どうながの映画読書ブログ

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「ALIENS ビショップ」…2好きには堪らない!!ライトでよく出来たスピンオフ小説

先月「エイリアン:ロムルス」を鑑賞した劇場で関連書籍コーナーが設置されていたのですが、オリジナル小説「ビショップ」が気になってしまい、読んでみました。

本国でも発売されたのは2023年の12月とかなり最近に出版された本。

全500ページとボリュームがありそうでしたが、内容は思ったよりもライトで読みやすかったです。

エイリアン3」で永久に停止したはずのビショップが、生みの親であるマイケル・ビショップによって新たな身体を与えられ復活。

ビショップが有しているエイリアンに関するデータには値千金の価値があると、植民地海兵隊、ユタニ社のスパイ、中国軍が三つ巴になってその行方を追う…というストーリー。

時系列的には3のあとのお話ですが、2との接点が非常に多く、ビショップを追う植民地海兵隊の中隊長は2に登場したアポーン(エイポーン)の弟。

兄を殺したエイリアンを討伐したい…そんな思いを抱きつつ、「海兵隊は仲間を絶対に置き去りにしない」をモットーとして強く掲げる男。

この地点でバスクエスとゴーマンの最期が頭をよぎったりして、2好きには堪らない掴みとなっていました。

エイリアンに関しては目新しい描写はないものの、ある意味世界観を守っていると言えるつくり。

送付されたデータから2と3での戦闘記録を有している新アポーン隊。

酸の返り血対策でアーマーを瞬時に着脱できるようにしていたり、フェイスハガー対策でヘルメットをつけることにしていたり…ガジェット面もなかなか楽しく軽快なミリタリーアクションSFになっています。

 

登場人物の視点が切り替わりながら物語が進行していきますが、その中でも主人公格として活躍するのは、女性兵士カリ・リー。

アポーン隊の新入り二等兵、難民キャンプ育ちで弟たちを食べさせるのに必死…どことなくロムルスに近しいハードモードな若者像。

いまいち新鮮味には欠けていましたが、近接戦闘が得意な女性で動きのあるキャラなのは魅力的でした。

あだ名がコーンブレッドなのもイイ。

 

日本人モデルのアンドロイドが出て来たり、日本産ウイスキーが登場したり…見せ場のアクションシーンといい、作者さんは日本文化がお好きそう。

ビショップと生みの親であるマイケルとの対峙は「プロメテウス」のデヴィッドとウェイランド社長の擬似親子関係を想起させたりもして、アンドロイドの自由意志を問うドラマが本作でも展開。

2リスペクトという点ではロムルスよりも熱意を感じて、クライマックスには思わず感極まる場面が…

優しくてカッコいいビショップが堪能できて、個人的には大満足のスピンオフ小説でした。

 

(以下ネタバレ/かなり内容に触れています) 

3でアンドロイド説もあったマイケル・ビショップですが、本作では完全に人間として描かれていて、ユタニ社を裏切り競合相手である中国企業の協力者に…

「絶対に悪いことに使わないからエイリアンの情報ちょうだいね」と迫ってくるの、序盤から胡散臭すぎる(笑)。

人命保護プロトコルが無効化され、〝自分で考える〟より高度な知性を与えられたビショップ。

「エイリアンは危険なので絶対に情報は破棄されるべき」と頑なに協力を拒んでいましたが、父親を信じたい気持ち、傷つけたくない気持ちからついには屈してしまいます。

ジレンマに陥ってしまう姿は〝ロボット三原則〟のよう…家族愛に飢えていてどこかに所属したいと焦がれているビショップが健気で愛らしいです。

しかし結局生みの親・マイケルからは手痛い裏切りを受け、造物主の邪悪さを目の当たりにすることとなってしまいます。

 

姿も思考も親に似せられて作られたビショップ。

結局子供は仕組まれたプログラム(親からの遺伝や洗脳)から逃れることが出来ないのだろうか…自分は己が恐れる親と全く同じ人間にならないだろうか………

まるで人間の親子ドラマなビショップの葛藤が、リアルで胸に迫ってきます。

 

父親から「お前は所詮機械だ」と蔑まれるも、ビショップは海兵隊の仲間たちが対等な存在として自分を扱ってくれたことを思い出します。

それは主観的な感想でしかないのかもしれないけど、結局自分を自分たらしめるのは経験と記憶。

親の呪縛から解放してくれるのは、別の共同体で育まれた絆。

将来の夢を語りながらビショップの背中を叩く回想シーンのハドソンがなんかめっちゃいい奴(笑)。

思えば2でビショップが仲間たちと絡んでいた場面はごく僅か…でもあの唐突なナイフ曲芸のシーン、妙に仲が良さそうではありました。

度々挿入される過去の回想にはニンマリさせられてしまいます。

 

そしてもう1人、意外なキーパーソンとなるのが、3の生き残りだったモース。

「父のマイケルはアンドロイドにも人権を与えようとしているんだ」と力説するビショップに、「そんなわけないやん。だったら俺ら底辺労働者ももっと大事にされてたわ…!!」とこの世の真理をぶつけて黙らせるところにめっちゃ笑いました。

2と3の意外な組み合わせがいいタッグをみせる展開も面白かったです。


また本作にはビショップ以外にもアンドロイドが複数登場。

1人は新アポーン隊に属する日本人モデルのアンドロイド・ハルキ。(名前は村上春樹から…??)

主人公カリとチームを助けるため放射線汚染区域に入って犠牲になるのですが、鉄腕アトムのような何とも哀しい最期。

でもこのときのハルキの最期の言葉がチームにビショップ救出を決意させる…という展開が胸熱。上手い話の繋げ方で感心してしまいました。

そしてもう1人のアンドロイドはマイケルが新たに作った〝お互いを完全に同期させることのできる〟双子のオルトス。

冷徹な悪玉アンドロイドで、マイケル・ファスベンダーのデヴィッドを頭に思い浮かべながら読んでしまいました。

ビショップがこの双子を相手に日本刀でチャンバラアクションを繰り広げるところは、いかにも映画的でマトリックスみたい。

全体的にアクションの描写が光っていて、映像が脳内にありありと再生されるような明快な文体がとてもよかったです。

 

クライマックスにはビショップ救出のため中国旗艦に突撃する部隊。エイリアンを交えての大戦闘に…

主人公カリと反目し合っていた兵士コルタサルが負傷。

エイリアンに追い詰められた2人が自爆を決意するもそこにビショップが助けにやって来るシーンは、なんとも熱い2リスペクト。

自分の家族を養うことだけに必死だった主人公が負傷した仲間を見捨てなかったところ…自分にもっと力があれば仲間たちを救えたのにと後悔していたビショップが新たな仲間を救うところ…

バスクエスとゴーマンを思い出しながら胸が震える名シーンでした。  

 

私情を挟みがちなアポーン弟の指揮が最良なのか疑問が残ったり、最後の主人公の処遇が予定調和的な感じがしたり…

ユタニ社の影が薄かったのも残念、少し物足りなく思われるところもありつつ、ラストは綺麗に着地。

Semper fidelis(常なる忠誠を)…ビショップが再び海兵隊に居場所を見出し新たな家族をみつけるエンディングは素直にグッと来ました。

 

執筆された作家さんは30代半ばで小説家デビューと遅咲きの人だそう。

東南アジアで国際人道支援の仕事をしていたそうですが、ベトナム人部隊も登場して活躍をみせるなど、国際色豊かでアジアカラーの強い〝エイリアン〟だったのも面白かったです。

 

子供の頃大好きだったビショップ。

困難な任務を自ら進んで引き受ける献身的な姿、寡黙ながら頼れる仲間で、クールな容姿と裏腹に人に優しいところ…

2のときのイメージそのままなビショップが描かれていて、自分的には大満足でありました。

アクションシーンも映えて映画化に向きそうですが、若返ったボディになったビショップ。

人間感と非人間感が同居したあの皺のある個性的な顔がいいのよ…と思ったけど、どうせ若返るなら堂々と別人に…ランス・ヘンリクセンに似た雰囲気の、若くて良い俳優さんがいないかなーと思いました。

 

少年漫画的というか全体的な印象はとてもハートフル。

重厚感あるSF作品を期待すると物足りないかもしれませんが、ビショップ好きの人がビショップ好きのために書いた最強の二次創作ともいうべき内容。

よく出来たスピンオフでとても楽しかったです。

2好きには堪らなく、続編があれば読みたいと思う内容でした。