どうながの映画読書ブログ

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「真夜中の狂気」…デヴィッド・ヘス大暴走、デオダート監督のエロティック・サスペンス

「食人族」のルッジェロ・デオダート監督によるエロティック・サスペンス。

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  • デヴィッド・A・ヘス
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取り上げる順が逆になってしまいましたが、「ブラディ・キャンプ」より公開年はこちらが先。

デヴィッド・ヘスが「鮮血の美学」を思わせるレイプ魔を熱演しているらしく、とても面白そうなのを初鑑賞してみました。

女優さんが脱ぎまくり、ヘスの変態演技が炸裂…とこれまたすんごい映画でありました。

 

◇◇◇

夜のニューヨーク。ショートカット美女の後をつける不審な男。

男は車に乗り込んで女性を暴行し、激しく首を締めつけます。

リズ・オルトラーニの甘美なメロディが流れる中でのレイプシーン。

「食人族」も残虐な映像に美しい音楽を重ねてくるのが壮絶でしたが、こちらもオープニングクレジットから強烈であります。

 

暴行犯の男・アレックスは冴えない弟分のリッキーと共に町でガレージ工場を経営していました。

ある夜金持ちカップルの車を修理、成り行きから彼らの自宅で開催される小さなパーティーに出席することになります。

全く似合わないスーツを着てイキり全開のアレックス。自動車整備の仕事は「高級車専門だ」などと言って見栄を張ってばかり。

一方パーティーの参加者は明らかに自分たちとは違う、ガラの悪い2人に興味津々。

リッキーはディスコ音楽に乗って踊り始め、「服を脱げ」と言われると嬉々としてストリップ。

そんなリッキーをみてアレックスは「馬鹿にされてるぞ!!」と苦々しげに弟分をたしなめます。

 

序盤からピリピリしたムードが迫真。

弟分の方が皆の歓心を買ったのが面白くなかったのか、取り乱す姿に小物オーラが漂うアレックス。

けれどお金持ちメンバーにどことなく冷たいオーラが漂っているのも事実で、格差社会や持たざる者の劣等感なども同時に伝わって来るような、何とも言えない空気感であります。

 

しかし…!!

ベリーショートの美人に目がないのか、アニー・ベル演じるリサを追いかけ回してしまうアレックス。

水を瓶からラッパ飲みする女性をみて「フェラチオみたいだね」と声をかけるオッサン、本当にどうしようもねえ(笑)。

けれどリサもリサでアレックスを果敢に誘惑。

ガラス張りのシャワー室で裸体を披露し「こっちに来ない?」と声をかけてきます。

誘われていざ一緒にシャワーを浴び始めると「脳みそでも洗ってなさい!!」と急に無下にされてしまうアレックス。

こりゃ完全に生殺しですわ…

 

その後、リビングでリッキーがポーカーでカモられているのをみたアレックスは、堪忍袋の緒が切れたのか、股間がはち切れそうになったのか、暴走。

持っていたカミソリを館の主人の首に突きつけ、パーティー参加者を脅しつけてやりたい放題を始めます。

 

勢力図としては「チンピラ2人vs男2人+女3人」。

銃を持っているならまだしも、こんな小っちゃいカミソリ1つで場を制圧できるものなのか…

全員を拘束するでもなく、結構目を離していて、皆もっと逃げたり、警察に連絡したりするんじゃないかなー…リアルさに欠けて緊迫感を損ってしまっているのは残念。

しかしねちっこい変態オーラを放ちまくるデヴィッド・ヘスが圧巻、もはや多少の粗は気にならない位の大立ち回りをみせてくれます。

 

気に入らなかった男をプールに突き落としションベンをぶっかける…!!

女性の胸を剥いでレズプレイを強要…!!

袖にされたリサにも迫りますが、リサが全く動じず嬉々としてフェラをしようとすると「やっぱりお前はいいわ!」と拒絶(笑)。

女性が嫌がってないと(自分が優位に立ってないと)興奮できないタチのようで、狂気とともにどこか哀れさを滲ませるアレックス。

ストッキングは脱がさない派、行為のあとに「よかっただろ?」とドヤ顔で聞いてくるなど、どうしようもないエロ親父です(笑)。

 

一方弟分のリッキーは一味の中で1番優しそうな女性・グロリアに惹かれていたようで、アレックスは彼女を暴行しろとリッキーをけしかけます。

しかし鈍臭くて悪人になりきれないリッキーは、怯えるグロリアに同情して行為に踏み込めません。2人の間に徐々に亀裂が入り始めます。

さらにパーティーにシンディーという女性が遅れてやって来ると、アレックスは彼女も陵辱。

パンティーを触っただけでなぜか「処女だ」と判別、1人で興奮し始めるのが気持ち悪すぎる(笑)。

シンディをカミソリで切り付け、徐々に暴力行為をエスカレートさせていくアレックス。
リッキーが止めに入るとついには弟分にも重傷を負わせてしまいます。

混乱の最中、ついに参加者たちが反撃に転じますが…

 

(以下どんでん返しありネタバレ)

完全に空気だったパーティー主催者のトムが、部屋にあった銃を取り出しアレックスに向けて発砲。

「去年お前がレイプした女の子は俺の妹だった…!!」

端正な坊ちゃんフェイスのトム、なんと冒頭に出て来たショートカット美人のお兄ちゃんだったのね…

復讐のため、アレックスを誘い出し、あえてやりたい放題させて正当防衛殺人に持ち込む計画。全ては仕組まれた罠だった…というオチ。

 

絶対もっと早く銃取り出せただろ…計画のために女性陣が暴行されるのは折り込み済みだったの…突っ込みどころがてんこ盛り。

釈然としないものが残りますが、驚愕して叫び声をあげるアレックス。

大口開けると銀歯がいっぱいでさらにビックリ(笑)。

全く同情できないけれど、暴力男がプールに突き落とされ、もがき苦しみながら死んでいくラストは陰惨で重たいものが残りました。

 

アレックスの名前は「時計じかけのオレンジ」から…??

英語タイトルは”House on the Edge of the Park”らしく、「鮮血の美学」(The Last House on the Left)に似てる(笑)。

実際本編もトレースしたようなシーンが多かったと思います。

前出演作をセルフパロディしたようなデヴィッド・ヘスのねちっこい変態オーラがただただ圧巻。

不快指数が高くイライラさせられますが、誰かに認められたい、愛されたいというくすぶった想いも伝わってくるようで、堂に入った名演でした。

 

他の出演陣もインパクトのある顔立ちの人が集結。

リッキー役のジョン・モーゲン(地獄の門地獄の謝肉祭)は気弱な相棒役がハマり役。

こういう強引な兄貴分について回るしかなかったんだろうなーと悲哀を感じさせました。

女性陣はやはりリサ役のアーニー・ベルが1番印象的で、脱ぎっぷりはもちろん、主人公を見下したようなドSな目線も堪らない。

デヴィッド・ヘスの体と顔が大きくて、華奢な女優さんたちと並んだ時のインモラル感が半端なかったです(笑)。

 

先日鑑賞した「ブラディ・キャンプ」も楽しかったけど、こちらに比べるとゆったりした印象。

本作はもっと尖っていて、閉ざされた地味なロケーションなのに、映像も音楽もパワフル。

リズ・オルトラーニの音楽はめちゃくちゃ耳に残ります。

一応本作もジャンル的にはジャーロ??

ドキドキのエロサスペンスでしたが、同時に骨太作品なオーラも漂っていて、何だか凄い1本でした。