タイトル横にでかでかとデビッド・クローネンバーグと書かれているのに、監督クローネンバーグじゃないのかよ(笑)。
気前のいいVHSジャケ写で期待させるも、なんとマイケル・アイアンサイドも不在。
スタッフ・キャストともに一新して、前作から9年経ってつくられた続編。
クローネンバーグと同じくカナダ出身の「スクリーマーズ」のクリスチャン・デュゲイが監督を務めています。
1作目のベイルとキムの息子が主人公という設定ですが、作品のトーンは1とはまるで別物…比べなければそれなりに楽しめる、まあまあな出来の続編になっていました。
◇◇◇
なぜかタイトーのゲームセンターが舞台のオープニング。
情緒不安定そうな謎の青年・ドラクがゲームセンターに駆け込んできました。
シューティングゲームを超能力で動かし百発百中させる青年。
しかし力が暴走してしまいあらゆるゲーム機を稼働させて炎上。暴れていたところを警察に取り囲まれてしまいます。
ユニークで引き込まれる画がしっかり撮れている冒頭。
ネオンサイン煌めく街の様子、マネキンに取り囲まれた廃墟など、「スクリーマーズ」のときも思ったけど、この監督は絶対にブレランが好き(笑)。
低予算映画かと思いきや、ロケーションはコロコロと変わって意外と画作りは豪華です。
警察に捕えられたドラクは神経学研究所に連行されることに…
そこではフォルスター警視と所長たちがスキャナーたちを手駒にして力を利用しようと実験を行っていました。
地下には薬漬けとなり廃人同然となったスキャナーたちが監禁されており、ドラクも頭痛薬欲しさに研究所に囲われることとなります。
一方、獣医を目指す青年デヴィッドも謎の頭痛に悩まされていました。
子供の頃から不思議な力を持っていたデヴィッド。
ある日弱った子犬を謎の力で治療、そのことをきっかけにクラスメイトのアリスからデートに誘われます。
黒澤明、今村昌平など謎の垂れ幕が並んでいる地下クラブに行く2人(笑)。
しかし帰り道、スーパーで強盗に遭遇。
アリスを助けようとしたデヴィッドの超能力が盛大に開花、犯人の後頭部を爆発させてしまいます。
監視カメラに映っていた映像がフォルスター警視の目に留まり、スキャナーとしてスカウトされたデヴィッドは警察の捜査に協力することに。
自分の能力を活かせる仕事につけたと喜んだのも束の間、警視の要求が次第にエスカレート。
スキャン能力で市長を操りフォルスターをトップに任命させますが、それは正しい行いだったのか…
独裁的な強権力を手中に収めようとする警視の野望を知ったデヴィッドは、警察と袂を分つことを決意します。
原題にくっ付いているサブタイトル:THE NEW ORDERは、スキャナーを使って監視国家を作ろうと企む悪徳警視の陰謀を指している模様。
しかしこの手のSFディストピアものの雰囲気に乏しく、混沌とした社会の様子があまり伝わって来ないのが残念です。
警視たちに不信感を持ったデヴィッドは、自分の出自を探るため故郷に身を寄せることに…
「お母さんは妊娠中にエフェメロルを飲んでたの?」
「実はわしらはお前の本当のお父さんとお母さんではないのじゃ」
告白すんのめっちゃ早い(笑)。
ここでデヴィッドが1のベイルとキムの息子だったことが明かされますが、ベイルと融合したレボックがお父さんってこと??…それにしても誰にも顔が似てないなあ…
そうこうするうちに追手がやって来て、育てのお母さんを殺害。
デヴィッドは負傷した父から自分には隠された姉がいることを聞きつけます。
姉ジュリーを訪れると、対面するやいなや心を読み合って打ち解ける姉弟。
中盤もアクションを交えながらサクサクと話が進んでいきます。
フォルスターの暴走を止めようと決意したデヴィッドはジュリーとともに研究所に潜入。
他人の意識を乗っ取って視界ジャックするなど万能すぎるスキャン能力を発揮。
しかし警察の手下となったドラクが行手に立ちはだかります。
ドラクの強力なスキャン能力に苦戦するデヴィッドでしたが、薬漬けになっていたスキャナー仲間たちが覚醒、全員でドラクを追い詰めます。
盛大に頭部爆発するかと思いきや、ミイラのような姿になって死亡するドラク。
一方黒幕のフォルスター警視は突然権力の座についたことが疑問視され、マスコミに取り囲まれていました。
そこにデヴィッド達がやって来てスキャン能力を使い、無理やり悪事を自白させることに成功。
怒ったフォルスターはデヴィッドに銃を向けますが、返り討ちにあって突然もがき苦しみ始めます。
今度こそ頭部爆発かと思いきや、異様に頭が膨れ上がったところで終了。
寸止めで放置はかなり酷い(笑)。
マスコミが集まった中でこんな力が暴露されたら主人公たちは迫害対象になってしまいそう…と心配になりますが、ラストは恋人たちと抱き合う姉弟の姿を映し出してジ・エンド…やたら明るめな結末でフィニッシュ。
結局頭部爆発は、スーパーの強盗シーンと、視界ジャックした手下をドラクが破壊するシーンとで2回のみ。
質より量でもっとバンバンやってくれてもよかった気がしますが、ビデオジャケ写にもある2回目の破壊シーンはなかなか盛大で楽しいものになっていました。
本作で1番印象に残るのはやはり悪役のドラク。
ハイテンションすぎてチープな感じもするものの、様々な顔芸を披露して頑張っていました。
それでも1のメンバーと比べてしまうと到底敵わないのですが…
(この2人が100年に1度の逸材すぎる)
スキャナーの手下の爺さんなど、本作にも迫力ある顔立ちの人は何名かいましたが、大ボスの悪徳警視の印象が薄いのがどうにも残念。
強くもなければズル賢くもなく、中途半端な敵だったのが物足りなく思われました。
主人公の名前をドストレートにデヴィッドにしているところ…それっぽい雰囲気にしようと雪景色を出してくるところ…前作に対するリスペクトは感じられて、総じてみると好印象な続編。
非凡すぎる前作のあとに続きを撮れとなったらこういうのが出来上がるよなあ…という妙な納得感のある作品でした。
クローネンバーグっぽい雰囲気を醸すBlu-rayジャケ写もなかなかの詐欺(笑)。
なにもかも1とは比較にならないけど、比べなければそんなに悪くない!?軽い口当たりの楽しい続編でした。