90年代懐かしドラマ。
中学生の頃仲の良かった友達が堂本剛の大ファンで影響されて観たドラマだったのですが、不思議と大人になってからも鮮烈な印象が残っている作品です。
深キョン演じる主人公の透子(トーコ)がボクサーの青年・時枝ユウジ(堂本剛)を好きになる…というただそれだけの恋愛ドラマ。
2人の出会いがレンタルビデオ店ってところにハートを掴まれたのですが、お互いが借りたビデオの入った袋が入れ替わってしまう。
中身が違うことに気付いて店に戻ったら鉢合わせになって、
「エロビデオなんか見て」「お前アニメが友達なのかよ、彼氏いないだろ」
…って感じで罵り合うんですけどこういうのいいですねー。オタクの夢が詰まった出会いというか(笑)。
印象最悪な2人でしたが、ボクシングの鍛錬をしているユウジを見かけたトーコはその直向きな姿に釘付けになり恋に落ちてしまいます。
名前も知らない彼を近所を徘徊しながら必死で探すトーコ。
ついには自宅を突き止めて勝手に部屋の掃除までしてしまう(「恋する惑星」のパロディっぽい)。
いつも携帯電話で友達と思しき人物と会話しているトーコなのですが、その友達は劇中1回も登場しません。もしかしてずっと1人で喋ってる…??なかなかホラーなヒロインでぶっ飛んでます(笑)。
トーコはユウジに思いをぶつけますが、ユウジはバイト先の花屋の店長に片思い中。しかしその女店長にも彼氏がいて…と複雑な恋愛模様が展開されていきます。
一見尖った奴にみえるユウジですが、意外に周りの空気を巧みに読む人で、同じジムの先輩に絡まれたときには角が立たないよう相手を持ち上げてその場を上手く収めたりしています。
好きな女店長に対してもハッキリ告白せずに半ば冗談めかしながら遠回しに自分の好意を伝える。
女店長の方も好意に気付きつつ「ユウジくんは弟みたいな存在」と日頃からやんわり予防線を張ってさりげなく断ってくる。
大人な遣り取りというか、穏便な人間関係を築くために必要な策にも思えますが、なんだかんだ自分が傷つくのが怖かったりして…愚直に思いをぶつけるトーコと対照的です。
挙句自分が寂しくなったときには女店長もユウジも「自分に好意を持っている相手」を都合よく利用したりし始めて身勝手で不誠実。
メンヘラ恋愛依存にみえて意外に軸がしっかりしているトーコは好意を寄せてくる男性に対し思わせぶりな態度はとらず一刀両断。
一応フラれたら付き合えないという認識はしっかりあるようで、例え好きな相手(ユウジ)からでも身に覚えのない侮辱を受けると距離をとる…などその気骨に段々惚れ惚れとしてきます。
↑トレーニングするユウジの周りを自転車でクルクル周るトーコ。うざ可愛い(笑)。
ボクシングを題材にしていることも当時新鮮だったのですが、高校生チャンプだったユウジがデビュー戦で負けると周りの態度がガラッと変わってしまう…
傲慢だった人間の挫折と再生……的なドラマが感じられて序盤は引き込まれたのですが、ボクシングパートは総じてツッコミどころが多く、恋愛ドラマを盛り上げるためのオマケ的にアクシデントが次々起こるのが雑な印象でした。
剛くんは暗さがあってボクサーの役にすごくハマっていたのに、もうちょっとこっちにも重点置いてくれてたらなあ…と残念です。
けど「試合中お前の声だけが聞こえる」はグッときますね。エイドリアーン!!って感じで。
作中1番有名な「愛はパワーだよ」…は小っ恥ずかしいながら一度聞いたら忘れられないトーコの台詞。
リング上で1人で戦う孤独なボクサーが絶対的に自分の味方でいてくれる存在を思い出して立ち上がる姿はドラマチックです。
そして「趣味も何にもない」と言っていたトーコが「初めてこの世に夢中になれる存在ができた」と生き生きしだすのが眩しい、なんともいえない可愛らしさです。
全12話のドラマで主人公2人がようやく結ばれるのかも…??ってなるのが11話ラスト…めちゃくちゃ焦らしプレイでこんなにヒロインが塩対応を受けるドラマってあまりないんじゃないでしょうか(笑)。
ボクシングのコーチ役で赤井英和が出演しているのも印象的でしたが、序盤恋敵として登場した嫌な女が改心して歳の離れた赤井英和のことを好きになる。
まさか恋愛パートに赤井英和も絡んでくるとは思わず「どーなるんだ!?」とクラスで盛り上がってました(笑)。
作品の舞台は99年の7月。「ノストラダムスの大予言で世界が終わるかもしれない。このまま何もしないまま終わるのはイヤだ、恋がしたい」…と1話冒頭でトーコが呟いています。
(「恋して死にたい」というこれまた小っ恥ずかしいサブタイトルはここから)
でも不思議な刹那的美しさのある作品で、エンディングのプールの風景、2人公園で花火するシーンなど夏の匂いが強くたちこめていて、みてると「ああっ、今年1年って今年しかないんだ!」みたいな気持ちになる(笑)。
細眉にパープルのアイシャドウの深キョン、主人公の仕事場がデパートの屋上…とバリバリ90年代を感じさせる景色に、大人になってみるとより一層そんな想いがこみ上げます。
オープニングテーマ曲、デズリーのライフも抜群に耳に残って夏が近づくと聴きたくなる曲♫
能天気なようで気怠さと閉塞感が同居していて、この年代の特有の空気感がよく出ている。そしてそれを打ち破るヒロインによく分からないけど圧倒される。
時が経ってもなぜだか記憶に残っている作品です。