どうながの映画読書ブログ

~自由気ままに好きなものを語る~

「グラディエーター1」の記憶と「グラディエーター2」を観に行ってきた感想

2000年に公開された「グラディエーター」の1作目。

昨今ではオスカー関連作は授賞式のタイミングに合わせて1月〜3月にかけて公開されることが多い気がしますが、「グラディエーター」は公開当初オスカーとは無縁と思われていたからか、米国では5月公開、日本では6月公開と全くノーマークの作品でした。

ベン・ハー」が好きだった親が観に行きたいと言って、中学生のころ一緒に連れて行ってもらった思い出。

監督はリドリー・スコットだったけど、リドスコのコスチュームもの「レジェンド/光と闇の伝説」がかなり人を選ぶ作品だったのもあって、そんなに期待値は高くなかった気がします。

 

ところがこれが予想以上に面白くて自分は大満足…!!

剣闘士たちが娯楽のため見せ物にされて戦わされる…「バトルランナー」みたいな話が好きなボンクラにはいつだって刺さる内容。

家族を失った主人公の悲痛や義兄弟の確執ドラマなどはしっかり伝わってきて、見せ場バトルが次々に来て面白かった。

一緒に観に行った親は「やっぱりベン・ハーや!!」と言っていて(笑)、コロッセオや群衆のCG映像がよくなかったと。

確かにCGなしの昔の超大作映画の迫力たるやもう…「ベン・ハー」の戦車レースのシーンは今見ても狂ってんじゃないかと思う位凄い。

ただ「ベン・ハー」は宗教色の濃さが人を選ぶのに対し、「グラディエーター」は良い意味でアクが強くなく、感情移入しやすい作品になってると思いました。

 

大人になってから見ると肩入れしてしまうのはホアキン・フェニックスコモドゥス

どうしようもないバカ息子で、人の上に立っちゃダメなタイプの人だけど、お父さんと相性悪くて余計に拗らせちゃったんだろうなー…「親の出来が悪いからお前の出来も悪い」は言われて嬉しくない言葉だよなーと何だか共感。

マキシマスと比較して圧倒的人望のなさ。

殺したはずの男が舞い戻ってきて、どこまでも格の違いをみせられ続けるの、ちょっと気の毒(笑)。

クラスで誰からも相手にされない陰キャが自信ないのに虚勢張りまくってますます嫌われる…みたいな地獄絵図がもう見てていたたまれません。

ヒロイン枠が未亡人(敵役にとっては実姉)というのも一味違って、近親相姦を匂わせる病みホアキンにはドキドキされられたものでした。

 

助演陣も名優が集結…!!

マルクス帝役にリチャード・ハリス。複雑な親心をみせる憂いを帯びた皇帝で、出番は少ないけど存在感がありました。

オリヴァー・リードも美味しい役で個性を発揮。この作品の撮影中に亡くなったというのを後から知ってびっくり。

遺作がリドスコのオスカー大作になったのはせめてよかったのかな…なんて思いつつ、早くに亡くなったのが惜しまれてショックでした。

そしてなんと「サスペリアPART2」の主演俳優であるデヴィッド・ヘミングスも本作に出演。

大学生の頃「サスペリア2」をみたときに「この人は他に何の作品に出てるんだろう??」と調べたところ…「ジャガーノート」で「あー、あの人かー」と顔と名前が一致したものの、この「グラディエーター」はどこに出てたのか全く分からなかった(笑)。

迫力ある姿に変貌していて、びっくり仰天。

 

面白かったけどオスカー獲るほどの映画だったのか…翌年春の受賞のニュースにはびっくり。

獲ったのは5部門と圧勝ではなく、この年のオスカー自体がこれという話題作に乏しい不作の年だった気がします。

ニュース映像でたまたま監督賞受賞の映像が流れたのを見たのですが、スティーヴン・ソダーバーグの名前が読み上げられた瞬間のリドスコの表情が切なくみえてしまって…

「エイリアン」と「ブレードランナー」の監督というだけでもう生涯名誉監督、作品賞を「トラフィック」にして監督賞をリドスコにすればよかったやろ…!!などと勝手に思ってましたが、この「グラディエーター」からさらに大作監督へと羽ばたくリドスコ、恐るべし…!!

 

どうでもいいけど数年後「パイレーツ・オブ・カリビアン」が公開されたときには、音楽がそっくりでびっくり。

スターウォーズとスーパーマン位似てる、これは完全にアウト!!」と思っていたら、両作品ともハンス・ツィマーがお弟子さんと共作していたという…

 

リアタイでみた「グラディエーター」。

公開前の期待値はあまり高くありませんでしたが、主演2人は後々まで出世、飽きさせないスペクタクルの連続と耳に残る勇ましいテーマ曲。

いい映画だったよなーという記憶があります。

 

そんなこんなで24年ぶりの続編「グラディエーター2」を観に行くぞ…!!

今月は観たい作品がたくさんあってどうしようかと思ったけど、最近になって今更みた「プロメテウス」がかなり面白かったというのもあって突撃。

前情報ほぼなしの状態でみてきましたが…

うーん、これは1の圧勝。脚本がイマイチというかかなり無理がある話な気がしました。

冒頭から戦闘シーンは豪華でアクションは随所に見せ場があるのですが、キャラクターの魅力が乏しいのが残念に思われる続編でした。

 

(以下ネタバレ)

今回の主人公、なんと1で子供だったルシアスだったという…

前作の子役と主演の人の顔が全然似ていなくて、予想だにしませんでした。

そしてルシアスがマキシマスの息子だったというストーリーにもびっくり。 

未亡人ヒロインだったルッシラ、元夫は男色家で何人か愛人がいたという新事実が今作で明かされましたが、マキシマスとは肉体関係がない間柄の方がよかったんじゃないかなー…

1のラストで「あなたの息子は無事か?」とマキシマスが尋ねたシーン。

血の繋がった自分の息子を失っても、他者の幸せを慮る人で、未来に望みを託す気持ちを失っていなかった…みたいなところが良かったと思うのですが…

マキシマスが家族の元に帰る1のラストの感動が、汚されてしまった気がしました。

 

そんなこんなで今回の主人公は、血統ある王子様、実は選ばれし者という、なろう主人公⁉のような立ち位置。

前作のラッセル・クロウもイケボだったけど、今作のポール・メスカルさんもなかなかのイケボ。

迫力ある俳優さんだったのはよかったです。

でも〝皆が付いていく頼れる上司オーラ〟に溢れていたマキシマスに比べて、仲間との繋がりが薄く感じられたかも…

「誰が弓を射った?」「俺だ!」のところは「アイムスパルタカス!」みたいでちょっと面白かった(笑)。

 

コロッセオの戦闘シーンは猿、サイ、鮫が出てきてアニマル大パニック。

特に海戦シーンはとても楽しかったですが、せっかく出て来た鮫…主人公が水に転落して「サンゲリア」のように戦うシーンがみたかったです。

全体的に、前作はアクションと音楽がビシッとハマっていてキレキレだったのが、今回はそれがなかったように感じられました。

 

前作と今作を繋ぐキーパーソンとなるのがルシアスの母・ルッシラ。

1作目では知性ある女性としてしっかり描写されていましたが、今回はそういう見せ場がなく残念。

でもヒロインが一貫して母ちゃんなのはアッパレ。

86歳が撮る映画のヒロインは59歳…!!

母ちゃんが拘束椅子に座らされて、息子と恋人が殺し合いさせられるのを見せつけられるシーンには、ちょっぴり興奮してしまいました。

 

魅力に欠けていたのは双子の皇帝役で、2人共が揃いも揃って白塗りのバカ。

弟の方がややしっかり者のようでしたが、もっといがみ合ったり疑心暗鬼になる兄弟の描写をじっくり見たかった気がします。

 

他を食っていて圧倒的存在感だったのは、やはりデンゼル・ワシントン

マルクス・アウレリウス帝の時代に侵略を受けた属州の出身で元奴隷。

ローマへの怒りを内心秘めている…という背景は誰よりも王道復讐ものしていて、行動に説得力があってとてもよかったのですが、どこまで計算ずくだったのか脚本が粗い気が…

何よりデンゼルさんの悪役オーラでハナから裏切り者にしかみえず、話に予想がついてしまうのが残念。

味方かと思った人が実は…みたいな展開にした方が盛り上がったんじゃないかなーと思いました。

 

最後は主人公とデンゼル・ワシントンの肉弾戦へ…

デンゼルめっちゃ強ええ!!

もはやデンゼルがグラディエーターやってる映画がみたかったかも…

なんならデンゼルとラッセルが大激突する映画がみたかったかも…(←バーチュオシティでも見とけや)

デンゼルの突き刺す剣を何度も弾くマキシマスの鎧、むりやり挿入される前作主人公の親父パワー(笑)。

ラストにも前作と同じ曲が流れて来て、強引に繋がりをみせつけて幕を引くところも雑で、何だか笑ってしまいました。

 

1作目は、群衆によってなんだかんだ世の中が左右されていく…という描写も上手く出来ていたように思いますが、本作は民衆の存在も希薄だったのが残念。

復讐もの、家族愛ドラマという点でも前作には遠く及ばず、見終えると「コモドゥス万歳!」と叫びたくなる位、コモドゥスロス。

魅力あるキャラクターの不在が残念に思われました。

 

それでも映像的は充分見応えのある作品になっていて、パワーある大作映画なのは確か。

心の中で文句言ったり突っ込んだりしてるのも楽しかった気がします(笑)。

24年も経って嬉々としてセルフリメイクのような続編を撮るリドリー・スコット、元気で凄すぎる。

オスカー獲っちまいな!!と思いながら劇場を後にして来ました。