シリーズものをしっかり追いかけない緩い人間なのと、この頃映画をあまり観れていなかったのと…色々あって見逃していた2作品を今更初鑑賞。
ロムルスは優等生が心配りを尽くしたような良作だったけど、こっちはリドリー・スコットが「エイリアンはワシのじゃ!!」とやりたい放題した感じ(笑)。
「プロメテウス」は壮大なSFオーラがあって映像が素晴らしかったですが、「コヴェナント」はかなりめちゃくちゃ…でも大金かけたトンデモB級ホラーみたいでオモロかったです。
人間でもエイリアンでもなく、イケメンアンドロイドが主役というのにびっくりの2作でありました。
◆「プロメテウス」
人類を作ったのは誰か…大富豪の所有する船に乗って学者たちが一斉に未知の惑星へ…SFのロマン溢れるオープニングはいい感触。
CGが多用された美麗な映像。時系列的には1の前のはずなのに明らかに高度な技術が満載の船。
「ロムルス」は1に近いアナログな質感を出して頑張ってたんだなーと改めて感心しつつ、さすがリドリー・スコット。
プラネタリウムのようなエンジニアたちの惑星図が展開するシーンなど、ビジュアル的に美しい画が満載でそれだけでも観る価値のある作品に仕上がっていました。
しかし全く優秀そうに見えない学者勢のキャラクターには絶句。
いきなりヘルメット脱ぐわ、未知の生物に遭遇しても危機感ゼロで近づくわ…「燃える昆虫軍団」の博士の方がよっぽど研究者らしく見えるレベル(笑)。
学者さんってもっとナードでギークな人たちじゃないのか…体育会系サークルのようなメンバーにびっくり。主人公カップルは堂々宇宙旅行でセックス。
そんな中1人陰キャオーラを放っているのが、アンドロイドのデヴィッド。
皆が寝静まってるときに1人映画を楽しむ姿に何だか親近感。
好きな映画のキャラクターに自分を重ねて髪型マネするとか、思春期のオタクみたいやね…
時折ショウ博士の夢を覗き見していたようですが、自分とは異なる親から愛されて育った女性。
博士は理知的な学者でありつつ、科学と相容れない信仰を親からの薫陶で持ち続けていたようでした。
理屈では説明できない愛を持っているところ…アンドロイドの自分と同じく子供ができない身体だったところ…彼女にどこか惹かれるものがあったのでしょうか。(コヴェナントの展開を思うと、もう少し2人の絡みがみたかった気がします)
この惑星にはエンジニアと呼ばれる人類の創造者が住んでいたらしく、彼らが作った謎の黒い物質が残されていました。
デヴィッドがショウ博士の夫に黒い物質を飲ませたことをきっかけに、探索は阿鼻叫喚の地獄絵図となっていきます。
不妊だったはずのショウ博士は異生物を妊娠。
自動手術マシーンの活躍が本作屈指の名シーン!!…といったら怒られそうだけど、セルフ帝王切開、壮絶すぎる…!!
「ブラックジャック」の自分で自分を手術する回を思い出しつつ、みているだけで痛みが迸るような映像がアメージングでした。
そんな中、船には100歳を超えたウェイランド社長自身も乗り込んでいたことが発覚。
人類をつくったエンジニアから不老不死の秘密を聞き出そうと画策していました。
強欲な人だけど、あんなヨボヨボなのに自ら現場へ向かうガッツは凄い(笑)。
このウェイランド社長とデヴィッドの擬似親子関係はみていて何だか切ないものがありました。
父親の夢を叶えるためだけの道具としてこの世に生を受けたデヴィット。
親が寝ている間も古代語1人でコツコツ勉強してたのに、「努力が足りない」とかあんまりだぁー。
皆の前で「あいつには魂がないから」とバカにされるのも気の毒。
ショウ博士の夫もデヴィッドに対して差別的な態度をとっていたりで、静かに暴走していくアンドロイドを応援したい気持ちが俄然湧いてしまいました。
船にはウェイランド社長の実の娘であるヴィッカーズも乗っており、人間離れした圧倒的美貌に彼女もアンドロイドなのでは…と疑問が沸きますが、肝心な時に逃げ出したり、いまいち強権力を発揮できていなかったりで意外とポンコツ(笑)。
アンドロイドだったらもっと優秀じゃないかなー、この人は本当に社長の実子だったんじゃないかなーと自分は思いました。
出来る弟アンドロイドほど重用されない実の娘と、どれだけ尽くしても他人だからとぞんざいに扱われるロボットと…
この2人からは哀しい親子ドラマみたいなのが感じられてとてもよかったです。
しかし…!!
強欲親父のウェイランドも、自分の造物主にやっとこさ会えたと思ったら、怒りを買って全てが水疱に帰してします。
唐突な地獄絵図には笑ってしまいましたが、何が悪いのか全く分からないまま突然親にブン殴られる恐怖。
人間に愛されなかったロボットと、神に愛されなかった人間と…哀しい因果の堂々巡りみたいなものがなぜだか心に迫りました。
結局あの黒い液体はなんだったのか…白い巨人はなぜ1人だけあそこで眠っていたのか…
分からないことだらけで、これエイリアンじゃなくても別によかったよね、と思っていたら、最後の最後にエイリアンが登場(笑)。
この惑星が1で出てきた惑星と一緒だったのかと思ったら、「ロムルス」のパンフを読むとそうではないみたいで…
コヴェナントが続編ということで数々の疑問が解決されるのかと思いきや…
◆「エイリアン:コヴェナント」
「プロメテウス」から10年後。
植民船コヴェナント号は眠る2000人の入植者を連れて宇宙を航海していました。
またマイケル・ファスベンダーのアンドロイドが出てきた…!!と思ったら、顔だけは同じな、ウォルターという別の新型アンドロイド。
途中事故に遭って船長を失ったコヴェナント号は、偶然近くにあった良さげな星を発見して「入植するのこっちにしない?」と軽々と進路をチェンジ。
先遣隊を派遣するでもなく、マスクもせずに未開の地をどんどん進む隊員たち。
中にはタバコをポイ捨てする者も…
「プロメテウス」を上回るバカすぎる登場人物たちに絶句(笑)。
この植民船はウェイランドユタニ社のものではなさそうでしたが、子作りのためなのか隊員が皆カップル同士ってなかなか凄い。
そしてB級ホラーのようにアホな男女が死んでいき私情を喚き散らす展開がまた壮絶でありました。
案の定、ナメた探索をしていたら、惑星の未知なる物質(黒い粒子)が体内に入り病変するメンバーが続出。
「カサンドラ・クロス」でももっとマシな感染対策してたわ!!と思いつつ、右往左往しながら床すっ転んで船を炎上させる女性はアホ極まってるけどパニックになったら人間こんなになるかしらーと謎の臨場感で笑いました。
さらに一行はエイリアンの群れの襲撃を受けますが、謎の男(アンドロイドのデヴィッド)が突然現れ、彼らを囲い込みます。
「プロメテウス」のラストでは、ショウ博士と白マッチョの惑星に行くことになっていたデヴィッド。
しかしデヴィットは黒い粒子をばら撒いて、辿り着いたこの惑星のエンジニアたちを全滅させていました。
そしてショウ博士の肉体を使い、新種のエイリアンを多数生ませていた様子。
どうした、デヴィッド、お前に何があった…
長髪にフード帽、暗い部屋に引きこもっては「ぼくのかんがえた最強のエイリアン」をスケッチする日々…完全に拗らせた思春期のオタク(笑)。
冒頭にあったウェイランド社長との会話をみるに、人間より劣った存在(自ら何かを創り出すことを許されない存在)として位置付けられたのが我慢ならず、新しい生命体を作って新世界の神になろうとしたのでしょうか。
バイロンとシェリー、詩の作者を間違えてしまったのは、彼が壊れておかしくなったアンドロイドということなのか…都合よく記憶を改竄してしまう、ある意味人間に極めて近しい存在になれたということなのか…
ショウ博士を愛していたと言って突然涙を流したりもしますが、壮大な夢を追って愛する人を犠牲にしてしまうのは、結局彼の嫌った父親と全く同じになっている感じがして、切なく思われました。
コヴェナント隊を新たな生贄にしようとするデヴィッドでしたが、そこに新型アンドロイド・ウォルターが、善なる存在として立ちはだかりバトルに…
リドリー・スコット、「ターミネーター2」をやってみたかったのだろうか…と邪推してしまうチープな展開(笑)。
クライマックスはエイリアンも大暴れして監督自ら1をオマージュしたようなバトル。
全てが終わり、生き残ったヒロインが再び冷凍休眠装置の中に入ると、ウォルターとデヴィッドが入れ替わっていたことに気付いて絶叫。
(宇宙ではあなたの悲鳴は誰にも聞こえない…)
どんでん返しとはいかず早々に予想はついてしまうものの、光るマイケル・ファスベンダーの不気味演技。王道ホラーなエンディングはとてもいいなあと思いました。
それにしても白マッチョの巨人たちは結局なんだったんだろう…人間の上位的存在のはずなのに、デヴィッドの襲撃も予知できずあっさり全滅(笑)。
デヴィッドとウォルターが笛を吹くシーンは、一体何を見せられていたんだろう…エイリアンというよりブレードランナー味を感じるストーリー。
新種のエイリアンは、白いネオモーフがマブラヴのBETAを思い出して気持ち悪かったです。
あのラストからすると、デヴィッドがエイリアン帝国を作ることが予想されますが、そうすると旧シリーズの世界と話が繋がらないような…
別物2部作としてここで終わってもいいけれど、デヴィッドが破滅するパート3がみてみたいように思われました。
先日みた「ロムルス」はこの2作品にも目配せしていて、似たような黒い液体が出てきたり、生まれてきた赤ちゃんが白マッチョ似だったり…しっかりリスペクトしていたんだなあと驚き。
優等生「ロムルス」に対し、巨匠がやりたい放題した感じの2作。
なにげに両作とも2時間にまとまっているのが凄いし、そんな上映分数とは思えないくらいのボリューム感。
お腹がいっぱいになりましたが、思った以上に面白く、とても楽しい2本でした。
そういえば「エイリアンvsプレデター」の2もみていない…1はエイリアン映画というよりプレデター映画だった気がしますが、そのうちこちらも観られればと思います。