ルトガー・ハウアー主演、「バーニング」のトニー・メイラム監督による92年のSFホラーアクション。
2008年…温暖化と異常気象により水没したロンドン。
警官ハーリー・ストーンは3年前に相棒を惨殺した殺人鬼を追い続けていた。
新月の日、犠牲者の心臓をくり抜く謎の殺人鬼の正体は…
時々水浸しの道路が出てくるけど、水没しているようには見えないロンドン。
革のロングコートにサングラスでキメたルトガー・ハウアーと、何となく薄暗い町の雰囲気で近未来感を出そうとする荒技(笑)。
でもこれが意外に功を奏していて中々いいムードであります。
殺人現場は壁が血まみれになっているなどかなり凄惨。
五芒星のような謎のマークが書かれていたり、くり抜かれた心臓がクーラーボックスに入れられて警察に届けられたり、前半は「セブン」のような雰囲気。
ストーン刑事はコーヒーとチョコレート中毒の荒くれ者…とありがちなキャラクター像ですが、ルトガー・ハウアーが茶目っ気たっぷりに演じていてチャーミング。
汚部屋で鳩を飼っていたり、元相棒の彼女と不倫していてキス魔だったりとツッコミどころ満載。
ブレランオマージュも含め本人が伸び伸びと演じられているようで、みていてとても楽しいです。
なぜか犯人が近くにいると心臓の鼓動が早まる主人公。
あぶない刑事として同僚たちからも煙たがられていましたが、ある日オックスフォードから来たインテリ刑事・ディックが新たなパートナーとして着任します。
「現場の血のメッセージは蠍座の星列…!!」
「あんたも蠍座だから犯人の精神と同調している…!!」
頭脳派かと思われた相棒がトンデモオカルト理論を連発(笑)。
しかし暗い顔をしていた一匹狼の主人公が、新しいパートナーに出会って笑顔が増えていくの、意外とバディもの感がしっかりあって胸熱です。
犯人に付け狙われる主人公のガールフレンド役としてキム・キャトラルも登場。
そのまんま「サイコ」なシャワーシーン。
悲鳴があがって駆けつけたら「お湯じゃなくて冷たい水が出てきた」…ってそういうことあるある(笑)。
主人公の部屋の前が急に水浸しになっていて「仄暗い水の底から」…と思ったら、彼女がまた風呂に入っていただけだった(笑)。
狙ってなのか、真剣なのか分からない、オトボケシーンの数々に笑ってしまいます。
現場に残された血液を調べると、複数のDNA構造を持った新種の生物のものだと発覚。
さらに犠牲者の亡くなった場所をマップで描き出すと魔術の図式に…
なんと犯人は温暖化の異変で誕生した、邪悪な魂を持つ悪魔的超生物だった…!!
バイオ&オカルトホラーと化す後半の展開に唖然。
人間の背丈の2倍はありそうな、大きな鉤爪を持った化け物が殺人鬼だったと言いますが、冒頭の狭いトイレの個室で殺された被害者はどうやってやられたんだ!?こんな鉤爪の手で冷凍パック配達とか出来んのか!?
様々な疑問が頭をよぎります(笑)。
怪物が犯人だと知った2人は警察の武器庫へ…
「もっと、もっとデカい銃だ…!!」
ロンドン地下街、廃列車倉庫での決戦。
サタンとか言ってたけどめっちゃエイリアンを彷彿とさせる犯人の姿に仰天。
スティーヴン・ノリントンが特殊効果に関わっていたからなのか、化け物の造形や登場する銃火器はやたらカッチョいいです。
デカい銃が火を吹きまくるクライマックス。
なんか知らんけど相棒も彼女もえらい肉体派だった…!!
レトロでジャジーな曲が鳴り響く中モーターボートで3人がテムズ川を爆走するエンドロールには、ゴギゲンな気分になるのでした。
裏表リバーシブル仕様だった日本版VHSジャケット。
若干盛りすぎな感じもする海外版Blu-rayはめちゃくちゃクールなSF映画仕様。
環境破壊による新生物誕生を描くならもっとSFよりに…オカルティックな連続殺人鬼ものにするならもっとホラーよりに…
どっちつかずになっていて色んなジャンルがミックスされたような、かなりカオスな作品。
けれど、ロングコートにデカい銃もって水たまりをバシャバシャ走るルトガー・ハウアーだけですべてが補完されてしまう、その圧倒的存在感に感服…!!
「ブラインド・フューリー」や「サルート・オブ・ザ・ジャガー」などと比べてもずっとチープなB級ムービーだと思いますが、オモロくてとても楽しい1本でした。