お姉さんは何気に冒頭のシーンでも登場していて、アクセルと付き合っていたアイリーンという女性。

10年の人生一体何があったんだ…ずっと”本命じゃない彼女枠”だったのかな…妙に切ない気持ちにもさせて、本作のMVPと言っていい見事な散りっぷりでした。

 

その後も殺人鬼はサラのいるスーパーに現れてはドアを叩き割りながら執拗に追い詰めてきたり、老保安官をツルハシでメッタ刺しにしたりとやりたい放題。

事故の大元の原因をつくったトムを恨んでるのか、主人公の行く先々で現れ、罪を着せようとしているようです。

そんな中アクセルはハリー・ウォーデンが実は保安官たちによって秘密裏に処刑されていて、もうこの世にはいないはずだと過去の真相を暴きはじめます。

一方サラは夫アクセルが使っていた別宅を探索中、事件に関する手がかりを発見。

犯人は元彼なの!?夫なの!?オリジナルを踏襲した流れに再びドキドキ。

クライマックスは再び炭鉱にて物語が展開しますが…

 

(以下ネタバレ)

なんとなく予想はついてしまったけど、犯人はやっぱりトム。

行く先々で殺人鬼が現れたのはトム自身が犯人だったからという分かりやすいオチ。

炭鉱で檻の中に入れられていたあのシーンはどうなってたんだと思いましたが、7年間精神病院にいたというし、薬を飲んでいる描写もあったし、二重人格的なやつになってたっぽい。

事件は自分のせいじゃなくてハリー・ウォーデンが全部悪かったんだ…そう思いたくて心が殺人鬼を求めてしまったのでしょうか…

自分のミスがとてつもなく大きな災厄を引き起こした罪悪感、手に入るはずだったものを全て失ってしまった喪失感などが伝わって来て、闇を感じる殺人鬼になっているのがとてもよかったです。

 

2人を追い詰めるトムでしたが、反撃に遭ってガス爆発に巻き込まれてしまいます。

無事に救助されたサラとアクセルは再び愛の言葉を誓い合って和解。

妊娠してた浮気相手が殺されて仲直りってなんか怖いもんを感じて、それでいいのか!?と思ってしまいましたが、故郷で戦い続けることを決めた夫婦がサバイブ。

しかし殺人鬼・トムもしっかり生き残っていて、狂った表情を浮かべながら彷徨い歩いていくところでジ・エンド。

悪くはないけど、ハッキリ映しすぎててちょっと味気ないような…火傷跡のある顔にするとか、マスク被ってて誰だか分からないようにするなどした方が余韻が残ったかなあと思いました。

 

ラストはやっぱり圧倒的寂寞感を残すオリジナル版が最高。

「サラ愛してるよ」と呟いて突然謎ソング歌いながら闇に消え去っていくアクセルの底知れなさよ…

エンドロールではやっぱりあの歌を流して欲しかったなー、あのバラードがないと締まった気がしないなーと物足りなく思われてしまいました。

dounagadachs.hatenablog.com

オリジナル版と比べると、物寂しい町の雰囲気がかなり失われているのと、〝バレンタインというイベントの特別感〟が薄れてしまっているのは大変残念。

けれどしっかり炭鉱現場をロケして撮っていて、10年歳を取ってこその三角関係の生々しさ、「炭鉱は時代遅れだ」と言う主人公と「皆で戦ってきた生命線だ」と語るヒロインの応酬など、小さな田舎町の葛藤を描き出しているところもとてもよかったです。

飛び出す目玉、吊られた防護服が落ちてくるところ、ライトを叩き割りながら迫ってくる殺人鬼など、オリジナルをリスペクトしたシーンも満載。

メイベルおばさんをトレースした例のシーンの再現もお見事で、家政婦さんだと乾燥機があの流れで出てくるのはめっちゃ自然だわーと感心(笑)。

まんまトレースでもなければこれ見よがしでもなく、話に上手く溶け込ませた目配せに完成度の高さを感じました。

 

昨年血バレをみたばかりの新参者だけど、そんな自分でもウキウキ。

単体でも充分楽しめつつ、オリジナルをもう1回みたい!!という気持ちにさせてくれて、いいリメイクだなーと思いました。